クロさんクロちゃん

 きつねこちゃんのようにミケちゃんの直接のお友だちではありませんが、やはり長年の外猫暮らしを卒業して、2018年の秋から完全室内飼いになった黒猫さんがいました。

 黒猫さんの飼い主になった人とやすらぎさん夫妻が、お友だちなのです。




 その黒猫さんは、長い間、公園暮らしでした。

 飼い主さんは、毎日、自転車を30分走らせて黒猫さんが住む公園まで、お世話に通っていました。


 でも、黒猫さんも高齢になり、このまま厳しい外猫の生活をさせておくことが不憫ふびんでならなくなりました。

 それで、飼い主さんは黒猫さんといっしょに暮らせるお部屋を探して、お引越しをしました。


 黒猫さんは外猫の時は「クロさん」でしたが、家猫になってからは「クロちゃん」になりました。


 ミケちゃんが仔猫の時、公園でいっしょだったのも黒猫さんでしたが、この「クロちゃん」は後ろ足の指先が白く、胸とお腹にも白い所がある黒白猫さんです。


 初めは、飼い主さんも不安でした。ずっと公園にいたクロちゃんが、室内での生活に慣れるまでに、どれだけ長い時間が掛かるか分からなかったからです。いたずらや粗相は、もちろん覚悟していました。


 でも、クロちゃんは飼い主さんが拍子抜けするくらい、すんなりと室内での生活に順応してしまったのです。


 きっと、クロちゃんも大好きな飼い主さんと、いっしょに居たかったからでしょう。

 外猫時代は、飼い主さんは自転車でやって来て、一通りのお世話が済んで遊んだ後は、また自転車に乗って行ってしまったのですから。

 それが、朝も昼も夜も、一日中、大好きな飼い主さんと、いつでもいっしょに居られるようになったのです。


 外猫暮らしの長かったクロちゃんも、ミケちゃんと同じく、押しも押されもせぬ完全室内飼いの幸せな猫になりました。

 


 そのクロちゃんは2021年2月17日2時25分、虹の橋へと旅立って行きました。

 とても穏やかなお顔だったそうです。

 病と闘いながら手厚い治療や介護を受け、最愛の飼い主さんに見守られての旅立ちでした。



 クロちゃん、また、会いましょうね。

 飼い主さんはクロちゃんが新しい毛皮に着替えて、生まれ変わってきてくれるのを首を長くして待っていますよ。




***




 やすらぎ治療室のある地区では、「やすらぎ猫の会」も含め、多くの地域猫活動登録団体があります。


 地域猫活動は、全国の自治体でも行われています。

 主な活動は、不妊手術、見守り、保護、譲渡じょうとなどです。


 地域猫活動においての譲渡とは、を見つけて、保護した猫をゆずり渡すことです。


 ミケちゃんは、保護したやすらぎさんが、そのまま飼い主になりました。


 譲渡においては、成猫は仔猫に比べて、里親さんが見つかりにくいといわれています。

 可愛い仔猫にはついつい目が行ってしまいますし、小さなうちから育ててみたいと思うものです。


 しかし、仔猫は思いの外、手が掛かります。活発に動き回り、いたずらもするし、事故もおきます。

 仔猫が怪我をしたり、体調の急変で動物病院に駆け込むこともあります。


 それに比べて、成猫は体質も性格も、持病があればそれもすでにわかっています。

 外猫育ちの成猫であっても、クロちゃんやミケちゃん、きつねこちゃんのように、完全室内飼いの猫になることもできるのです。


 もっとも、個体の性格性質によっては、ミケちゃんたちとは違って人慣れするまでに時間がかかる猫もいますが、決して慣れないわけではありません。


 もちろん、仔猫だって、小さい頃から育てて、大切な家族になっているおうちは数え切れないほど沢山あります。

 仔猫、成猫、どちらが良いということはありません。

 それぞれが猫と人の相性、出会いのご縁です。


 幸せな猫と人とのご縁が、もっともっと広がっていきますように!

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