第33話

「車って、色々走ってるのね。いっぱい走っててちょっと怖いわ」

「じゃあ、公園にいこうか」

みのりはレミを大きな公園に連れて行った。

そこは売店や大きな池とアヒルのボートなど、ちょっとしたデートコースだった。


「私、あれ食べてみたい」

レミがそう言ったのは、カップルたちが食べているクレープだった。

「レミは何が食べたい?」

「チョコレートはみのりに作ってもらえるからそれ以外がいいな」

「それじゃ、イチゴと生クリームなんかはどうだい?」

「それにするわ」


レミはクレープの作り方を不思議そうに眺めている。

「あっという間に丸くなるのね。魔法みたい」

そう言いながら生地が薄くもっちりと焼けていくのを楽しそうに見ていた。

みのりはクルミとキャラメルのクレープを頼んだ。

「一口ちょうだい」

レミが言う。

みのりはまだ囓っていないクレープをレミに渡す。

「美味しい。クルミってサクサクしてて香ばしいのね」

レミは上機嫌だ。

「イチゴは甘酸っぱいのね。赤い色が可愛いわ」

レミはほっぺに生クリームをつけたまま、イチゴのクレープを一生懸命食べている。


「次はあれにのってみたい」

やはりアヒルのボートに目をつけた。

みのりは少し恥ずかしかったが、レミの注文に従った。

アヒルのボートは思ったより安定していて、池からの風も気持ちよかった。

「みのり、人間界って楽しいのね」

「そう言ってもらえれば嬉しいね」

みのりはそう言いながらアヒルの足こぎボートをこいだ。


ボートから降りるとお昼になっていた。

みのりはお昼はどうしようかと悩んでいると、レミが言った。

「私、ラーメンってものが食べてみたいの。本で一度読んだわ」

みのりは、レミがどんな本を読んだのか疑問を持った。


が、評判の高い近くの通りのラーメン屋さんに並ぶことにした。

「お嬢ちゃん可愛いね」

しらないおじさんがレミに声をかける。

「ありがとう」

レミがお辞儀をするとみのりが割って入った。

「前、空いてますよ」

みのりはレミの可愛さに改めて危機感を覚えていた。


ラーメンは美味しかった。煮干し味のだし汁がレミの気に入ったらしい。

「もっとたべたいけどお腹がパンパン」

レミは名残惜しそうにお店を出た。

「みのり、人間界は美味しいものがいっぱいあるのね」

「ああ、そうだね」

みのりは満足げなレミをみて、頭を軽くなでた。


そこで、足下が輝いた。

魔方陣だ。

魔界に帰る時間だと言うことだ。

レミは残念そうに言った。

「もっと遊びたかったのに」

「また来ればいいよ」

レミとみのりは人間界から姿を消した。

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