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 治療室が開くのは、朝8時。

 だけど、ミケちゃんは夜明け前から治療室の近くで、やすらぎさんを待っていました。

 やすらぎさんも、そんなミケちゃんのことが気掛かりでおちおち寝てもいられず、早朝5時にマンションを出て治療室に向かうようになりました。


 野良猫の生活は気ままなように見えて、実はとても厳しいものです。雨風や寒さ暑さ、カラス、猫同士のいさかい、事故、虐待……。危険なことを数え上げたら切りがありません。

 ミケちゃんの無事な姿を見るまでは、やすらぎさんは心配でたまりませんでした。




 冬の朝。やすらぎさんが自転車でお店に向かう時間は、まだ真っ暗です。

 ふと高い塀の上を見て、やすらぎさんは驚いてしまいました。ミケちゃんが器用に3本足で塀の上をヒョイヒョイと歩いているのです。

 ミケちゃんは、やすらぎさんの自転車が来るのを待ちびて、少しでも遠くが見られるように高い塀に上っていたのでした。


 別の朝には、やすらぎさんを見つけて、遠くから走ってくるミケちゃんがいました。やすらぎさんの自転車と並走して、いっしょにお店に到着するミケちゃん。


 雨の日には、マンションの駐車場で雨宿りをしながら、やすらぎさんが来るのをひとりでじっと待っているミケちゃん。




 そんな可愛く健気けなげなミケちゃんの写真や動画をスマホで撮るようになったやすらぎさんは、2015年5月から日記がわりにと「ミケちゃん」のツイッター(@ojm52811)を始めました。


 毎朝ツイートされる写真と無邪気で前向きなミケちゃんのごあいさつは、1日の始まりにふさわしく、だんだんとフォロワーさんを増やしていきました。

 

 たまに、ミケちゃんが姿を見せない日があると、やすらぎさんだけでなくフォロワーさんたちも心配で、その日は気が気ではありません。

 一日、あるいは数日経ってミケちゃんが治療室にやって来ると、フォロワーさんたちも、やすらぎさんといっしょにホッと胸をなでおろすのでした。 


一頭の三毛猫が毎朝、猫好きな人たちの心を一つにつないでいきました。

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