第12話
魔力コントロールを日々の日課にしていたら、大精霊の件で王家から呼び出しをくらいました。
父にバレて一ヶ月も経っていないのに、早い対応である。
「身内のお披露目もまだなのに、いきなり王宮へ行くんですか」
「仕方があるまい。大精霊と契約したのは、聖女ユーフェリアだけだからな。素を出さなければ、リリーは立派な淑女だ」
父の言葉に、うっと言葉が詰まる。
普段の私を知る者からしてみれば、淑女然としている私を見ると『誰?』となってしまうくらいの化けっぷりである。
表情筋も無表情で通すので、感情の起伏を見せない表情としては一番楽である。
まあ、バーバリー伯爵夫人には常に笑顔を絶やすなと言われているが無理!
無理無理!! 私の表情筋が持たないもの。
常にニコニコしていたら、私の場合は相手に良いように取られる可能性が高い。
バーバリー伯爵夫人くらいに腹黒狸になれば出来る芸当である。
なので鉄扉仮面を付けて王城へとドナドナされました。
今回の呼び出しは私用的な部分が大きいので、公務ではないとのこと。
だからと言って、マナーを怠れば足を掬われるので気を張り詰めています。
糞長い廊下や階段をヒールで歩くのは辛いわ。
前世を思い出す。
足が痛くならないパンプスを開発したいな。
一際豪華な造りのドアの前に連れて来られ、いきなりラッパが鳴り大声で名前を呼ばれた。
「ジョーズ・フォン・アングロサクソン大公、リリアン・フォン・アングロサクソン令嬢のおな~り~」
ふかふかの赤い絨毯の上をこけない様に歩きながら、玉座に座る陛下の前まで歩く。
彼の隣にお后様と寵姫が座り、その隣に不機嫌そうな顔をした王子が座っていた。
臣下の礼を取り、発言の許可が下りるまでカエルスクワット状態をキープしなければならない。
「久しいな、ジョーズ。今日は身内だけの集まりだ。楽にせよ」
「ハッ」
臣下の礼を解き、直立で王座につく陛下達を観察した。
「その娘がリリアンか」
「はい」
父の目配せに、カエルスクワット再び。
「お初にお目にかかります。リリアン・フォン・アングロサクソンです。若輩者でございますので、多少の無礼はご容赦下さいませ」
マナーに関しては大目に見てねと先制しておいた。
「成るほど、聞きに勝る聡明な娘だな。アルベルトの嫁にぴったりだ」
「……ありがとう御座います」
全然ありがたくないけどな!
無表情で返せば、アルベルトの顔が険悪になった、
顔は将来イケメンに育つであろうと予測はつくが、私の好みではない。
まあ、政略結婚も貴族の義務なので仕方がないとは思っているが。
第一印象からして正直無いわ。
「リリアンには、まだ早い話かと」
「生まれたときから婚約している貴族もいるくらいだ。多少早くとも良縁であることには間違いないだろう」
グイグイ来ますね。
大精霊の加護持ちを囲いたいのは分かるが、もう少しオブラートに包んだ方が良いのでは? と思う。
「大精霊の加護を得た者は、聖女ユーフェリア以来のことだ。教会が聖女に祭り上げようとするのは目に見えている。ジョーズも娘を魔王討伐に駆り出したくないだろう」
「……ええ」
「なら、アルベルトと婚約し次期王妃になることが確約されれば教会も手は出せまい」
絡め手で来たな。
当人は、物凄く嫌そうだけど。
後、お后様も凄く嫌そうな顔をしている。
第一王子は、寵姫の息子ということか。
うわー、面倒くさいなぁ。
政権争いとか無縁に生きたいのに……。
「大公である我が家と婚約するとなれば、貴族間のパワーバランスを崩しかねません」
「黙らせる」
「……分かりました。では、婚約にあたり幾つか決め事をしたいと思います」
父の大きなため息と共に、婚約する条件を提示した。
まあ、ざっくり要約すると私を使って精霊を利用するような事をしたり、私を蔑ろにしたり、アルベルトが次期国王に相応しくないと判断したら問答無用で婚約破棄するという内容だ。
最後の言葉には、アルベルトの顔が真っ赤になる珍現象が起きたが重要なことなので盛り込んでもらった。
愚王に仕える気は更々ない。
その前に、初対面でガン飛ばしてくる王子とこれから仲良くならないといけないのかと思うと憂鬱でしかたがなかった。
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