○月⭐︎日

私は恐らく今日も自殺未遂をするであろう彼を探す。


時刻は丁度お昼休み。

今日は天気も良く屋上なんかでお弁当を食べられたら凄く気持ちがいいだろう。


しかし、残念なことに私の学校は屋上を開放していない。


ドラマの様に屋上で紙パックの牛乳にストロー突き刺してアンニュイに柵によりかかるという密かな夢は入学早々消えてしまった。


「あ、いたいた」


屋上へと続く階段で、彼は1人モソモソとお弁当を食べていた。


「相変わらず1人だね、私以外にも友達作りなよ」

茶化す様に私は言う。


「別に、友達居なくても生きていけるし」

彼はプイっとそっぽを向く。


自殺未遂なんてしてなければ普通にただの友達少ない高校男子なんだけどな、などと頭の中で失礼な事を考える。


彼の様な自殺を考える人がいなければ、屋上も開放されてたかもしれない。


そう思うと、絶対違うけれど何となく彼が屋上を封鎖してる原因に見えてくる。


私が恨めしそうに睨んだせいか、彼はハァ、とため息をつく。


「何で睨んでくるの」


「一真みたいな人がいるから、きっと屋上は封鎖されたんだろうなと思って」


それを聞いて流石に彼も反論する。


「いや、別に自殺以外にも、普通に事故とかあったら、危険だから封鎖してるんじゃない?」


珍しく彼が正論を言ってきた。


それはそれでなんかムカつく。


「そんなことよりさ」

彼が不意に話しかける。

「この弁当を見て、どう思う?」

と、彼は2段弁当の中身を見せてきた。


「こ、これは!?」

私は目を見開いた。


「お、おかずしか、入ってない!」


「そう、白米の段、綺麗さっぱり何も入ってなかった」


そこには綺麗にぎっしり敷き詰められた色とりどりのおかずと、もう片方が空っぽの弁当箱があった。


「流石にこれは、死にたくなるよねー」


そう言いながら彼は何の迷いもなく鞄から睡眠薬の瓶を取り出す。


「いやいや、確かに不幸だけど、早まるな!」


私は彼から瓶を奪い取る。


「何いつも常用してる薬取り出す感覚で睡眠薬取り出してんだ!」


「俺、不眠症だから、あながち間違ってない」


「間違ってないけど間違ってるわ!!」


そう私が叫ぶと渋々彼は薬を鞄に入れ直す。


「ごめん」


そう言いながらまた彼は頭を下げる。


私はその頭をツンツン突きながら、またいつもの様に言うのだ。


「確かに今までで1番不幸かもしれないけど、死ぬな!生き延びろ!馬鹿!」


「分かったよ」


そういう彼は少し頬が赤くなっていたのを私は見逃さなかった。

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