第6話
退職に向けて準備は、思った以上に大変だった。
いや、正式には自分の都合でしか動かないのだ。
こっちが、引継ぎのための顔合わせをセッテングしてもすっぽかす始末。
先方には、本当に平謝りだ。
付き合いの長い会社からは、再就職しないかとお誘いを頂いている。
お誘いはありがたいが、回答は保留にさせて貰っている。
暫くは、身も心も休めたいしね。
例の噂の件の出どころをしたべたり、入社当初からの未払いの残業代の回収や、パワハラなどの証拠集めと訴訟の準備で目まぐるしく忙しい。
会社を訴える証拠は十分に揃っているが、噂の出どころについては決定的な証拠がない。
当たりはつけているのだが、本人と直結しないのが歯痒い。
聞き込みをしようにも、社員一同から無視されている状況なので事情聴取も取れない。
どうしたものかと、仕事終わりに普段は寄らない居酒屋のカウンターで遅い夕飯を取っていたら、聞き覚えのある声が耳に飛び込んできた。
「
私の後ろから、
背を向けているからか、私の様子には気付いていないようだ。
私は、サコッシュから仕事用のボイスレコーダーを取り出し、後ろの会話を録音をする。
上手く録音できれば、証拠になる。
「じゃあ、あの枕営業をしてるって噂もお前が流したのかよ?」
「そうそう。俺自身じゃないけどな。友人何人か使って、ツ●ッターで拡散させた。色んな奴を挟んでいるから、絶対身バレしない自信があるぜ」
「お前に目を着けられた時点で、
「まあ、あいつの原稿や事務作業だけは有能だったよ。最近、調子に乗り出して契約をバンバン取ってきやがる。エースたる俺の地位が脅かされるだろうが。ああいうのは、早めに潰すのが良いんだよ」
「うわ、サイテー」
殴りてぇ……とは思ったが、噂の出どころはやはりと言うべきか
私を潰すために、随分と手の込んだやり口だ。
この音源も十分証拠になるが、やはり物的証拠を揃えて徹底的に潰したい。
私用のスマートフォンを取り出し、ツ●ッターのアカウントを作成して、
特定方法は何通りかあるみたいで、特定方法が掲載されているサイトを参考に
流石に、鑑定様も奴の使っているアプリまで覗き見ることが出来ないのが歯痒い。
噂が出回り始めた時期に焦点を絞って、引っかかりそうなワードを入れて検索をかける。
念のため、会社や会社関係者のアカウントも一通り調べたら
投稿内容も会社や同僚の愚痴と自慢のオンパレードだ。
アイコンやニックネームは、
特定の決め手は、
物的証拠を揃えるだけだ。
ニヤニヤと悪い笑みを浮かべている私に、
「お客さん、閉店30分前なので注文するなら伺いますよ」
と店員に言われ、慌ててお会計を済ませて店を後にした。
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