第10話

イクリスはそれからと言うもの、メイを本気で避け出した。


メイもすぐ様そのことに気付き、物凄く落ち込んでしまった。


「うーん、てっきりイクリス兄さんが嫉妬してメイさんと接近すると思ったんですがね~。」


作戦を考えたメアリーもこの状況を見て考え込む。

何せ自分が言い出したせいで状況が悪化してしまったのだ。それなりに罪悪感があるのだろう。


アイザックはそんなメアリーの頭を優しく撫でる。


「まあ、元は兄貴があそこまでヘタレなければ良かっただけの話だから、メアリーが気に病むことはないよ。」


そしてジョージもまたそんなイクリスとメイの様子を見ていた。


あの2人は両想いだと聞いていたが、本当にそうなのだろうか?


メイさんはイクリスさんのことを好きだということが分かったけれど、イクリスさんはどう思っているんだ?


本当にイクリスさんはメイさんのことが好きなのか?


もしそうでないのなら…。


そしてジョージは、イクリスを呼び出した。


ジョージに呼ばれた通りに、イクリスは姿を現した。


「君がこの手紙のジョージさんだろうか?」

「はい、突然呼び出してしまい、申し訳ございません。」


ジョージは軽く深呼吸すると、スッと目の前のイクリスを見据えて口を開いた。


「俺は、メイ・サンチェスさんのことが好きです。」


そう宣言され、イクリスは片眉をぴくりと動かす。


「急に失礼かもしれませんが、イクリスさんは彼女の許嫁だと聞きました。

あなたがメイさんを好きでないのなら、あなたに手を引いて頂きたい。」


ジョージはイクリスを凝視した。

彼は一体どう出てくるだろう。


「…そうか。」


イクリスはそう一言呟いた。


続きの台詞を待つも、中々話が出てこない。


「…あの?」

ジョージは続きを促そうと質問する。


「つまり、どちらなのでしょうか?」


しかし、イクリスは考え込んでいるのか、中々話が進まない。


もしかして、この人相当なコミュ障では?

ジョージがそう思った瞬間、やっとイクリスは口を開いた。


「俺は、メイに幸せになって欲しい。」


それはきっと、イクリスが考え抜いた本心なのだろう。


そう思うということは、やはりイクリスはメイのことが好きなのだろうか?


「あの、イクリスさんは、メイさんのことが好きと言うことでよろしいでしょうか?」


そう尋ねると、イクリスはこくんと頷いた。


成る程、この人、寡黙でクールぶってる様に見えていたが、ただただ人とコミュニケーションを取るのが苦手なだけなのか。


かと言って、このままではメイさんが浮かばれない。


「俺、明日の夕方17時にメイさんに告白します。」


「!!」

イクリスはびっくりした表情を見せる。


「俺は抜け駆けするつもりはありません。あなたがもしメイさんを好きなら、俺より先に告白して下さい。」


それでは、とジョージは帰って行ってしまった。


「…。」


イクリスは暫く立ち止まったまま、考え込んでいた。

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