第三話 「聞くと死ぬ」
……ふーん、これがそうなの?
聞いた人が必ず、自殺しちゃうCD?
……え? インディーズ?
ああ、だから聞いたこともないバンド名なんだ。
とにかく、一度、聞いてみようか。
……ん?
調子悪そう、って?
実は最近、眠れてないんだよなぁ。
ほら、今ってすげえー不安定なご時世じゃん?
地震は起きるし、原発は爆発するし、わけのわかんねーやつらがデモだなんだって大騒ぎしてるし……。
ちょっと情緒、不安定なわけよ。
って、ごめんごめん。俺の話は別にいらねーよな? じゃ、早速、CDを再生させるぞ。
………うわ。
な、なんだ、これ?
俺、音楽は全然、詳しくないんだけど何、今の叫び声?
デスヴォイス?
あ、ああ、マジで断末魔みたいだったな……。
え?
この曲、この調子で後、十分以上続くの?
……はぁ。
いや、ちょっと思い出しちゃってさ。
うん……。
この間のデパート爆破事件……。
どこかの宗教依存をこじらせたアホな連中が仕掛けた爆弾のせいで、大勢の人が血まみれになって……。
親父と同じ歳ぐらいのおっさんが腕を吹っ飛ばされて、子どもみたいに泣きじゃくってるのを見て、俺、吐いちまったんだよな。
ま、自分の両足がなくなっちまってた、っていうのもあるけど。
なのに、テレビじゃ報復は何も解決しないとか負の連鎖がどうのこうの……。
……ん?
今の歌詞、なんて言った?
……ノーフューチャー・フォー・ユー?
……ははは。
今の俺の心境にピッタリ合いすぎて草生えるわ。
あ、草生えるってのは、ネットスラングな。
そんなことより……、ちょっと手を貸してくれる?
自分じゃ、車椅子にも乗れないからな。
……よいしょっと。
じゃあ、屋上まで連れてってくれよ。
やっと、いろいろ、吹っ切れたんだ。
俺の気持ちが変わらないうちに。
なあ、死神さん。
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