第24話

一時間が経過した。

レミとサブリナは町の噂話に花を咲かせていた。

みのりはふたりのために紅茶を入れて、昨日作っておいたチョコレートをだした。

「はい、お嬢様方どうぞ」

レミは紅茶を受け取ると、優雅にその香りを楽しんだ。

「有り難う、みのり」

サブリナも紅茶を受け取ると、おっかなびっくり一口飲んだ。

「ありがとうございます、みのり先生」

「さあ、チョコレートを召し上がれ」

そういうと花柄のプレートに小さなチョコレートをのせて、二人の前に置いた。

「いただきます」

「いただきます、先生」

レミとサブリナの二人は目を合わせると微笑んで、それぞれチョコレートを口に含んだ。

「美味しい」

レミはうっとりした。

「美味しいです」

サブリナは目をつむって楽しんでいる。

みのりはその様子を満足げに見守っていた。

「さあ、そろそろ生チョコレートが固まったころだ」

みのりは壁に掛かった木の時計を見て、腰を上げた。

みのりは冷蔵庫から生チョコレートを取り出すと、注意深く切り分けた。

「これが生チョコレート。食べてごらん」

レミとサブリナはおそるおそる手を出した。

「とろける!」

「美味しい!」

レミとサブリナはほぼ同時に感嘆の声を上げた。

「みのりって天才ね」

レミはみのりの腕をとると、胸にぎゅっとだきしめた。

みのりはレミの胸の感触にドギマギしながら答えた。

「材料が良いからだよ。僕はまだ全然実力をだしてないよ」

レミは、ハッとした表情をした。

「それじゃあ、みのりに全力を出してもらいましょう」

みのりはそれを聞くと身構えた。

「全力?」

「来週、お父様とお母様の結婚記念日があるの。そこでみのりのチョコレートケーキを披露してもらうの。どう?自信ある?」

レミは悪戯っぽい目をして、ニヤリと笑った。

みのりはサブリナの方を見た。

サブリナは震えている。

「王様と王妃様の結婚式の記念ケーキですか?見習いの私も参加するのでしょうか?」

みのりは覚悟を決めるとレミに言った。

「わかった。記念のケーキを作ろう」

「そうこなくっちゃ」

レミは上機嫌で紅茶を飲み干した。

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