第160話

 ルーゼウスを先頭に奴隷達の住居へと移動する。

 かなり太くて頑丈な鉄のドアの向こうに、彼らは住んでいた。

 嵌め殺しの窓になっており、換気扇もついている。

 他のところでは、窓の部分が鉄格子になっているのだが、ここは本当に奴隷を大事にしているようだ。

「お客様だ」

 ルーゼウスが、手を叩くと奴隷達が横一列に並んだ。

 奴隷達の服は白く、胸に番号が刺繍されており、指名しやすいのが良い。

 統率もしっかりと取れているようだ。

「皆さま、初めまして。ここで名乗るのは、諸事情があって控えさせて頂きますね。ルーゼウスさん、彼らにニ・三質問をしても宜しくて?」

「構いません」

「ありがとう。フリックも手伝って頂戴。有能そうなのが居れば、候補に入れて構わないわ」

 目的は孤児院の子だが、それ以外に有能な人材が居れば買うと匂わせれば、フリックは小さく頷き奴隷達を見ている。

 メモ帳を取り出し、数字を書き込んでいく。

 その間、当たり障りのない質問をしながら反応を見たりした。

 この商会にいる奴隷の中で当たりを引いたのは4人、それ以外で有能なスキルを所持していたのが1人だった。

 フリックに視線をやると、彼も私と同様のことを考えていたのか同じ数字を書いている。

「奴隷はこれだけかしら?」

「はい。私どもは、犯罪奴隷は扱っておりません。ここに居る者達だけです」

「そう。……少し気になったのだけど、そこで丸くなっている子は?」

 部屋の隅で身体を震わせて丸くなる大型犬くらいの大きさの毛玉を指さした。

「猫人族の子供です。あの子も奴隷ですが、人型を取ることが出来ないのです」

 ルーゼウスの説明に、私は猫人族の子供を鑑定眼鏡で見た。


名 前:ルールール

職 業:奴隷 狂獣化

レベル:9

体 力:113

物 攻:155

物 防:131

魔 攻:45

魔 防:35

器用さ:55

素早さ:71

会 心:56

運  :51

連 携:19

Move :12

jump :8

スキル:完全回避1 フェイント1 闇魔法1 闇属性無効化

加 護:闇の精霊

称 号:なし

呪 い:弱体化


 加護持ちとは珍しいが、呪いという項目に弱体化があるのが気になる。

 弱体化をさらに詳しく鑑定すると、「闇の精霊の加護と引き換えに、獣の姿であることを課せられる。全能力の大幅な向上する」と出た。

 精霊の加護が無ければ、獣の姿ではなく人型も取れるということなのだろう。

 一種の呪いだな。

 でも、これは面白い。

「この子が良いわ」

「人型を取ることも出来ないんですよ?」

「構わないわ。わたくしは、この子にしか出来ないことをして貰うから良いの」

 そう言うと、ルーゼウスはルールールのところへ行きボソボソと何やら話し込んでいる。

 ニャーニャーと嫌がるそぶりを見せていたルールールだったが、奴隷という立場上、売られることを拒否することは出来ない。

 結局、私に買われる羽目になった。

 ルールールの値段は、他の奴隷に比べて半分以下で収まり安い買い物をしたお得感でホクホクだ。

 荷馬車を用意して貰い、奴隷達を積んでやかたへと送って貰うことにした。

 お金は、勿論即金で払いましたとも。

 私たちは、クランシャフト商会を後にし視察と称してスラム街へと足を運んだ。

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