第15話

「えっと…?」

いきなり可愛いと言われたメイは顔を真っ赤にしていた。


まさかいきなりそう言われるなんて思いもしなかった。


メイは恥ずかしくて自分の手を顔に当てる。


その恥じらっている姿すら、イクリスの目には可愛くてしょうがなかった。


「メイ、お前は俺を殺す気か!?


大体、日を追うごとに可愛くなるなんて反則すぎる!メイのことを見てるだけで緊張してしまうし、目も合わせられなくなってしまう!それは俺のせいでもあるのだけれど!でもメイのことを考えたらいてもたってもいられないんだ!

可愛い、可愛すぎて辛い、出来れば他の男にお前の可愛いところなんて見せたくない!独り占めしたい!」


そこまで言い切ってふとイクリスは我に返る。


俺、心の声を全部口に出して言ってなかったか!?


やばい、俺の人生終わった。


絶対ドン引かれる。


だって気持ち悪いだろ、今の俺。


最悪だ、やばい、メイの方を怖くて見れない。


イクリスは黙って俯いていた。


すると、メイから小さく返事が来たのだ。


「えっと、今のはイクリスの本心…?」


うわー絶対引いてるよこれ。

内心絶対この人無いわーって思われてるよ。


穴があったら入りたい。

寧ろ今ここで穴を掘り出したい。


しかし、ここまで言って嘘でした!何て言える訳もない。


「あ、ああ。」


俺は先程の大声とは裏腹に大分小さく絞り出した声でそう呟いた。


「そ、そうなんだ…。」


今メイはどんな表情をしてるのだろうか?


気になるけれど怖くて見れない。


冷ややかな目で俺を見ているのだろうか?


それはそれでちょっと気になる。


イクリスはチラリと顔を上げてメイの方を見た。


すると、メイも顔が俯いており、表情が良く見えない。


やばい、ガチで困ってる!?


というか、もう俺と顔も合わせたくないくらい嫌がっている!?


しかし、もう言ってしまった後なのだから、弁明すら出来ない。


「う、嬉しい…!」


そう言って、メイは俺に抱きついてきた。


俺は思考がフリーズする。


今何が起きてる?


俺が暴走して変なことを沢山言って。


それからメイにドン引きされて、抱きつかれてる?


何故だ?


「????」


イクリスには訳が分からなかった。


しかも、その、メイの体温や香りなんかが直に感じるせいで、段々とこれが現実味を増していく。


やばい、メイがこんな近くにいる。


いい香りがする、なんか全体的に柔らかいし、腕とか細いな。


あれ、この状況まずくないか?

俺は耐えられるか?


これは試練か何かなのか?


「私、ずっとイクリスのことが好きだった!」


そう俺の胸の中でメイが言う。


成る程と俺はそこで分かった。


俺はきっとあの本心を全部言った時に死んだんだな。


そしてここは俺の都合のいい様に出来た天国という訳か。


だからメイがこんな事を言ってくれるんだな。


しかし神様とは本当に居るんだな。


死んだ後にこんなにリアルな夢を見させてくれるのだから。


そうしみじみと神へと感謝する。


しかし、夢ならもうちょっと堪能しても良いだろう。


俺はメイの背中に腕を回して、抱きしめ返した。


「!!」


メイは少し驚いた様だが、更にメイも強く抱きついてきた。


「好きだ、メイ、大好きだ。」

俺はそうメイに囁く。


「うん。私も、ずっとイクリスが大好きよ。」


それから、メイと目があう。


いくら夢とは言え、どこまで許されるのだろうか?

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