第14話
モラハラ王子ことアルベルトとの婚約が正式に決まり、序に婚約破棄の証拠も初っ端からゲット出来たので頃合いを見計らって破棄しようという算段をしているリリアンです。
婚約者となった以上は、王妃教育もすることになったので領地ではなく王都の邸宅へと移動することが決まったのですが、何と母が懐妊して大フィーバーしています。
よくやった母!
王子と婚約破棄が決定している以上、婿取りしなきゃなーと考えていた矢先の懐妊は、後を継がなくてラッキーの一言である。
父的には、私を後継者として据えてくるようですが断固拒否します!
好きな人と~なんて阿呆なことは言いませんが、モラハラ王子よりマシな男と結婚したいです。
出来れば、誠実で純朴な年上の男性希望で!!
個人的にスミス先生のような紳士が好みです。
枯れ専ではありませんが、ナイスミドルな男性が好みです。
中身がおばちゃんですからね!
「新しい家族が出来ると分かっているのに、一人寂しく幼女を王都に送り出すなんて鬼畜の所業でしてよ。お父様」
お父様の部分に語気を強めてニッコリと微笑めば、
「リリーのように図太い幼女が居てたまるか。出産して安定したら、私たちも王都へ向かう。一年~二年程度の辛抱だ」
「いやいや、一番可愛い時期ですよね! そんな時期を見逃せと? 冗談は、その髪の毛にして下さい。最近、抜け毛を気にして色々試されているの知っているんですよ」
「何でそんな事を知っているんだ!?」
「チラチラと窓に映る自分の頭を凝視していれば、嫌でも察しますよ。お父様の家系は、代々ハゲを多く輩出しているじゃないですか。もはや遺伝でしてよ。私は、お母様に似たので心配してません。王妃教育なら、此処でしても問題ないと思います」
可愛い弟予定(未定・妹でも可)を愛でるのに忙しいのだ。
まだ生まれていないが。
これから生まれてくる可愛い弟予定(未定・妹でも可)のために、過ごしやすい環境を作る必要がある。
ゆくゆくは、大公家を継いで貰うのだ。
離れて暮らしていたら顔さえ知らない姉が居てビックリ!? な状況になるのは避けたいし、跡継ぎに据える気満々の私としても是非とも親密な関係を作って手ごま……コホン、大事な跡取りとして育って頂きたいのだ。
「私の髪の毛のことは良いんだ。リリアンが何と言おうと王都行きは決定している。陛下の勅命もあるしな」
チッ、あの狸陛下は手を打ってきやがったか。
「……そうですか。折角、お父様の為に研究していた発毛剤がありましたのに。研究も中断しないとなりませんね」
私の言葉に、父の眉がピクッと動いた。
控えていた執事の眉も動いた。
「リリアン、発毛剤とは何だい?」
「王都に行くなら必要ありませんでしょう」
ニッコリと説明を拒否してやると、父は少し考えて口を開いた。
「今すぐとは言ってないぞ」
「では、弟妹が生まれて暫くは一緒に過ごせるということですのね?」
「……ああ。で、発毛剤とは何だ?」
言質は取ったどー!
父は、言葉のニュアンスだけで何かを嗅ぎ取ったようだ。
こう言うところは、侮れない。
「髪に対し、大きく3つの効果が期待される薬品ですわ。一つ目は、新しく毛を生やす。二つ目は、今ある毛を丈夫に育てる。三つ目は、毛を抜けにくくする。ノームと契約して、土や草木について色々話す機会がありますの。効率よく一定量を収穫する方法とか。お父様が、髪にコンプレックスを持ってらっしゃることに気付いて発毛剤を作ろうと思ったのですよ」
ハゲを気にする男は五万といる。
美を追求する女と同じで、育毛剤や発毛剤に巨額を投じる者はいる。
それも大多数いると前世で確信している。
分かりやすいヅラを被っているクソ上司が良い例だった。
お中元は嫌がらせ目的で育毛剤や発毛剤を贈りつけたら、何か好感度が上がっていたのがミラクルだったが。
女が化粧品関連に金を落とすのと同じで、男は髪の毛関連で金を落とすのだ。
「因みに、今ある髪の毛を元気な太い髪にしたいなら育毛剤というものがありますわ」
「そ、それは完成しているのかい?」
上ずった声で聞いてくる父に、私は小首を傾げて言った。
「研究中と申し上げたじゃないですか。完成はしてませんが、試作品ならありますよ? ノームの見立てでは、試作段階でもそれなりの効果は見込めるんじゃないかと言ってましたよ。薬草の成分抽出率の純度が上がれば、もっと効果は期待できると思いますけど。因みに化粧水なども作っておりますの。女性の美の魔法薬と言ったところでしょうか。これも試作段階ですが、お母様達に使って貰ってまして好評ですの。作れるのが、今のところ私だけなので王都に行ったらお父様……」
死ぬんじゃないですかね、とは言わないでおく。
相当恨まれるのは必至だろう。
「その発毛剤と育毛剤の試作品を試したいのだが」
「効果が出るのは人それぞれですが、早い人で三ヶ月程度で実感出来ます。お肌の手入れも合わせてすれば、もっと素敵になると思いますよ。手入れの仕方は、お母様付きの侍女が知っているので聞いて下さい。では、私は王都へ行かずに残留決定ということで宜しいですね」
「……陛下に掛け合ってみよう」
「効果を実感されたら、陛下様と王妃様にお渡ししてみたら如何でしょう。ああ、寵姫は別に贈る必要ないので用意しなくて良いです」
王妃とのコネクションは欲しい。
今はアルベルトとの婚約者になっているが、どうせ婚約破棄するし、王妃と敵対はしたくない。
寵姫については論外。
だって、あのモラハラ王子の実母だから無理無理。
如何にも金食い虫だもの。
王妃を差し置いて、ゴテゴテに着飾った姿は痛い人認定しても良いと思う。
というか、陛下は何であんな女を寵姫にしたのか謎である。
まあ、顔とスタイルだけは抜群に良かったが。
「陛下の機嫌を損ねそうだが」
「お父様、寵姫と王妃を同列に扱う方が失礼でしてよ。愛妾ごときに媚を売る必要はないと示さないとなめられますわ」
「時々思うのだが、その物の言い方はどこで覚えてきたんだい」
前世ですとは言えないので、笑みという無言の圧力をかけてやった。
そしたら黙った。
父弱す。
私は王都行きを先送りすることに成功したのだった。
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