第9話

一方メイの方はというと、ジョージと普通に身の上話をしていた。


「成る程、メアリーさんとは幼馴染だったんですね。」

「はい、まあ兄と妹みたいな関係ですよ、流石に彼氏が出来たことには驚いたんですけどね。」


何だか聞いてて微笑ましいなとメイは思った。


自分もイクリスやアイザックとは幼馴染ではあるが、兄妹の様に仲が良いと言うわけではない。


「メイさんは何でイクリスさんを好きになったんですか?」


「え、えーとね。実は…」


そうメイは過去の事を話し出した。


それは今から10年ほど前のこと。


当時6歳だったメイはいつものサンチェス家とユースウェル家の会食の後、会計を払ってる両親より先にお店を出たメイは、たまたま野良猫を見かけて跡を追いかけてしまった。


野良猫の行った路地へメイもついていく。


すると、いつの間にか猫の姿はなくなっていた。


「あれ?いない…?」


そう思い元来た道を帰ろうとするも、路地を抜けた先は全然知らないところだったのだ。


どうやら猫を追うのに夢中で遠くへと来てしまった。


辺りもそろそろ暗くなり始め、ぽつぽつと街灯がつき始める。


「どうしよう、此処どこだろう。」


メイは何とか交番に行こうとするも、そもそも交番が何処かすら分からない。


誰かに道を尋ねようか?

しかし、知らない人にはついていっちゃいけないと言われているし…。


それに見ず知らずの人に話しかけるのも怖い。


メイは心細さからその場で泣き出してしまった。


「メイ!」


そんな時、後ろから野良猫を抱きかかえたイクリスが声をかけてきたのだ。


「イ、イクリス~っ!」


私はイクリスに抱きついた。


「怖かったよぉ~!」

その後、イクリスはぽんぽんと私の頭を撫でてくれて、そのまま手を引かれて両親たちの元へ無事戻れたのだ。



「…と言う事があって。」

メイは少し照れながらジョージに話す。


「そうなんですね、素敵ですね。

でも何でイクリスさんはメイさんを見つけられたんですかね?」


そうジョージに聞かれてメイはそれはと答える。


「私が野良猫を追いかけていったところをたまたま見てたらしくて、それで野良猫を追いかけてたら私を見つけたらしいの。

それに私が迷ったところはイクリスの家の近所でもあったから、私より道を詳しかったからって、後からイクリスが教えてくれたわ。」


成る程な、とジョージは思う。


「しかし、今のイクリスさんより随分何というか、丸いというか…。」

「ええ、その頃まではよくお喋りとかしてたんだけれど、段々と喋らなくなってしまって…。」


恐らくそれはメイのことを意識し始めたからなのだろうとジョージは推測する。


一方イクリスは、そんなメイとジョージのやり取りを遠目から見ていた。


イクリスからはメイが楽しそうに談笑してる様に見えていた。


「やはり、俺は身を引くべきなんだ…。」


そうイクリスは心の中で決心した。

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