第3話

 鑑定は使い方によっては便利だし、収納は神スキルと言ってもいい。

 収納した物は、時間経過しないことが判明した。

 アイスを買って収納していたことを忘れていたことに気付いたのが発端だったが。

 あれほど、神! と思ったことはない。

 家にある物を全部収納したらレベルが上がり、予想していた通り細分化されていた。

 例を挙げると、こんな感じである。


・服

 ∟トップス

  ∟シャツ5

  ∟パーカー7

  ∟T-シャツ4

  ∟ニットウェア3

 ∟ボトムス

  ∟スカート8

  ∟パンツ2

  ∟ジーンズ1

 ∟アウター

  ∟ジャケット4

  ∟コート2


 プルダウンを押すと、更に詳細が出てくるので取り出しやすい。

 収納するだけで自動でカテゴリー別に分けてくれるので楽ちんだ。

 このスキルだけでも食べていけるんじゃね? とは思ったが、小心者なのでスキルを活かした仕事を見つけて独立できるだけのお金が稼げるようになってから仕事を辞めよう。

 1Rには、ミニマリストもビックリな何もない空間になった。

「私の部屋ってこんなに広かったんだ……」

 スッキリとしたが、物が無くなると寂しく感じるものなのかと思ってしまった。



 変な力に目覚めた3日目、ブラックな会社で今日もお仕事に励んでます。

 仕事量が半端ないので、いかに効率よく働けるか考えました。

 営業をかける時間は削れないので、原稿作成から細々とした事務作業は最適化のスキルで効率を計ってみた。

 この最適化スキル、良い仕事してくれたよ!

 自動で身体を動かしてくれるので、別の事を考えながら仕事が出来る!

 お陰で並列思考と一緒にレベルアップしてくれました。

 残業時間が短縮できたのが、本日一番嬉しかった出来事だ。

「事務作業の効率は上がったけど、営業成績が今一振るわないんだよなぁ……。今月も契約が最下位だったら、部長から嫌味オンパレードの説教が飛んできそう」

 事務で入社したのに、半年経たないうちに営業へと回され早4年。

 同期は殆ど退職して、残っているのは私と1人だけ。

 後輩も直ぐに入っては辞めてを繰り返している。

 それだけ人の出入りが激しい会社で、万年求人を出している。

 一件ホワイトに見える求人に引かれて入ってきた社員は、心を病んで退職するかバックレるかのどちらかだ。

 そう考えると、私の精神はオリハルコン出来ているのかもしれない。

「営業に有利なスキルがあれば、楽して契約取れるのになぁ~」

 高望みしたところで手に入るわけもない。

 私は、営業に関するビジネス本でも帰りに購入して帰るかと本やへ立ち寄った。

 ビジネス街にある本屋だけあって、品ぞろえも良い。

 営業に関するビジネス本と言っても沢山ある。

 手取り13万円の薄給には、一月に一冊買うだけで家計が圧迫する。

 目についた本を手に取り、パラパラと本を捲る。

 収納のお陰で荷物は持っていない。

 カモフラージュのために、サコッシュを下げているけどハンカチとティッシュしか入れていない。

 お察しの通り、立ち読みしています。

 漫画や雑誌類は立ち読みできない様に工夫がされているが、こういう本は幾らでも立ち読みし放題だ。

 ただし、長時間立ち読みしていると店員の視線が煩わしくなるのが難点だ。

 並列思考のお陰で、内容が頭に入ってくる。

 400ページの本を1冊読み終えるのに15分ほどで済むとは、並列思考様様だ。

 私は、店のオススメからスマホで調べたベスト20のビジネス本を片っ端から立ち読みした。

 店員には、物凄い冷たい視線を貰ったけど『速読1』と『暗記1』のスキルが増えていた。

 この行為が後に成功を掴む第一歩になるとは、この時の私は思いも知る由もなかった。

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