第13話
誓約魔法で婚約結び、後は若い人たちだけで的な展開で外へ放り出された。
陛下曰く、アルベルトに中庭を案内させるらしい。
始終ブスッとした顔をしているアルベルトの後ろに続きながら小走りで歩く。
こっちは、ヒールを履いているのだ。
女に合わせて歩けないのか、このクズ野郎と心の中で毒吐いた。
「ここだ」
いきなり立ち止まったかと思うと、全面ガラスの温室を見せられた。
地震が起きたら、ひとたまりもなく壊滅するだろう。
「この中を案内する。お前たちは、ここで待っていろ」
護衛に付いてきた兵たちの返事は待たずに、さっさと中に入っていった。
これが次期国王候補かと思うと先が思いやられる。
兵たちに軽く会釈をして、アルベルトの後を追いかけた。
野薔薇とは異なり、品種改良された薔薇がいくつも咲き誇っている。
薔薇の匂いが鼻に付き、速攻で外に出たいと思った。
薔薇の園を抜けると、真ん中にテーブルとイスが置いてあった。
どうやら、ここは鑑賞しながらお茶を楽しむスペースのようだ。
「愚図が」
いきなりの暴言にカチンときたが、言い返すのも大人げないのでしおらしく謝っておく。
「申し訳ありません」
「ふん。どんな手を使ったか知らないが、俺はお前を婚約者と認めてないからな! お前みたいな無表情な女、気持ち悪いんだよ」
アルベルトは、それはもう罵声を浴びせる浴びせる。
王家は一体どういう教育をしてきたんだろう。
というか、誓約魔法使って婚約しているので双方の言動行動が全て記録されることになるの分かってないのだろうか。
もう、この時点で婚約破棄の材料あざーすって状態なんだけど。
「陛下からご説明されていなかったのでしょうか?」
「お前みたいな女に大精霊の加護が付くわけないだろう。王族を謀ってまでして、俺と婚約したいのか!?」
「そう思われるのは結構ですが、それを口に出して非難するのは頂けません。大精霊の加護を受けているのは事実ですし、それを隠蔽したら私共が罪に問われます。そもそも、婚約は陛下からの申し出なので私や殿下の個人的な感情や意見が考慮される余地はありません。加護を受けた以上、よほどの事が無い限り私が次期王妃であることは確定しております。お認めにならなくても結構でございますが、次期国王候補から外れることになりますが宜しいでしょうか?」
お前は王太子ではない。
ただの国王候補にしか過ぎないんだぞと語気を強めて言うと睨まれた。
「王子は俺しか居ない! 俺が次期国王になるに決まっているだろう」
「決まっていませんよ。私にも王位継承権があります」
順位は超低いけど、王位継承権はある。
目の前の馬鹿王子に言ってみたら、そんなわけあるかと全否定して怒鳴り散らしている。
結構大きな声で罵倒しているのに、誰も入ってこないし止めにも来ない。
相当甘やかされて育てられたのか、それとも軽んじられているのだろうか。
その辺りは、追々様子を見て動けばいいか。
私は、アルベルトの罵詈雑言をBGMにしながら薔薇をボーッと眺めていた。
私に何言っても反応しないので飽きたのか、疲れたのかは知らないが、アルベルトは罵るだけ罵って私を放置して薔薇園から出て行った。
残された私は、先が思いやられるなーと呑気なことを考えながら一時間ほど時間を潰した後で戻った。
きちんと父にも報告しましたよ。
後で、アルベルトが陛下からこっぴどく叱られるかは知らんが初っ端から誓約を破っているので我が家では年頃になったらこれを理由に婚約破棄をする方針で満場一致した。
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