第52話 『戦の備え』

 ついにキラは記憶を取り戻し、真実が明らかになった。

 その数日後、キラと共に大臣の支配するロイース王国と戦う覚悟を決めた仲間達は、大学の建物の一画にある鍛冶屋を訪れていた。

 魔法大学の敷地内には腕のいい鍛冶職人も常駐しており、普段は魔術師用の杖や魔法剣士向けの刀剣類、そして学園生活で使う金物の日用品まで何でも扱っていた。

 これから次の戦いへ赴くことを聞いたセルゲイは、その前に魔法大学で念入りに準備して行くようアドバイスした。

 ここは彼に甘えてでも戦力を整えておくべきだというソフィアの進言もあり、傷んだ武具の修理や新調を行うことになっていた。

「随分と荒っぽく使ったな。手入れせにゃ、もうじき壊れるところだぞ」

 テーブルを挟んで向かい合う髭面の厳つい鍛冶屋は、テーブルの上に置かれたディックの胸当てを受け取って、開口一番にそう言った。

「鎧の手入れって要るのか?」

「当たり前だろ! 本来なら致命傷なダメージを代わりに引き受けてくれとるんだ、ちゃんと修理して使わんといざという時に死ぬぞ」

 心臓や肺といった急所が集中する胸周りを防護する胸当ては、軽装備を好む戦士でも念の為に着用することが多い、人気の防具だった。

 それと同時に、最も狙われやすい鎧の部位でもある。

 無茶な突撃を繰り返してきたディックの胸当ては、持ち主を守り続けて傷だらけになっていた。

 また、胸当ての鉄板は上半身を前後から挟むような形になっているが、前後の鉄板を留める革製のベルトもボロボロになっており、破れて鎧が分解する寸前のところだった。

 鍛冶屋が怒鳴るのも無理はない。

「こいつは全面的な手入れが要るな。数日後に取りに来い。それまでに直しといてやる」

 扱いの雑さに顔をしかめながら、鍛冶屋はテーブルの上の胸当てを修理品の棚へと運んだ。

「そっちの短剣は……何だ、サラか。一度も使ったことがないだろ?」

 鍛冶屋はディックの腰ベルトの後ろに差している短剣に目をつけたが、ひと目で使われていないと見抜いた。

「あ、そう言えば予備にって買ったんだっけか。存在そのものを忘れてたわ」

「お前さん、よく今まで生きてこれたな。ほれ、次」

 呆れながら、鍛冶屋は後ろで待っている他の仲間に声をかける。

「俺の盾と剣も頼む。あと、ゾンビとの戦いで槍を失った。在庫はあるか?」

 順番が回ってきたエドガーは、大盾と小剣を差し出す。

「お前さんのは……ちゃんと手入れされとるな。剣もまだ持つ、研ぐだけでいいだろう」

 そう言うと鍛冶屋はかなりの重量がある鉄の大盾を簡単に持ち上げて、表面から裏までじっくりと眺めた。

「随分使い込んだ盾だな。盾ってのは、剣以上に持ち主の性格が出る。これは……仲間を庇ってついた傷だろうな、間違いない」

「修理が必要か?」

 エドガーの質問に、鍛冶屋は首を横に振る。

「まだオシャカになるような状態じゃない。せいぜい、グリップとベルトを付け替える程度だろう」

 盾の裏側には、左手で盾を持つための握り(グリップ)と、握った状態の左腕を固定するためのベルトが取り付けてある。

 ディックの胸当ての留め具と違い、千切れる寸前のような傷み方ではなかったが、新品に交換してやればもっと寿命は伸びるだろう。

「お前さん、傭兵だったか? この盾、高かったろう。中古だとしても軍隊の正規品レベルの物だ」

 盾と一口に言っても品質は様々で、特にエドガーの持つような鉄がふんだんに使われた大型で高品質な盾は、かなり高価な代物だった。

 本来であれば正規軍の騎士か重装兵などに与えられるような物で、中古市場にも中々出回らない。

 それだけに大事に扱っていたのか、盾の寿命が削れるような深刻なダメージは受け流すように巧みに使われた痕跡を、鍛冶屋は見抜いていた。

 てっきりそれを自慢するかと思っていた鍛冶屋だが、エドガーは苦々しい表情で黙するばかりだったので、話題を変える。

「……あー、とにかく、盾の整備には時間がかかる。これも数日後だ。槍は出血大サービスだ、新品が奥にあるから好きなのを持ってけ」

 鍛冶屋はテーブルと修理棚の、更に奥の部屋を指差す。

 武具の保管庫で、まだ使い手の決まっていない新品の装備が初陣を今か今かと待っている。

「いいのか?」

 装備の修理だけでも、セルゲイの厚意で全員無料でして貰っている。

 その上、新品の武器まで譲ってもらうとなると流石に悪いのでは、とエドガーは考えていた。

「学園を救ってもらった礼としちゃ安いくらいだ。丈夫な胡桃(くるみ)や楢(なら)で作った、柄の折れにくいヤツを揃えてる」

 穂先、柄共に良質な槍は普通に買うと銀貨1000枚を軽く超えてしまう。

 せっかくだから、とエドガーは槍を選びに行った。

「そうだ、若いの。お前もそんな安物使ってないで、いいのに乗り換えろ。タダだぞ」

「あ、それなら貰うわ」

 部屋に戻ろうとしていたディックだが、タダと聞いて目の色を変える。

 一度折れて槍を新調した彼だったが、出費を出し渋って一番安い槍を買って使っていたので、鍛冶屋も見るに見かねていた。

「さて、この盾は後で気合い入れて直すとして……。次はあんただ、嬢ちゃん。斧を見せてくれ」

 手間のかかるエドガーの盾は棚に入り切らないので立て掛け、順番はメイに回ってきた。

「お願い」

 メイは背負っていた斧と、上着の下のベルトに帯びていた短剣二本を差し出す。

「おお、こいつも手入れが行き届いとるな。斧頭を研いで、油を引いてやれば……」

 やることが少ないと見た鍛冶屋は、メイの目の前で手早く点検と整備を済ませた。

 メイン武器である長柄戦斧が終わり、予備である短剣を鞘から抜いて状態を確かめると、鍛冶屋は目を見開く。

「こいつは……。随分と使い込まれとる上に、手入れもほぼ完璧だ。相当な手練れの得物と見たが……」

 腕の立つ職人は、武具の傷み具合や整備のし方で持ち主の技量が手に取るように分かると言う。

 メイの持っていた短剣はどちらも、長く使い込まれながらも大切に扱われてきたことが伺え、彼が見た中でもトップクラスの達人の得物に見えた。

「それ、前はお父さんが使ってたから」

 鍛冶屋が注目した短剣は二本共、メイが父親から譲られた物だった。

 親のお下がりと言えば聞こえは悪いが、元プロの暗殺者が愛用していた武器だと考えると、職人の反応もうなずける。

 それも手紙で真実を知らされたからこそだった。

「そうか、元は親父さんのか。短剣は両方共修理する箇所はねぇ、これからも大事にしな」

「そうする」

 あくまで予備の武器のため、戦斧と違ってほとんど抜く機会は無かったが、父親に言われた通り手入れはしてきた。

 今となっては亡き父の形見のひとつだ。

 大切に使い続けようと、メイは心の中で考えていた。これまでも、これからも。

「その毛皮の服は……これ以上、手を入れる余地が無さそうだな」

 メイのトレードマークとも言える、白く丈夫な毛で覆われた毛皮の戦闘服と帽子。

 分厚い毛が衝撃吸収材の役割を果たし、下手ななまくらでは刃が通らない上に、鉄に比べて軽く動きやすい。

 まさに天然素材の理想的な鎧だった。

「これはこのままでいい」

 メイが受け取った斧を背負い、二本の短剣を武器ベルトに差すと、今度はユーリの番になる。

 彼は装備の修理などは依頼せず、ただ消耗品の矢と爆弾のみを要求していた。

「矢はありったけ揃えたし、爆弾も各種仕上がっとるが、本当にいいのか? 剣や弓も見てやるぞ」

「自分でやる」

 矢は腰の矢筒に、爆弾は腰のポケットに仕舞いつつ、ユーリは申し出を断った。

「無料でもか?」

「ああ」

 確かに剣と弓だけでなく、胸当てや篭手も入念に手入れはされているようだ。

 たまに自分の装備を例えプロでも他人に触らせたくないという、神経質な客が居たりする。

 そんな客も数多く見てきた鍛冶屋は、無理強いはせずにユーリを見送った。

 手短に済ませたユーリの次は、ルークである。

「お前さんか。注文の品は一通り仕上がっとる」

 ルークの顔を見た鍛冶屋は、棚から布に包まれた装備品一式を取り出し、テーブルに広げた。

 先の戦いでメイン武器の剣を奪われたルークは、事前に新しい剣とその他諸々を注文しており、今日は仲間のついでに受け取りに来たところだ。

 まずは一番重要な剣。

 ルークが鞘に入った片手剣を抜いて確認すると、刀身部分に魔術文字の刻まれた魔法剣だった。

「強度の補強と衝撃吸収の術で、シンプルだが折れにくいヤツだ。魔力を帯びとるから魔法の矢なんかも切れる。魔法剣士用に、杖に近い魔力制御機能も組み込んどる」

「注文通りですね。助かります」

 一応魔術文字も読めるルークだが、流石にドラグマ流の刻印はどんな術がかけられているのか、見ただけでは判別できない。

 鍛冶屋の話ではオーダー通りの作りになっているようで、ルークは納得して抜いた剣を鞘へと戻した。

「本当にそれでいいんだな? 魔力を込めたら呪文が発動するような魔法剣も作れるが……」

「いえ、シンプルな設計の方が使いやすいので」

 鍛冶屋は元より、魔術師の国際機関と言うだけあって付呪(エンチャント)の技術も一流のものだ。

 ベースとなる片手剣を鍛冶屋が打ち、それに大学に勤める魔術師達が魔力を刻み込んで完成した業物だった。

 何ならキラの聖剣程でないにしろ、もっと強力な魔法剣を製造することも可能だ。

 だがルークは剣の性能として、多機能よりも簡素で扱いやすく頑丈であることを求めた。

 様々な術を組み込んで多目的に使える武器を作るのもひとつの手だが、魔法は範囲を絞って集中させればさせる程、その範疇での効果はより強くなる法則があった。

 求める性能がはっきりしているのなら、余計なことをせずにシンプルな作りにした方が、より強い魔法剣になる。

 魔法剣の仕上がりを確認したルークは、今度は投げナイフのセットを手に取る。

 通常の短剣と違い、投げつけた時に刃が刺さりやすいよう重心を工夫した物が投げナイフと呼ばれ、主に殺し屋の暗器の部類として扱われる。

 飛び道具として見ると矢と比べて高価な割に、威力は低く射程距離も短い。

 だが手投げできるために弓という道具を必要とせず速攻性があり、コンパクトなので服の裏などに隠し持てる携帯性でも優れている。

 ルークはアルバトロス皇帝の暗殺を決めた時から投げナイフの扱いを訓練し、今に至るまで実戦で使い続けてきたが、そこは消耗品である飛び道具の宿命か、手持ちを使い切っていた。

 今回、鍛冶屋が用意してくれた分は全部で20本。

 これから大きな戦いに赴くことを考えれば少ないくらいだが、ナイフを持ち過ぎて重量過多になっても困る。

 投げナイフを一本ずつ、袖の裏や腰のベルト、ブーツの裏などに仕込んでいくルーク。

 続いてルークは左右セットの革製の指ぬきグローブを手に取る。

 これまでの戦いで、最初に着用していた革手袋はすっかりボロボロになり使い物にならなくなっていたので、こちらも新調したいと要望を出していた物だ。

 あちこち破けた古いグローブを外して新品をはめると、オーダーしただけあって手にしっくりと来た。

「篭手でなくていいのか? 革手袋でも、腕までカバーするロンググローブもあるが」

「いえ、このくらいが丁度いいです」

 篭手程重くなく、それでいて手をしっかり守ってくれる上に汗でぬめった手から武器が抜けないようにする滑り止めの役割も果たすグローブは、地味ながら重要な装備品のひとつだった。

 わざわざ指ぬきグローブにこだわるのは、指先で宙に魔術文字を描いて詠唱を短縮する都合上、完全に指を覆ってしまうと問題があることと、剣を握る右手も指先の僅かな感覚で剣の細やかなコントロールを利かせるためだ。

 その場で手袋を着用し、更に新調した魔法剣の握り心地を確かめるルークに、鍛冶屋が声をかける。

「あと、防具は本当にそのまま行くつもりか? 見たところ、ただの革の服みたいだが」

 ルークは俊敏な動きを邪魔しないために、仲間達の中でも特に軽装備で戦い続けてきた。

 革はこの時代、ありふれた素材で価格も安く、加工もしやすいので防具としても人気だった。

 一般的な物は革製の鎧だが、ルークの物はそれよりも更に軽い戦闘服で、当たりどころが良ければ2~3回は致命傷を避けられるが、直撃すれば容易く貫通されてしまう危うさを秘めている。

 革鎧を着込む戦士も、胸周りや肩当てなどの要所に、より丈夫な鉄板を上から貼り合わせたり、鋲を打ったりすることで補強する者も少なくない。

「そうですね……」

 自分の着ている戦闘服を見つめながら、ルークはしばし考える。

(重くなるのは避けたいところだが、かと言ってこの戦闘服では先の戦いを切り抜けられるかどうか……)

 思索を巡らせた末、彼は鍛冶屋に改良を頼むことにした。

「お願いします。胸周りの内側に鉄板と、裏地にクロースアーマーを」

 クロースアーマーとは丈夫な布で作られた鎧のことで、革鎧以上に軽い防具だった。

 当然ながら着用者を致命傷から守る効果は薄く、もっぱら鎧の下に着るインナーとして使われる程度だ。

 とは言えそこそこの強度はあり、かつ鉄材のように重く邪魔にならない。

 衝撃を和らげる効果もあり、今の戦闘服を補強しつつ重くし過ぎない妥協点としては悪くない。

 そのクロースアーマーで挟むような形で、急所の集中する胸周りを鉄板で覆うのが、ルークの要求した改良プランだった。

 全て今の戦闘服の裏地に追加するため見た目は変わらないが、むしろ相手からすればどこが鉄板で防護されているのか分からず、かえってやり辛い。

 鎧の継ぎ目を狙われないための、ルークなりの工夫である。

「分かった。これも数日後までに仕上げとく」

 ルークが脱いだ戦闘服を受け取った鍛冶屋は、ディックの胸当てと同じく修理品の棚へと回した。

 納得した様子の彼の番が終わり、次に鍛冶屋の前に出たのはベルトに聖剣を携えたキラだった。

「ああ、あんたが学長の言っとった姫さんか……。鎧なら出来上がっとる。突貫工事ですまんがな……」

 そう言って、鍛冶屋はキラの採寸に合わせてサイズを調整した胸当てと篭手、すね当てを取り出す。

 どれも鉄製の頑丈な物で、すね当てはフルグリーブと呼ばれる、前だけでなく足全体を覆うブーツ状の防具だった。

 これまでキラは非戦闘員ということで普通の洋服だけで旅をして来ており、戦線復帰に当たって急ぎ鎧を手に入れる必要があった。

 いくら聖剣の加護があったとしても、鎧も無しに戦いの火中に飛び込めば確実に死ぬからだ。

「本来なら、姫さんに着せるような鎧じゃないが、しばらくはこれで我慢してくれ」

 ルークとメイに手伝ってもらいながら鎧のパーツを身に着けるキラに、鍛冶屋がそうこぼす。

 品質はすぐ用意できる中から最もいい物を選んではいるが、それでも王族に着せる代物ではなかった。

「いえ、ありがとうございます」

 急所の集中する上半身を服の上から前後に鉄板で挟み、留め具で固定。

 両腕には鉄の篭手をはめることで腕を盾のように使えるようになり、両足も革のブーツの代わりにフルグリーブを履いて下段狙いの攻撃に備えた。

 王女として剣術の訓練を受けていたキラは実戦経験こそ無いものの、鎧そのものは何度か着用したことがある。

 かつては自分のために設えられた専用の鎧を着ていたが、今の鎧もそこまでぴったりとは行かずとも上半身と両手足にフィットしてくれた。

「どうですか?」

 鎧を着終わり、手足を動かしながら感触を確かめるキラに、ルークが尋ねる。

「うん、いいみたい」

 最重要人物であるキラには、やや過保護な程に鉄製の防具でがっちりと固めることになった。

 重くはなってしまうが、被弾することを前提に考えるなら、これくらいはしておかないといけない。

 何せキラは王家の指南役から稽古をつけて貰っていたとは言え、あくまで基本だけで初心者も同然。

 聖剣の力を加味しても、訓練された兵士相手に渡り合えるはずもなかった。

「一安心だな。だが言うまでもないが、鎧を過信するなよ」

 鍛冶屋はそう言って釘を刺す。

 鉄の鎧を着ていても、鉄板で覆えていない箇所や継ぎ目を狙われたり、鎧通しなどで防具を貫通されたりと、負傷したり最悪戦死するケースは少なくない。

 キラに渡された鎧も、鉄製の中では軽さと動きやすさを重視した物で、騎士や重装兵が着用するような板金鎧よりも薄い鋼が使われている。

「はい」

 素直にそううなずくキラは、直後に緊張から固唾を呑んだ。

 鎧を着たことはあっても、それを実戦で頼ったことは今まで一度も無い。

 鎧はあくまで保険、敵から攻撃を食らわないよう注意して立ち回るように――指南役からも、何度も言われたことだ。

 これから初めて実戦に出るキラの緊張を汲み取ったルークとメイは、少しでも安心させようと言葉をかけようとするが、そこに割って入ってくる人物が居た。

「キラちゃん、見てくれよ俺の新しい槍! タダでくれるっつーからさぁ、エドガーのおっさんと一緒に一番いいのを選んできたぜ!」

 財布が痛まないのをいいことに、普段買わないような最高品質の槍を手に入れて有頂天のディック。

 これ見よがしに槍を振り回し、キラ達に見せびらかそうとするが、ここは屋内なのですぐに天井に引っ掛かってしまった。

「うわっとと!」

「いい加減にしろ。武器は敵に向けて振らないと意味がないぞ」

 奥から戻ってきたエドガーが、調子に乗るディックを叱る。

 そんな二人の様子を見て、キラは思わず吹き出した。

「ぷっ、ふふふ……あははは!」

「……キラさん?」

 ついさっきまで表情を固くして、先々の不安に押し潰されそうな様子だったキラがいきなり笑い出したので、ルークは心配になって彼女の顔を覗き込む。

「ううん、大丈夫。はしゃいでるディックさんを見てたら、何だか面白くって……うふふふ!」

「お、おう? キラちゃんも、あれだ、鎧姿似合ってるぜ」

 状況がよく飲み込めないディックだが、ルークは内心で彼に感謝していた。

(私ではできない芸当だろうな、これは。これもまた、仲間が居ることの強みか)

 自分には不可能なやり方で、意図しなかったとしてもキラを元気づけてくれる仲間が、今は何人も居る。

 そのことを改めて実感した。

 彼一人ではキラを守り切ることも、心を支え続けてやることもできなかっただろう。

 ルークはこれから更に過酷になる戦いに仲間が必要不可欠であることを思い、同時に自分も力を尽くすことを心の中で誓った。

(この先、何が待ち受けていようと、私は約束を果たす。今度こそ……!)

 王国との戦いの時は刻一刻と迫ってきていた。


To be continued

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