○月⚫︎日

人が死ぬのはもう嫌だ。


教室に飾られた花瓶と生けられた綺麗な花を思い出し、私は悲しくなった。




放課後、いつもは教室に残ってグダグダ自殺未遂などしようとする彼は、しかし今日は珍しくまっすぐと家路についた。


様に見えた、だけだった。


彼は制服のまま、ジャブジャブと川の中に入っていこうとしていた。


「ストップ、ストーップ!!」


私は慌てて止めに入る。


「何してるの!?」


「…何って、あー、ザリガニがいたから取ろうと思って?」


「いや、小学生か!?」


私は彼の腕を掴み、川から出る様引っ張った。


渋々彼は川から出てきた。


「それで、今日は一体どんな理由が?」


私は怒りながらも精一杯笑顔で聞こうと頑張る。


「んーと、今回は5限目の体育で俺だけバドミントンのラリー続かなくて、ペア組んでもらった人に申し訳なくて」


「いや、それで死なれた方がもっと申し訳ないわ!」


はあ、と私はため息をつく。


「何で毎度毎度、私が止めなかったらどうするのよ!?」


そういうと一瞬彼の顔が強張った。


かと思うと、またいつもの無表情で、さぁ?とだけ返される。


その顔が何故だか少し儚げで、不覚にもドキッとしてしまった。


「~~!

あんたね!本当こんなの繰り返してたらいつか死ぬわよ!」


「俺不死身じゃないからいつかは死ぬよ」


「そうじゃなくて!」


「それに、絶対玲香が来てくれるの、分かってるから」


いつも無表情なのに、こんな時だけニコッと微笑みながら言ってくる。


お陰でこっちも調子が狂う。


「はあ!?もう絶対来てやらない!」


私は彼の頭をぽかぽか殴った。


「痛いって、ごめん、な?」


彼が頭を下げても私はしばらく彼の頭を叩いていた。

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