3-4 クローディアとの闘い 2
まずいな……。
戦況を見守るディルが、その変化に気づく。クローディアの意図は読めないが、何か先の展開に対して、彼女が布石を打ち始めたのは明らかだった。
当然、その違和感をフィオリトゥーラも感じていた。
一度の突きは速いが、先までの連撃と比べれば、このまま躱し続けることはそれほど困難ではないかもしれない。
だが、その間に剣を割りこませることもできない。いや、できる。いや、できない。
クローディアの攻撃を紙一重で躱しながら、フィオリトゥーラは思考を巡らせる。
嫌な間隔の攻撃だった。思わず剣を振りそうになるが、それが間に合うかどうかの判断が難しい微妙なテンポで、次の攻撃が来るのだ。
シュンッ!
左肩をひねり、背後にレイピアの突きを通す。戻っていくその軌跡を視野の端に捉えながら、ここが剣撃を放つ機会かと力を込める。
すると、フィオリトゥーラが動きだそうとするまさにその直前、次の突きが腕を狙って放たれる。
反撃はできず、彼女はそれを躱した。
タイミングを計られている――。フィオリトゥーラは確信した。
彼女がそう判断したのとほぼ同時に、ディルもまた同じ考えに至っていた。
あのレイピア使い、反撃の誘発を狙ってるのか?
続く攻防を目にしながら、ディルも思考を巡らせる。
それにしても、フィオリトゥーラは器用に避ける。先の連撃ほどではないとはいえ、速いレイピアの刺突を、一歩も後退せずにあの距離で凌ぐのは容易ではないだろう。
……にしたって、馬鹿正直に避けずに退がっちまえばいいものを、って、ん?
そう。最初の位置取りと違い、今は後ろが空いているのだ。
ディルはごく自然にそんなことを考えたが、瞬間、そこに違和感を覚えた。
フィオリトゥーラは回避を続ける中、反撃の機会を狙うことから意識を切り替え始める。
相手の攻撃に神経を集中させ、そしてこちらも計るのだ。
もし、両手剣を振るタイミングを計られているのだとしたら、行けると判断したその瞬間が罠なのかもしれない。だが、相手が意図して作るその隙は、むしろこちらが距離をとるためには都合が良いはずなのだ。
まず一度、間合いをとって仕切り直す。
明らかに何か狙っているクローディアを前にそう考えるのは、やはり自然な思考の流れといえた。
首を傾けて突きを躱した後、フィオリトゥーラは、戻っていくレイピアの剣先とクローディアの動きを目で追う。レイピアは戻される時の速度が常に最速で、コントロールされるのはそこからだった。
肘が引かれた後、わずかな溜めがあった。イメージする。その間に自分が動くさまを。
上方に次の突きが放たれた。
フィオリトゥーラがわずかに身をかがめると、その頭上をレイピアの剣先が通りすぎていく。
絶好の機会だった。軽く曲げた両膝を、そのまま予備動作にすればいい。
引き戻されるだろうレイピアの軌跡は見ずに、前に出した左足に力を込める。レイピアが戻るのと同時に、大きく後方に跳躍するために。
瞬間、ぞくりと、フィオリトゥーラの背筋を冷たい何かが走った。
この選択は、自分を殺す――。
理由もわからぬまま、なぜかそれだけ直感し、フィオリトゥーラは即座に全身を脱力させる。
力の抜けた左足が、地面を蹴りそこない、軽く前に滑った。身体を支えることをやめた右膝がさらに曲がり、倒れると思ったその時、目の前のクローディアが奇妙な動きを見せていた。
突きだされたレイピアは、不思議とほとんど引き戻されていなかった。だというのに、彼女は前に出した右足を、さらに踏みこもうとしている。
そして、崩れていくフィオリトゥーラの身体に覆いかぶさるように、クローディアの上体が傾いていく。
もはや思考とすら呼べない超速の回路が目まぐるしく働いた。
クローディアが見せる表情、驚き、見開かれた青い瞳。フィオリトゥーラは、ここなのだと理解した。
「なッ⁉」
すでに次の動きに移行していたクローディアは、予想外の事態に慌て、必死に身体をよじる。
もう止まるはずがなかった。当たり前だ。後方に跳躍するフィオリトゥーラを同時に追撃し、そのまま着地際をレイピアで貫くつもりだったのだから。
反撃の誘発を狙いながらも、相手が後方への離脱を選択したその時は、まだ見せていない歩法を使い、一気に距離を詰め、仕留める算段だったのだ。
クローディアは、よろけながらも勢いを消せず前方へと動いていく。
フィオリトゥーラは、脱力していた右膝に力を込めた。崩れかけていた身体が辛うじて止まる。同時に左足をさらに滑らせる。その足先が、クローディアが踏みだした右足に触れた。
「ハァッ!」
鋭い呼気とともに、フィオリトゥーラは右脚をさらに強引に伸ばし、無理矢理身体を起こす。自分でも信じられないような力が湧いていた。
そして今、かすめるほど間近で左脇を通りすぎようとするクローディアの、その胸元辺りを目がけ、勢いそのままに自身の左肩を当てる。
「ぐッ……」
肩をぶつけられたクローディアは大きく体勢を崩しながら、フィオリトゥーラの背後へと抜けるようによろけていく。右足の動きが制限され、自然にその身体が左回りに回転していた。
転倒だけはまぬがれようと、クローディアは左腕を大きく振りだす。
それで回転に勢いがつき、辛うじてバランスは保たれたものの、その程度で体勢を維持できるはずもなかった。
くるりと一回転すると、クローディアはフィオリトゥーラに背を向けた状態で、片膝をつき、かがみこんでしまう。
戦慄が走る。見えない背後への恐怖に駆られ、反射的に身体が動いた。
そこには思考も駆け引きも存在しない。本能的な動きといえた。
地面を蹴り、かがんだ低い姿勢のまま滑るように距離をとって反転する。攻撃に備えて、レイピアは自然と横向きに掲げられていた。
振り向いた瞬間、見上げた視界に映ったものは、くるりと回転しながら両手剣を振りかぶる敵の姿だった。
陽光を受けて、加速する直前の剣身が、煌めきをひとつ放つ。
愕然とする。もう身体を動かす余地はなかった。
クローディアは、ひどい失策だと自らを笑った。慌てて動いた結果、わざわざ両手剣の間合いを作ってしまったのだ。
そして覚悟する。終わった、と。
――キイィィィィンッ!
甲高い金属音が間近で鳴り、激しく両の耳をつんざいた。
右手に伝わる感触、振動。気がつけば目を閉じていた。
静寂が訪れる。
「……?」
クローディアは、おそるおそる目蓋を開けた。
レイピア越しに、互いの視線が合った。迷いなくこちらを見つめてくる澄んだ碧い瞳。
眼前に掲げたレイピアの剣身は、根本のいくらかを残すのみで、そこから先が消失していた。その際の衝撃からか、柄を握る右手に強い痺れが残っていた。
その向こうでは、剣を振り終えた姿勢のまま、フィオリトゥーラが静止している。彼女の一撃は、クローディアではなくレイピアへと放たれたのだった。
勝利の宣言をするでもなくフィオリトゥーラは、片膝をついたまま茫然とするクローディアを見下ろしていた。
腕の一本も斬り落とさず、ただ武器を奪っただけ。そして、闘いは終わったと言わんばかりに、剣先を下げたまま距離もとらない。
その甘さへの苛立ちと、屈辱からの怒りの感情がクローディアの中に湧きあがる。
しかし、再びその瞳へと意識を戻した瞬間、それは急速に収まっていった。
勝ち誇るでもなく、嘲るでも憐れむでもない。真っすぐな視線……。
私はただ全力を尽くし、この結果を獲得した。そして今、貴女はどうするのか?
おそらく本人は無自覚のまま、美しい瞳がそう語りかけてくる。
気がつけば、固く結ばれていたクローディアの唇が緩んでいた。
「はは……。降参だ」
クローディアが告げると、フィオリトゥーラは止めていた息を大きく吐きだす。
「感謝します」
そう言った瞬間、彼女は何かから解放されたように脱力し、途端に肩で呼吸を始めた。だが、その顔はほころんでいる。
離れて闘いの様子を見守っていたディルも、それを見て同様に緊張を解くと、壁から背を離し、二人のもとへ向けて歩きだす。
その一歩目を踏みだした時だった。
目の前の路上に、唐突に何かの影が出現した。
咄嗟に顔を上げると、それはディルの視界を通りすぎて、目の前へと落下していく。
ドンッ、とこれみよがしに音を立て、その巨体は、両の足で石畳の上へと豪快に着地した。
「な……!」
わずかに腰を落とし、右手をシミターの柄にかける。呆気にとられながらも、ディルの反応は素早かった。
「おい、勘違いするなよ」
低く心地よい響きを持つ声だった。
男はディルに背を向けたまま、まるで動く気配を見せない。見れば、その手や腰に武器に類するような物は何ひとつ見られなかった。
「もう勝負はついてる。俺は闘うつもりはないからな」
続けて言った。大柄な男だった。
ディルよりもだいぶ背が高い。百九十センチ近い「千の剣」のライマーとイメージを重ねてさえ、この男の方が上を行くだろう。
皮製のチュニックを着こみ、下はディル同様にゆったりとしたブレーを履いている。チュニックは肩口から袖がなく、男の両腕はむき出しになっていた。ブレーの裾はブーツの中に全て収められ、男の服装は全体的に動きやすさが重視されている。
隆起した岩のような筋肉をまとった太い上腕が、否が応でも目を引いた。
……怖えな、こいつ。
ディルは警戒を解かず、男の姿を見据える。素手の相手を前にして、これほど脅威に感じることは初めてだった。
むき出しの腕だけではない。服の上からでも、この男は全身にそれが行き渡っているのだと容易に想像することができた。
しかも、その圧倒的な筋肉の量感を見せつけながらも、そこに鈍重な印象は皆無だった。一度スイッチが入れば、この男は獣のような俊敏さで、その凄まじい力を解き放つだろう。
「負けちまったなあ、サンセット嬢」
よく通る太い声。背後のディルに警戒する様子もなく、男は無造作に歩いていく。
クローディアがゆっくりと立ち上がった。折れたレイピアを鞘に戻すと、くるりと向きを変える。
「賢者のところへは案内する。少し待っていろ」
背後のフィオリトゥーラへと小声で告げながら、彼女は男を睨みつける。それから、先ほどまでレイピアを手にしていた右手の拳を握ると、それを脇に構えた。
男はその顔に快活な笑みを浮かべながら、無防備に接近していく。まだその距離は遠く、両手剣の間合いですらない。
クローディアの身体が、ゆらりと前方に倒れこむように傾いた。
前に出した右足が地面を踏みこむ。そう思った瞬間、その右足がするっと地面を滑るように移動を開始した。後方の左足が、強く地面を蹴ったのだ。
黒いコートの裾を翻し、前傾姿勢のままクローディアの身体が、何かに引っ張られるようにして、男を目がけ一直線に放たれる。脇に構えた右拳は、同時に前に突きだされていた。
不思議な動きだった。その身体を上下に揺らすことなく、クローディアは二回分の跳躍は必要だったはずの男との距離を、一瞬で詰めた。
「うおッ」
男は声を上げながら、慌てて上体を反らす。目一杯突きだされたクローディアの右拳が滑らかに上昇し、男の顔面へと吸いこまれていく。
パシッ、と小気味よい音が鳴った。
クローディアの身体が宙に浮いたまま静止する。その攻撃は男の顔面を見事に捉えたかに見えたが、届いてはいなかった。
男が間一髪、自身の顔の前に手をかざして、クローディアの拳をその大きな掌で遮ったのだ。華奢な体躯とはいえ全体重が乗った一撃を、男はあまりにも軽々と受け止めていた。
「チッ」
着地すると同時に、クローディアが舌打ちする。
「残念だったな。負けたのは初めてだろう?」
「保護者気取りか?」
「なんだよ、監視役のことか? そいつは今に始まったことじゃない」
笑顔を崩さずゆったりと話す男を、クローディアは再び睨みつけた。
「わかってるさ! ちょっと、気に入らなかった、だけだ……」
吐き捨てるように言うが、最後の方は消え入るような声になり、それで彼女は落ちついたようだった。その証拠に、その顔から険しさが消えていた。
自らの怒りが理不尽なものと理解していたが、それでも彼女は一度それを外に吐きだしたかったのだ。
フィオリトゥーラは呆気にとられ、二人とその向こうのディルへと交互に視線を送る。
ディルも気勢をそがれ、すでにその手はシミターの柄から離れていた。
なんなんだ、こいつら……。
混乱しかける頭の中で、だがそこはディルらしく、また別の思考も同時に働いていた。
今のがさっき狙ってたヤツか?
クローディアが一瞬で間合いを詰めた特殊な動作。先のフィオリトゥーラとの闘いの中で、最後に繰りだそうとして不発に終わったのが、おそらく今の歩法だったのだろう。
跳んだのか走ったのか判別がつかないような動きだった。一度の跳躍では不可能な距離を、前に滑らせた右足が一度途中でわずかな支えになりながら、再度左足が地面を蹴りなおし移動したようにも見えた。もっとも、一瞬のことで半分以上は推測に過ぎないが。
ひとつ確実に言えることは、あの闘いの終盤、もしフィオリトゥーラが後方に跳躍して間合いを外そうとしたならば、この歩法で距離はあっさりと詰められ、そしてどこか無防備になった箇所に、深々とレイピアが突き刺さっていただろう。
それにしても、男はあの速く長い距離の攻撃をあっさりと防いでみせた。力自慢なだけでできる芸当ではない。
「あんた、何者なんだ?」
ディルはゆっくりと歩み寄りながら、男へと訊ねる。ほぼ間違いなく賢者に関係する者だろうと確信しつつも、そう問いかけていた。
男が振り向く。精悍だが思ったより穏やかな顔つきをしている。
「なんだよ、俺を知らないのか?」
その意外な返答に、ディルは眉をひそめた。
「はあ? いや、今会ったばっかで知るわけねえだろ」
そんなディルの反応を目にすると、男はその表情を曇らせてしまう。
「くそ、騙されたのか……。俺もだいぶ有名になったって聞いてたのに、全然駄目じゃねえか」
男はなぜか露骨に悔しそうにしている。ディルはそんな様子に首をかしげながら、仕方なしに続けて訊ねた。
「あんた、名前は……?」
「ヴァレルだ」
男はつまらなさそうに自分の名を告げるが、その名を聞いてディルは目を剥いた。
「ヴァレル? もしかしてあんた、ヴァレル・ゴーデンなのか⁉」
「ああ。知ってるのか?」
男の顔が途端に明るくなる。感情の起伏が激しい男だ。
「知ってるも何も、〝
ディルが口にしたとおり、「鉄槌」の異名を持つその名は、聖地中に広く知れ渡っている。ここ一年で名を馳せた豪快な戦闘スタイルが人気の剣闘士だ。
「本当かよ。じゃあ、なんでさっきは知らないとか言ったんだ?」
ディルは、そんな風に素直に訊ねてくる、この「ヴァレル」と名乗った巨体の男を眺める。
この広い聖地では、有名剣闘士の名を騙る者に出会う機会も少なくはない。
一部地域で実力ある剣闘士の名が売れ始めても、まだその顔や姿が広く認知されていないということはよくある話で、それを利用して詐欺などを働く者、あるいはそこまで悪質ではなくとも、刹那的に有名人の気分を味わいたいだけという輩などが、どこの地域でも定期的に出没する。
ただ、それらはある程度までの有名人の話であって、ガーデンを舞台とする剣位の十二人はもちろん、多くの観衆の前で試合をこなすAランク上位の剣闘士の名を騙ることなど普通はありえない。そのレベルの剣闘士ともなれば、それだけその姿を認知している者が多いからだ。
剣位に近い存在と噂される「鉄槌ヴァレル」も、当然のごとく知名度としてはその格に間違いないのだが、ただ、彼の場合は少し特殊な例と言えた。
「いや。あんた、その、大丈夫か? ヴァレルは試合の時、いつもフルプレにフルフェイスじゃねえか。しかも、その恰好で出てきてそのまま去ってくし、誰も顔を見たことがないってのも合わせて有名なんだぜ? 顔を見ただけでヴァレルだなんてわかる奴なんかいねえだろ」
実際そんな事情から、体格さえ似ていれば、他の同格の剣闘士より騙るのに遥かに都合がいい名ではあるのだ。
ヴァレルは、驚きの表情でディルを見下ろしている。信じられない話だが、彼は今初めてその事実に気がついたようだった。
「言われてみれば、確かにそうか……」
ディルはそんなヴァレルの間抜けさに呆れるが、だが、同時に確信する。この男は本物の鉄槌ヴァレルに違いない、と。
ヴァレルの試合は二回観ているが、ヘルムや鎧に全身が覆われ、実際その顔どころか身体つきの詳細さえもわからなかった。
そんなヴァレルは、ディルが見た試合の時も、重量のあるフルプレートを身に着けたまま、走り、そして軽々と、人一人を飛び越すほどの跳躍をしてみせた。あの冗談のような光景を目の当たりにした時、自身が感じたことをディルは今も覚えている。
常人ではありえないあれほどの動きを可能とするのは、ただ巨大な身体に大量の筋肉をつけているというだけでは到底かなわないだろう。
しかし、今目の前にいるこの男の身体つきや動きには、これならばとそう思わせる雰囲気があった。
くわえて、もしこのヴァレルが偽物だとすれば、有名人の名を騙ろうと画策する者がこの体たらくでは駄目だろう。
ディルは、いつの間にか自分の顔が緩んでいることに気がついた。
「なんだよ、笑うなよ」
ヴァレルが不服そうに言う。
ディルは、思わず嬉しくなってしまう自分の感情が上手く抑えられなかった。
我ながら馬鹿馬鹿しいと思いながらも、聖地の頂点を視界に捉えつつあるような剣闘士が目の前にいるという、ただそれだけの事実が、妙に気分を高揚させた。
「いや、悪い。つーか、あんた、なんでウォーハンマーすら持ってないんだよ」
まだ笑ったままディルが言う。
「ああ? あんな物普段から持ち歩いてたら邪魔だろう」
「はは、凄えな。流石すぎる」
剣闘士が日常でも何かしら武器を携帯するのは常識だ。だが、ヴァレルはそんな常識すら意に介さない。
感心するとともに、ディルは可笑しくてたまらなかった。
そんな二人をよそに、クローディアはおもむろに通りの端まで歩くと、路上に落ちていた革袋を拾う。そして、それをフィオリトゥーラへと手渡した。それは、闘いが始まった時に放りだされたカルダ=エルギムの両手剣を入れるための革袋だった。
「ありがとう。クローディアさん」
フィオリトゥーラは、渡された革袋に両手剣を納め始める。
「ヴァレル! いい加減にしろ。二人を案内するよ」
「ああ。悪かった。そうだな、案内してやらないとな」
「まったく……。邪魔するだけなら、わざわざ出て来なくてもいいものを」
呟きながらクローディアは、横目でフィオリトゥーラを見た。
すでに両手剣を背負ったその姿を確認すると、彼女は自分が最初にいた狭い路地に向かって歩きだす。
「案内する。ついて来て」
足早に路地へと入っていくクローディアに、フィオリトゥーラが続いた。
それを見ても動こうとしないヴァレルの脇を抜けて、ディルも二人のあとに続く。すると、ようやくヴァレルは歩きだし、その巨体は一番最後に路地へと入っていった。
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