第162話

 ルールールの毛は、所々絡まり毛玉が出来ていた。

 一つずつ解す様に梳く作業を延々と繰り返す。

 私の身体だけでは、全部終わるのに日が暮れてしまいそうになるので、侍女達も加わって貰いました。

 総勢3人がかりで、ブラッシングを終えた時には謎の連帯感が生まれた気がする。

 その後は、嫌がるルールールを丸洗いしました。

 爪を出して引っかいたりしなかったものの、終わるまでミギャーミギャー鳴いてました。

 お風呂嫌いなんですかね? 猫だけに。

 全身丸洗いして、精霊に風魔法と火魔法を組み合わせて作った温風で、ルールールの身体を乾かしてやったら、物凄く驚かれた。

 精霊の複合魔法を初めて作った時は、スミス先生が学ぶ気満々で喰いついてきたのを思い出しました。

 スミス先生自身が、精霊魔法の使い手ではないため、通常魔法で私が作り出した複合魔法は出来ないのか研究しているようです。

 話がそれてしまいましたが、ルールールの身体は取っても綺麗な純白に変わりました。

 引き取った時は、黒に近い灰色だったので相当汚れがついていたんでしょうね。

 痒そうにしていたので、週に1回は風呂に入れようと心に決めた。

 ルールールを私の自室に連れて行き、メイド達を下がらせる。

 風の精霊に防音結界を張って貰って、改めてルールールの方に向き直った。

「緊張なさらないで。わたくしが契約している精霊達を紹介しようと思って連れてきただけよ」

 ルールールの髭がピクピクと動く。

 私の周りには沢山の精霊がいる。

 その中から特定の精霊の気配を探すのは難しいだろう。

『念のため聞いておくけど、会話は神言しんごんで話した方がいい? それとも精霊を介した方が良いかしら? 私としては、神言しんごんで話した方が後々精霊魔法を使う時に役立つわよ」

 獣化を解呪出来ない以上は、会話の手段が限られてくる。

 個人的には、神言しんごんを扱ってくれる方が、私としては楽だ。

 ルールールは、少し考えて言った。

神言しんごんではなす。する』

『その心意気や良し! わたくしが、流暢に喋れるようにして差し上げますわ。神言しんごん文字も覚えるように頑張りましょう』

『……人型とれない。おぼえるしない』

『人型になった時に、使えたら便利よ。文字を読めるようになったら、わたくしの蔵書読み放題ですわ。わたくしのベッドで本を読んでいる鳥っぽいのは、火の大精霊ファーセリア。他にも水・土・風の大精霊がいるわ。今は、所要で居不在だったりするけど追々紹介するから安心して頂戴』

『………ぶれいなことする。した。ごめんなさい」

 ルールールは、猫のごめんねポーズを取って謝罪している。

 一体何が起こったのか理解が追い付かない。

 私、ただ紹介しただけだよね??

『謝罪されるようなことをルールールはしていない。謝らないで』

『でも……』

『まずは、貴方の処遇を決めたいのだけど。人型にはなりたい?』

『できる?』

 ルールールにも人型になりたい願望はあるようだ。

 精霊と契約するにあたり、大きなデメリットが生じることがあることも分かった。

 闇の精霊が祝福を取り上げれば、多分彼女は人型に戻れるだろう。

 ただ、祝福を与えた闇の精霊が受け入れるかは別である。

『今、現状では出来ると断言出来ない。でも、望むのなら最善を尽くすわ。それまでは、貴方が出来ることをして貰うことになる。わたくしは、貴方を他の奴隷と一緒の待遇で迎えるし、貴方が出来る仕事を割り振るわ。基本的にその姿での仕事は限られてくるけど、全くないわけじゃないのよ。やれる?』

 頭の良いに四足歩行の動物と同じ扱いになるのだが、それをルールールが受け入れるかどうかは別だ。

 嫌と言うのであれば、自分の食い扶持は自分で稼いでもらうことになるため、私の獣魔として冒険者ギルドに登録してクエストをこなして貰うしかあるまい。

『がんばる』

『じゃあ、フリックに貴女に合った仕事を紹介して貰いましょう。ルールールの近くにいる聖霊が神言しんごんをに翻訳してくれるから大丈夫だと思うけれど。ルールールも、わたくし達の言葉も覚えて行きましょうね』

 私の圧に、ルールールは若干硬いが小さく頷いた。

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