第50話 『宝剣』

 キラの宝剣を解析する準備できるまでの間、ドラグマ魔法大学に客人として迎えられたパーティの面々。

 案内人としてついてくれた新任教師のニコラウスに案内され授業の見学などを行う一行だが、専門知識を持つルークやソフィア以外は低学年向けの授業でも内容がほとんど分からない。

 特に座学が嫌いなディックなどは、見学しているだけでも退屈でしょっちゅう居眠りをし始めた。

 そんな彼でも注目した授業、それが実技である。

 魔術師同士による呪文を使った魔法戦を想定し、段上で向かい合い一対一での決闘に近い形で術を撃ち合う。

「両者に教員がついて、魔力の盾を5枚重ねて展開します。先に相手のシールドを3枚破った側が勝利です」

 ニコラウスの解説通り、段上で向かい合う生徒は互いに魔法を唱え、相手の盾を割っていく。

「おー! こういうのが見たかったんだよ、こういうのが!」

 見ている分にも派手で、何より分かりやすい。

 ディックはすぐに実技の見学を気に入った。

 彼にしてみれば、さながら剣闘興行の見物のような気分である。

「でも、盾は5枚あるんですよね? 全部破らないんですか?」

 キラは率直に疑問に思ったことを口にするが、これには卒業生のソフィアが答えた。

「最後の2枚は保険ね。威力の高い呪文を使って勢い余っても、生徒が怪我をしないようにという、学校側の配慮よ」

 また、高威力な魔法の中には、術者側に強烈な反動が返ってくるものもある。

 大学はなるべく使用を控えるように伝えているが、万が一それを使った時に反動から生徒を守るための意味合いもあった。

「それに、別に破壊呪文で盾を割るだけが戦法じゃないわ。防御が得意な子は、自分の術で盾を追加することもルールで許されているの。破られそうな盾を補強するのも、生徒が行うのなら作戦のひとつよ」

「色んな戦い方があるんですね……」

 キラ達が見守っている間にも、左側の生徒が放った火球が右側のシールドを割り、これで右の生徒が失った盾は3枚。

 審判が決着が着いたことを宣言する。

「どうですか、リリェホルム様、生徒達に手本を示す意味でも参加してみるのは?」

「そうね……。たまには、模擬戦もいいかも知れないわね」

 ニコラウスに促され、ソフィアは大学が貸し出している練習用の杖を手に取って段上へと登っていく。

「ソフィさん、頑張ってください!」

「よっしゃ! やっちまえー! 俺はソフィアに銀貨3枚賭けるぞ!」

 キラ達の声援に混ざり、ディックが賭け事を始める。

 一方、大学の生徒達からもざわめきが起こった。

「見ろ、本物の賢者様だぞ!」

「想像してたよりも美人じゃん!」

 男子生徒もだが、女子生徒からも歓声が上がる。

「きゃー! ソフィア様ー! 憧れでしたーっ!」

「今こっち向いたわよ! 負けないでくださーい!」

 ソフィアと相対したのは、いつもは生徒の後ろからシールドを展開する役割の教員だった。

 どちらも装備は大学側が用意した練習用の杖のみ。道具の条件は双方互角だ。

 審判が試合開始を宣言すると、互いに呪文の詠唱が始まる。

 剣士の決闘ならば剣を構えての読み合いになるが、魔術師同士になるとまた違った絵面になる。

 まず詠唱を終えて先手を打ったのは、仮にも賢者の称号を得ているソフィア。

 追加のシールドを展開し、対戦相手の攻撃に備える。

 相手の魔術師も手始めに魔法の矢を放つが、用意された5枚の盾を凌ぐ強度を持つソフィアの魔力の盾に阻まれ、光線は弾き返された。

 追加のシールドで潤沢な猶予を得たソフィアは、守りを任せて詠唱に集中する。

 ソフィアの背後には無数の魔法陣が浮かび上がり、彼女が呪文を完成させると大量の魔法の矢が束となって射出される。

「な、何だあの本数は?!」

「あんなきれいな魔法、見たことないわ!」

 生徒達が驚きの声を上げる中、無数の光線が相対する教員目掛けて突き進む。

 誰もが固唾を呑んで結果を見守った。

 ソフィアの魔法の矢の弾幕は相手のシールドを2枚纏めて貫通したが、勝利条件の3枚には届かない。

 その間に動じずに反撃の術を完成させた魔術師の氷の槍が飛来し、ソフィアが追加したシールドを突き破った。

 だがソフィア側には初期のシールドが3枚全て残っている。

 彼女は次の一撃で勝負を決めるつもりだ。

 これこそがソフィアの編み出した模擬戦の必勝法。

 攻撃があまり得意ではないので先にシールドを追加して守りを固め、後は焦って詠唱ミスをしないよう注意しながら破壊呪文で畳み掛ける。

 実戦では中々通用しないということが旅の中で分かったが、少なくとも魔術師同士一対一の模擬戦ではこれが一番勝率が高かった。

 ソフィアは自分のシールドが破られる前に、決め手となる火球の呪文を放つ。

 燃え盛る炎の玉が教員の最後のシールドを破壊し、それだけでは留まらず予備の2枚のうち1枚も割った。

 それを見た審判が決着を告げる。

(元々模擬戦は苦手だったのだけれど……この間の旅で、私も成長したのかしら)

 観戦していた生徒達から拍手喝采が贈られる。

「すげー! 先生を倒したぞ!」

「やっぱりソフィア様はお強いわー!」

「結婚したい……!!」

 注目のマトとなりつつ、ソフィアは段を降りて杖を戻す。

 生徒にしてみれば教員は手加減して貰っても倒すのは一苦労という相手。

 それを圧倒したのだから、生徒達が驚くのも無理もない。

「凄いですね、ソフィさん!」

 キラも目を輝かせながら、戻ってきたソフィアを迎える。

「一応、卒業生だもの。慣れたものよ。レア、あなたもやってみる?」

「ボ、ボクは遠慮しとく……。どうせ吸収の術しか使えないし」

 ソフィアと違い、破壊呪文の基本である魔法の矢すら今のレアには扱えない。

 吸収の呪文だけではこの模擬戦に勝つのは無理だと、レア自身がよく分かっている。

「大学で学べば、あなたはもっと伸びるわ。私も最初は、全く勝てないところからスタートしたのだもの」

 ソフィアもまた、自分の苦手分野をレアがカバーしてくれていることを旅の戦いの中で知っていた。

 魔法大学にレアを任せることになれば、パーティから抜けることになる。

 戦力の低下は避けられないが、その分もソフィアは自分が戦うつもりだった。

(確かに、学校での生活はめっちゃ快適だし、勉強すればボクだってもっと実力伸びるだろうけど……)

 レアはうつむいたまま押し黙ってしまった。

 ちなみに、誰もソフィアの負けに賭けなかったため、ディックの賭博は空中分解した。


 授業の見学以外にも、楽しみはまだあった。

 食事は毎日三食食堂で食べ放題、夕方は大浴場で入浴と、これまでの旅が嘘のように快適な時間だが、その他に膨大な蔵書を誇る図書室が存在していた。

 国際機関と言うだけあって大陸有数の蔵書量であり、閲覧許可を貰えたキラ達はそこで様々な本を手に取る。

 魔法の専門書である魔術書だけでなく、歴史や哲学、天文学に始まり、古代人が綴った神話や伝承、各地に残る英雄譚、探せば詩集やおとぎ話の本、そして料理本や編み物について書かれたものなど、家庭的な書物まで多岐に渡る。

「へぇ……ボルシチって、赤カブの色で赤くなってるんだ……」

 キラが読んでいたのはドラグマの郷土料理の本だった。

 食堂で飲んだボルシチが気に入ったので、旅の中で作れないかと作り方を勉強している最中だ。

 ピロシキも美味しかったのだが、野営料理でパンを作ろうにも焼く釜が無い。

 その点、根菜を煮込んだスープならば現地調達の材料でも作れそうだとキラは考えた。

 彼女の隣では、ヤンが分厚い本を熱心に読み込んでいる。

 ヤンはよく薬草学の本に目を通していたが、キラが横目に本のタイトルを見てみると、何と白魔法に関する魔術書だった。

「あ、それって白魔法の……?」

 キラが何気なく呟くと、ヤンも顔を上げて振り向く。

「そうなんですよ。ライラさんから、教会の治療術と白魔法は起源が同じだと聞いて、試しに読んでみたんです」

「使えそうですか?」

 治療の術も白魔法も門外漢のキラは元が同じと言われてもよく分からなかったが、ヤンは興奮したように話し出した。

「ためになる記述ばかりですよ! 術の構築はほとんど一緒で、その上でより効率的に傷を癒やす方法が色々と書かれています。これで入門だって言うんだから、驚きですよね!」

 ヤンが教わった教会の術は、白魔法のほんの一側面を切り取って先鋭化させたものであり、偏見を捨てて原点の白魔法へと回帰すれば視野は更に広がる。

 白魔法の技術を取り込めば、より深い傷を治療することも、それ以外に生命力を活性化させて健常者の身体能力を底上げすることも、今まで以上に簡単に行えそうだった。

「僕が修道院で習ってきたのは、本当に魔法のジャンルのごく一部に過ぎなかったんですね……。世の中の広さを改めて思い知らされます」

 彼の言葉を聞き、キラは革命前のアルバトロスの首都で、ルークの勤め先の図書館であれこれ調べ物をした時のことを思い出していた。

 あの時は失った記憶の手掛かりを探そうと必死だったが、そんな中で海の向こうの未知の陸地についての学者の論説を読んだ時の心躍るような感覚は、今でも忘れていない。

 またある時は、キラはルークと一緒に剣術の指南書を読んでいた。

 魔法大学では一般的な魔術師の他にも、ルークのように剣術と魔法を併用する魔法剣士の育成にも力を注いでいた。

 学校内には剣術の師範も居るそうだが、さすがに客人に怪我をさせてはまずいということで、剣術の稽古までは体験させて貰えなかった。

 せめて何か新たな発見があればと、図解付きの剣術書を二人で紐解く。

「剣術の型って、こんなに色々あるんだね……。私、ちゃんと勉強するのは初めてかも」

 剣術にはまず入門として二大基礎流派の『獅子(ライガー)』と『犀(ライノ)』が存在し、それを修めてから自分の個性に合わせた型へと進んでいく。

「この大学にある剣術の本はあくまで魔法剣士を育成するためのもののようですから、最後は『梟の型』に落ち着くと思います」

 二人で読んでいる指南書には、右手に片手剣、左手に盾を持つ基礎の型『犀(ライノ)』から、左手に何も持たず空けて構える『蟷螂(マンティス)』へ派生し、そこから左手で魔法を操る魔法剣士専用の『梟(オウル)』が生まれた経緯が解説されていた。

 ルークが使い続けている流派もこの『梟の型』である。

「私も、盾とか持った方がいいのかな……」

 やがては流血への恐怖を克服し、自分でも戦えるようになろうとキラは自分なりに努力していた。

 訓練所は借りられなかったので剣の素振りはできていないが、今もこうして理屈の方面から剣の扱いを勉強中だ。

「キラさんは無意識に『獅子の型』の構えを取っていますし、無理に流派を変える必要はないと思いますよ」

 彼女の片手剣を両手で握り正面を向く構えは『獅子(ライガー)』の典型的なものだ。

 訓練とは言え咄嗟に出るということは、記憶を失う前にそれだけ鍛錬を積んだということ。

 中途半端に型を乗り換えるよりも、使い慣れた基礎を突き詰める方がいい場合もある。

 そうルークが説明しているうち、本のページは二刀流である『大鷲(イーグル)』まで行き着いていた。

「に、二刀流かぁ……私にはちょっと無理そう……」

 見た目は格好良さそうだったが、両手にそれぞれ握った双剣を自由自在に使いこなすイメージがキラには湧かなかった。

 同じ長さの双剣を使い、両手で同時に攻撃、同時に防御を行うのが『大鷲の型』だが、それでもかなりの器用さが求められる。

 更に教本を読み進めてみるが、かつてファゴットの街で稽古をつけて貰ったアルベールの動きはどこにも載っていなかった。

 本にある限りでは左手を空ける『蟷螂の型(マンティス)』が近いようだったが、彼は時に両手で剣を振ることもあった。

 アルベール自身が、特定の流派を習わずに独自に完成させた『無形の型』だと言っていた通り、どうやら既存の型には存在しない剣術のようだ。

 そこでふと、キラは今読んでいるのが基本的なことを書いてある本だということに思い当たり、ルークに話しかけた。

「……ルークは、退屈じゃない? これ、初心者向けの本だよね?」

「退屈ではありませんが……既に知っている知識ですね」

 既に一人前の魔法剣士であるルークには、入門書は易しすぎたようだった。

「無理に同じ本を読まなくてもいいよ? せっかくこんなに本があるんだし、ルークはルークの興味がある本を読んで欲しいかな……」

「では、お言葉に甘えて。分からないことがあれば、いつでも聞いてください」

 そう言って一度席を立つと、ルークはより専門的な『梟(オウル)』の指南書を持って隣に戻ってきた。

 キラが質問する時以外は黙々と本を読み込むルーク。

(やはり、ドラグマ式の流派は色々と違うな……)

 右手に剣を持ち、左手で魔法を操るのはルークの習ったものと同じだが、主に魔法の術式の構築が南方の流派とは大きく違う。

(ドラグマでは、道具を使って詠唱の短縮を行うのか。確かに、この方が誰でも扱えて便利だろうな)

 道具に刻む魔術文字も、ルークがいつも宙に描いているものと全く異なる形だった。

 ほとんどの魔法の流派で用いられる魔術文字は、古代語に由来するものだ。

 継承されてきた土地や流派が発祥した時代により、元になった古代語も違ってくる。

(ん? この魔術文字は……どこかで見た覚えがあるような、無いような……)

 ルークが目を留めたのは、ドラグマ式の魔術文字の記述のひとつ。

 解説によれば、雷を表す下位呪文を短縮するために道具に刻む文字のようだ。

(雷……雷……そう言えば、ユーリさんが篭手から電撃を飛ばす時に、こんな文字が浮かんでいたな)

 更に読み進めてみると、他にも火や風といった自然現象を表す魔術文字も記載されていた。

 どれもユーリがガントレットから無詠唱で術を放つ時に、腕甲に浮かんでいるものと酷似していた。

(そうか、ガントレットを使って詠唱を省略するのが、ドラグマ流の短縮法のひとつだったんだ。ユーリさんは恐らく、ドラグマで技術を習ったんだな)

 そう結論づけたルークだが、いくら下位の呪文であっても道具を使うことで完全に詠唱を省略してしまう方法は、この本には載っていなかった。

 また、魔術文字の形も本にあるものと、ユーリのガントレットに浮かび上がったものとは微妙に異なるように思える。

 疑問点はあったが今更本人に追及する程のことでもない。

 ルークは憶測を立てるのを中断し、自分の技術を磨くことに専念した。

「キラさん、ルークさん、そろそろお昼ごはんらしいですよ。読書は切り上げて、食堂に向かいませんか?」

 かなり熱中していたようで時が経つのも忘れていた。

 ヤンに言われて、ようやく二人は顔を上げて見合わせる。

「つい、夢中になっちゃったね」

「私達も食事にしましょう」

 キラとルークはヤンと共に食堂へと向かったが、三人が来た頃には食堂の中央でちょっとした騒ぎが起こっていた。

「あれ? 何でしょう?」

 首を傾げるヤンと共に、キラ達は群がる生徒達をかき分けて行く。

 その先には……。

「赤コーナー! 彗星のように現れたチャンピオン、無敵の大食クイーン! メイ!!」

 何と仲間の一人であるメイが、両手にフォークとスプーンを持って席についていた。

「青コーナー! 学園内で負け知らず、魔法はともかくフードファイトは滅法強い! 体重94キロ、肉体派大食漢が今日のチャレンジャーだぁ! ジョナサン選手!!」

 メイの隣には、かなり太った一人の男子生徒。

 両者に対して観客の生徒が惜しみない声援を贈る。

 特に旅人として大学を訪れてすぐに女王の座についたメイは、まさしく注目のマトだった。

「ヒューッ! 見ろよ、あの白い姉ちゃん! あいつが今のチャンピオンだってよ!」

「噂じゃ、牛二頭をぺろりと丸呑みにしたらしいぜ! こいつはやるかも知れねぇ……!」

「まさかよ。あの大食いジョナサンには勝てねぇさ」

 どうやら食堂が食べ放題なのをいいことに、フードファイトが催されるようだ。

「何だか……凄いことになっちゃってるね……」

「害があるわけではなさそうですし、静観しましょう」

 場の勢いに圧されつつ、キラとルークはメイを見守る。

 やがて山盛りの料理がメイと挑戦者の前に運ばれてきて、試合開始となる。

「かーんかーんかーん! さあ、戦いの火蓋が切って落とされました! 両者、同時に大盛りサラダにフォークを突き立てる! まるで槍使いの突きのような容赦の無さだぁ!」

 ゴングは用意できなかったため、司会役の男子生徒が声で再現した。

「今の所ペースはほぼ互角か? いや、ジョナサン選手がリードしている! さすが、学園に来てから食べ過ぎで太った男だけはある! 食欲はまさに底無し沼だー!」

 司会の生徒は喋り上手なのか、まくし立てるように試合を実況する。

「対するチャンピオン、遅れているが全く動じない! これは大食クイーンとしての余裕なのかー?!」

 そこで彼は、隣へ視線を向けて話を振った。

「さて、ここでゲストのレアさんに解説を聞いてみましょう!」

 何と司会役の隣にはちゃっかりとレアが座っており、大盛りのパスタを咀嚼しながらコメントをつける。

「むぐむぐ……あのデブがメイに勝てるわけないでしょ。ボクですら負けたんだから」

「おおっと、レアさん強気のコメント! 話によると、彼女もかつてチャンピオンに挑み、敗北した経歴があるとか!」

 レアも面白がって二人を観戦しつつ実況に加わっていた。

「試合はまだジョナサン選手のリードで進行中! 二皿目の料理、鳥の丸焼きに口をつけます!」

 挑戦者の男子生徒は、大雑把に切り分けた鶏肉を一気に口に頬張った。

「出たぁー! ジョナサン選手のビッグマウス殺法が炸裂だぁ! あんなに大きかった鳥丸が、もう半分になっているー! まさに獲物を貪り食う野獣! だがチャンピオンも負けじと丸焼きにロックオンしているぞ!」

 早さを追求するチャレンジャーに対し、劣勢ながらメイはどこ吹く風と言った様子で自分のペースを守って鶏肉を口に運んでいく。

「何という貪欲さ! チャンピオンの残した骨をご覧ください! 肉も軟骨も全てこそぎ落として、ものの見事に骨だけ残しているー! 食に対する情熱を感じます! 果たして勝つのはビーストか、それとも燃える情熱か、勝敗はまだ見えない!」

 それからも次々と料理が運ばれ、メイと挑戦者は黙々とそれを平らげていく。

 最初は挑戦者の生徒が早さでリードしていたが、5皿目に来てペースが落ちてくる。

 それに対して、メイは最初からずっと一貫して自分のペースを維持していた。

「おおっと、どうしたことか?! ジョナサン選手、食べる勢いが弱まってきている! 表情も苦しそうだ! そろそろ胃袋が限界かぁー?!」

 ここに来て試合が動いた。

「対するチャンピオン、まだまだ余裕を残している! ああっ、こうしている間にもチャンピオンがチャレンジャーに追いつき……ぬ、抜いたぁー!!」

 飛ばしもしなければペースを落とすこともなく、平然とした様子で料理を飲み込んでいくメイ。

「メイならあれくらい余裕でしょ。ボクが負けた時は、あの倍は食べてたわよ」

「えっ、マジで?! あ、いや、失礼しました! レアさんのコメントによれば、これでもまだ序の口! 地獄の一丁目にすら辿り着いていない! ああーっ、しかしここはまだ一丁目前でも、ジョナサン選手にとっては終点か?! チャレンジャー、かなり参って来ています!」

 あくまで料理を楽しみながら食べていくメイとは対照的に、ジョナサンと呼ばれた生徒はもう限界という様子で、それでも意地で食い下がっていた。

「チャレンジャー、学園不敗の意地をかけて最後の戦いに挑みます! だが苦しい、苦しい! もう限界か?! いいや、まだ食べ……おおーっと!! ここでチャレンジャーがリバース! リバースしてしまったぁ! これは失格となります!」

 挑戦者はとうとう、腹に収まりきらなかった料理を吐き出した。

「何と凄惨な光景でありましょうか! これはお見せできません! こちらにも酷いニオイが漂ってきます! 皆さん、もらいゲロには注意してください! しかし、これで決着がつきました!!」

 他の生徒がジョナサンの嘔吐物を掃除する中、司会役がメイの右手を持ち上げて宣言する。

「激戦を制したのは、絶対強者の女王メイ! チャンピオンの座を見事、守り抜きました!」

「勝った」

 前髪で上半分が隠れていても分かる程の得意満面を浮かべる彼女に、観客の生徒達から歓声があがった。

「リバースしてしまったものはともかく、ジョナサン選手の食べ残しは我々スタッフが美味しく頂き……おっとぉ?! 無敵のクイーン、メイがチャレンジャーの食べ残しにまで手を伸ばす! まさか?! まさかなのかぁーっ?!」

「ボクとフードファイトした時も、決着が着いた後でも更に食べてたし、大事なのは勝ち負けじゃないんでしょ」

 そうコメントしつつ、レアは食べ終わったパスタの次のシチューを持ってきていた。

 観客に見守られる中、メイは本来なら他の生徒が片付ける予定だった対戦相手の食べ残しを悠々と食べ始める。

 当然、出された自分の分は完食していた。

「何という、何という強さ! 強い、強すぎる!! これが大食クイーンの貫禄なのかー?! 勝負がついたにも関わらず、まだ食べ足りないといった様子でチャレンジャーの食べ残しまできれいに完食したーっ!! このフードファイターの胃袋は底無し沼どころか深淵なのか?!」

「ふぅ。美味しかった。ごちそうさま」

 4~5人の分量を一人で平らげたメイは、まだ余裕を残した様子でそうコメントした。

「もはや向かうところ敵なし! 誰もこの食欲モンスターは止められないっ! 学園トップのジョナサン選手が惨敗した今、新たにチャンピオンに挑もうという挑戦者は果たして現れるのかー?! では皆さん、また次回お会いしましょう!」

 盛り上がりが最高潮に達した観客は、玉座を守り抜いたメイに喝采を贈る。

「「「メーイ! メーイ! メーイ! メーイ!」」」

「……何か騒がしいと思ったら。最近は馬鹿馬鹿しい遊びが出来たものね」

 呆然と大食い対決を見ている間に、三人の横には騒ぎを聞きつけたソフィアが立っていた。

「ソフィさんが居た頃は、やってなかったんですか?」

「ええ。仮にあったとしても、私は興味ないけれど……」

 生徒達の悪ノリでとんだお祭り騒ぎになったが、一段落してからキラ達も少し遅い昼食を摂った。


 そしてとうとう三日目の朝、学長であるセルゲイ自らが客間を訪れ、準備が整ったことを告げる。

「すっかり待たせてしまったね。大学は楽しんで貰えたかな?」

「はい! 凄いところですね、この学校は」

 キラも魔法に明るくはなかったが、図書室の蔵書を色々と読んだだけでも充実した時間が過ごせた。

 昨日の昼に目にしたフードファイトは見なかったことにした。

「まあ、確かに飯はうめぇし、毎日風呂に入れるってのはいい生活だよな」

 学問に全く興味がないディックだったが、この2つだけは大いに評価していた。

 学校内を退屈に感じる彼にとって、食事と入浴だけが楽しみだったのだ。

「……あなたにかかれば、世界有数の蔵書や授業も豚に真珠ね。けれど母校はいいわ、第二の故郷のように感じるもの」

 ディックに呆れた視線を向けてため息をついた後、ソフィアはセルゲイに向き直る。

「ところでベズボロドフ学長、レアの入学の件ですが」

 ソフィアはこの数日、母校を懐かしみつつもレアを魔法大学に入れてやれないかと交渉を行っていた。

 到着した早々にゾンビに襲撃されるという事件に出くわしたものの、本来ならば魔法大学程安全で、かつ魔法を専門的に学べる場所はまずない。

 おまけに食事と風呂も完備で、今まで貧乏生活に苦しんできたレアにとっては天国のような場所だ。

「手続きの書類は揃ったとも。解析の後にでも、正式に大学に迎えよう」

「ありがとうございます」

 これでひとつ肩の荷が下りたと、ソフィアは安堵する。

「それから、チッコリーニ君に関しても雇用は歓迎だ。話によれば優秀な御者だと言うし、学生や客人の送迎を任せようかと考えている」

 レアとそしてもう一人、安全地帯を探していたのがカルロだ。

 ソフィアは彼も魔法大学で雇って貰えないかと相談しており、許可されれば晴れて危険な旅からは解放される。

「ほ、本当か?!」

 今まで行き場の無かったカルロは半信半疑で見上げるが、セルゲイは力強くうなずいた。

「よかったな、これで食うにも困らない」

 少なからずカルロの行く末を案じていた一人であるエドガーも、一安心して彼の肩を叩いた。

 食堂や大浴場といった大学の設備は学生と教員だけでなく、事務など他の仕事をする人間も利用させて貰えることになっている。

 ここで雇われたならカルロも不自由ない生活がおくれるはずだ。

「ふぅ……。やっとこさ落ち着ける。ゾンビだけは二度と御免だけどな」

 ほとぼりが冷めれば故郷の村に帰るつもりだが、それまでは大学で大人しくしていれば安全だろうとカルロは喜んでいた。

 そんな彼とは対照的に、魔法大学への入学がほぼ決まったレア当人はうつむいたまま、複雑そうな顔を浮かべている。

(ど、どうしよう……。トントン拍子で話が進んでいってる。このままじゃボク、本当に学校に置いて行かれるよ……)

 ちゃんと旅について行きたい旨を伝えなければ、そう思いつつも中々勇気が出ずに言い出せず、ここまで来てしまった。

(おっさんも言ってたし、鑑定結果を見てから決めてもいいよね……。結果次第で、旅が続くかどうかも分からないんだし)

 こうやって自分に言い訳をするのが悪いのだと分かりつつも、ついレアは意思表示を先延ばしにしてしまう。

「さて、もうこちらの準備は済んで、後は研究室まで来てくれればいい状態だ。キラ君、心の準備はいいかな?」

 背を屈めて真っ直ぐに顔を見つめるセルゲイに、キラは生唾を飲み込みながらもうなずいた。

「……はい。どんな結果でも、覚悟はできています」

 自分の過去に何があるのか、それを知ってしまったが最後、今までのようにルーク達仲間と過ごすことはできなくなるかも知れない。

 例えキラの本意でなかったとしても、今まで助けてくれた仲間達を裏切り、彼らの努力をぶち壊しにしてしまう可能性もある。

 それでも自分が何者か、キラは知りたかった。

 そのためにここまで辛い旅を乗り越えてきたのだ。

「うむ。では、ついて来てくれ。解析用の設備はなにぶん大掛かりなものでね、持ち運びができないんだよ」

 セルゲイに連れられ、大学の建物の更に奥、研究室まで招かれたキラ達。

 ここまではゾンビの被害が及んでいないのか、研究室は無傷だった。

 広々として天井の高い研究室には様々な設備が並べられており、熟練の魔術師達がそれらと睨み合いながら現在進行系で魔法の研究に勤しんでいた。

 一行はそんな中を通り、研究室の設備の中でも特に巨大な解析機の前まで案内される。

「これが、魔導具を解析するための設備だ。中央の台に魔法剣を抜いて、鞘と並べて置いてくれ」

 キラは言われた通り、宝剣を抜くと鞘と一緒に台に乗せた。

 台の周りを囲むように先端に水晶のついたアームが配置されており、台の上には覆い被さるように巨大な顕微鏡のような装置があった。

 水晶のついたアームは魔力の照射器であり、解析にかけられた魔導具に様々な種類の魔力を当てて反応を見るためのものだ。

 そして巨大な顕微鏡は、魔法的な加工を施されたレンズを通して、魔力を照射された魔導具がどんな変化を起こすか、肉眼で見えないものを観察するためのものだった。

 これ程大掛かりな魔導具の解析機は、とても個人の工房では所有できないものである。

 ソフィアが遠くてもドラグマ魔法大学を頼った最大の理由が、これだ。

 結果を見るためには巨大顕微鏡の上部にある接眼レンズを覗き込む必要があり、顕微鏡の脇には階段が取り付けられていた。

 セルゲイは当人であるキラと、そして助手として教え子のソフィアを連れて階段を登って接眼レンズ前の足場につく。

 高さにして建物の二階分くらいはあった。

 広々とした研究室を持つ専門機関でなければ、こんな巨大な装置は置いておけない。

 残る仲間達は装置から距離を取り、固唾を呑んで三人を見守った。

「よし、解析を開始する。魔力を当ててくれ」

 補佐に回る魔術師達は、安全のために剣の置かれた台から離れた上で、水晶のついたアームに手をかざして魔力を注ぎ込む。

 するとアームの先端の水晶が光り出し、それに呼応するように剣の刀身も白い光を帯び始める。

 接眼レンズから台の上の剣を覗き込んで変化を見ていたセルゲイは、早速目を見開いた。

「間違いない、これは古代に製造された本物の魔剣だ。現代ではもう再現できない、遺失技術で作られたものだ」

 セルゲイ自身、長く魔法の研究をして来たが、紛い物ではない本物の魔剣は初めて目にする。

 手元にある微動ハンドルを回して台をスライドさせ、刀身に刻まれた情報に目を走らせる。

 興奮気味にやや早口になりつつ、彼はレンズ越しに次々と違う顔を見せる魔剣の情報を、キラとソフィアに伝えていく。

「材質は普通の鉄に偽装されているが、オリハルコンだな。それも、紙より薄いオリハルコンを何重にも積層して作られている。その一枚一枚に、違う魔術文字が刻まれているな……」

 オリハルコンとは、『山の青銅』の意。

 これ自体はあくまで伝説上の存在であり、架空の金属に過ぎない。

 だが学者の間でのオリハルコンとは、古代に精製された復元不可能な謎の合金の総称として、半ばスラングのように使われていた。

 総称なのでオリハルコンと一口に言っても見た目や特性は様々だが、数少ない本物の魔剣の多くは透き通った半透明の合金で出来ていることが多く、ひと目で異質な剣だと分かる。

 その点、キラの剣は一見するとただの鉄の剣のように巧妙に偽装されていた。

 これもまた古代の遺失技術のひとつと思われる。

「魔術文字の形からして、恐らく製造されたのは今から300年程前の大陸中央部だろう。これは……恐らく、当時としてもコストを度外視して作られた特別製に違いない」

「持ち主の手掛かりは掴めそうですか?」

 キラが話の内容について行けない中でも、理解していたソフィアはセルゲイに尋ねる。

「うーむ……。興味深いことが分かってきたぞ。リリェホルム君、魔法における『制約の法則』はもう知っているね?」

「はい。制限をかければかける程、その範囲内での術の効力は高くなる……」

 門外漢のキラにはさっぱりだったが、魔術師にとっては基本だった。

 剣の刃が薄く鋭い程切れ味を増すように、適応範囲を狭く絞って限定すればする程、そこに魔力が集中してより強力な術が完成する。

 その反面、使える条件が限定的となり汎用性は失われる。

「この魔法剣を扱う条件は2つ……。ひとつは、特定の血筋にのみ反応するようだ。恐らくこれは、名のある人物が子孫に向けて残したものと考えるのが妥当だろう」

「もうひとつの条件とは?」

「『異能力』だよ、リリェホルム君。この剣は異能者の魔力に反応し、そしてそれを増幅する機能が組み込まれている。領主が魔剣を起動できないのは当然だ、2つの条件のどちらも満たしていないのだからね」

 話について行けないながらも、その魔剣が反応する血筋とは何なのか気になっていたキラ。

 彼女が要望を出すまでもなく、セルゲイはやがてその答えの核心へと迫っていく。

「これは……家紋か。魔術文字が並ぶ中央に、家紋が刻まれている。リリェホルム君、見てみるといい」

 セルゲイに促され、接眼レンズを覗き込むソフィア。

「この印章は?」

 彼女も見覚えがあるようで、どこで見たか思い出せない形だった。

 大きな丸の中には、孔雀のような立派な尾羽根を持つ一羽の鳥が描かれている。

「まず、全体を包む円は太陽の象徴。そしてその中に描かれているのは、燃える翼を持つ火の鳥……不死鳥(フェニックス)だ」

 それを聞いて今見ている家紋に思い当たったソフィアは、思わず顔を上げてセルゲイと見合わせる。

「不死鳥の印章を掲げることができる家と言えば……!」

 伝説の不死鳥は今でも特別な存在。

 それを象徴とする家が大陸にひとつだけあることを、二人は知っていた。

「間違いない。これは中央部のロイース王家に由来する魔剣……いや、聖剣だ」

 これに一番驚いたのは、間近でこのやり取りを聞いていたキラだった。

「えっ?! 王家の剣だったんですか、あれ?!」

 確かに鞘まで貴金属や宝石で装飾されたまさに宝剣と呼べる代物だったので、何かの宝物ではないかという認識はあった。

 だがまさか超大国の王族の剣だとは、キラも予想していなかった。

「ここまで分かれば、もう十分だろう。照射する魔力の出力を落としてくれ」

 そう言われた魔術師達は、魔力照射器に込める魔力を少しずつ弱める。

 その間にセルゲイはキラとソフィアを連れて階段を降り、剣の置かれている台までやって来た。

 台の上の剣は未だに強い光を放っており、魔術師達が魔力の照射をやめた後もなお反応し続けている。

 セルゲイは自身の魔力で自らを包んで守りながら、慎重に輝く魔剣に近付き、回収した。

「さあ、握ってみなさい。心配は要らない、聖剣は本来の持ち主を絶対に傷つけないものだからね」

 そう言って、セルゲイは眩いばかりに刀身から白い光を発する剣を、持ち主であるキラに差し出す。

 まだ半信半疑のキラは恐る恐る手を伸ばし、剣の柄を握った。

 次の瞬間、刀身の光は更に強くなり、目を開けていられない程の閃光を放つ。

 それと同時にセルゲイは魔力で自衛していたにも関わらず剣に弾き飛ばされ、尻餅をついた。

「学長!!」

「ああ、大丈夫だ」

 魔術師達が慌てて駆け寄るが、幸いセルゲイに怪我は無かった。

 そして強い光の中心に居るキラはと言うと、途端に激しい頭痛に苛まれて膝をついていた。

「ぐぅっ?! あ、頭が……!」

 苦悶の表情を浮かべるキラを案じて、ルークが駆け寄ろうとする。

「キラさん!」

 しかし、彼はキラを包み込む白い光の膜のようなものに弾かれ、キラに触れることすらできなかった。

(これは、小規模な結界?! これも剣の力だと言うのか……!)

 魔力の盾よりも強固な守りを誇る魔法が、結界と呼ばれていた。

 本来ならば数人の魔術師を集めて儀式を行い展開するものだが、何とこの剣はキラ一人を覆う程度の範囲とは言え、詠唱や儀式も無しに結界を構築していた。

 さっきセルゲイを弾き飛ばしたのも、この結界の力だ。

 悶絶するキラは心配だが、結界に阻まれてはそれを打ち破る術をルークは持たない。

(何が起こっているんだ?!)

 キラを包む光の壁の周囲には、古代語と思われる幾何学模様が宙に浮かんでは消えてを繰り返す。

 正体を現した聖剣は光の中で何らかの処理を行っているのだ。

 困惑するルークや仲間達が見守ることしかできない中、当人のキラは今まで失っていた記憶が一気に意識に流れ込んできていた。

 自我に目覚めたばかりの幼少期から、両親や兄弟、そして優しい幼馴染に囲まれて育った子供時代。

 剣術や兵法、帝王学などの学問を学びながら成長していった過程。

 それらが走馬灯のように過ぎ去っていく。

 そして最後に待ち受けるのは、残酷な虐殺の記憶。

 突然現れた造反者により家族は次々と殺されていき、死を悟った父親は最期に一族の宝であるこの剣をキラに託し、逃げ延びるよう言った。

 その直後、彼女の父は兵隊によって斬り殺される。

 おびただしい量の血が大理石の床に飛び散った。

 恐怖したキラは言いつけを守り、ひたすら逃げた。

 だが彼女の足で訓練された兵士から逃げ切ることはできず、破れかぶれになったキラは藁にもすがる思いで剣を抜く。

 剣はそれに応えるように魔力を起動し、閃光が迫りくる敵を塗り潰した。

 だが生まれて初めて剣の力を行使した代償として、反動でキラは記憶のほとんどを失い、自分が誰なのかすらも忘れてしまった。

「そうか……そうだったんだ……!」

 刀身の光は見る見る収まり、結界も消滅する。

 そして膝をつきながら剣を握り締めていたキラは、全てを理解して呟いた。

「全部、思い出した……!」

「キラさん?」

 ゆっくりと立ち上がるキラに、ルークもどう声をかけてよいものか分からず、困惑する。

 記憶が戻ったキラは、もう彼の知っているキラではないかも知れない。

 かつて聖都ヴェンデッタの教会で交わした約束も、無効になっているかも知れない。

 そんなルークの不安をかき消すかのように、ゆっくりと顔を上げたキラは強い眼差しで真っ直ぐに前を向き、宣言する。

「私は、キラ・サン・ロイース。ロイース王国の第三王女。そして、ロイース王家の最後の生き残り……!」


To be continued

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