第32話

翌朝、みのりはジーパンにTシャツ姿になると王宮に向かった。

王宮に着くと、そこにはいつもより抑えめの服装をしたレミといつも通りの魔王がいた。

「みのり、人間界に連れて行ってくれるんでしょ?」

レミは目を輝かせている。

みのりは頷いた。

「ああ、だけど人間界は危ないところでもあるから、僕の言うことはきちんと聞いてね」

レミは大きく頷いた。

「魔王様、レミ様をお連れしますが、よろしいでしょうか」

「レミが言うのだから仕方がない」

魔王は渋々と言った表情でみのりに言った。


魔王は宮殿の広間に移動すると、魔方陣を書いた。

魔方陣が青く光ると、魔王はみのりに言った。

「さあ、その魔方陣に入るが良い。人間界につくはずだ」

「わかりました」

みのりはレミの手を取ると魔方陣の中に入った。

すると、魔方陣はまばゆい光を放って、みのりたちの姿が消えた。

「無事かえってくるんだぞ」

魔王は心配そうに見送った。


みのりは、見慣れた工房の前にいた。

それはみのりの人間界のお店だった。

「みのりさん、どうしてたんですか!」

工房から一人の男性が飛び出してきた。

髪は刈り込んでおり、清潔感のある職人さんだった。


「川島さん、お店は大丈夫でしたか?」

「はい、なんとか。みのりさんが居なくなって半月、大変でしたよ」

川島はそう答えると、みのりの後ろで小さくなっている少女を見つけた。

「あれ、その子は?」


「レミさんという、親戚の子だ。東京を今日案内することになっている」

「そうなんですか? お店に戻ったんじゃないんですね」

「川島さん、私は諸事情でしばらくお店に出られなくなったんです。後のことは川島さんに任せても大丈夫ですか?」

「みのりさんがそう言うのなら、なにか深い事情があるんですね」

「川島さん初めまして、レミと申します」

レミはみのりと川島の会話が終わると、挨拶をした。

あまりの可愛さに川島は見惚れている。


「それじゃ、車に気をつけてレミさん」

「はい」

レミはそう答えるとみのりと手をつないで歩き始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る