第一章 夏の代行者護衛官 葉桜あやめ④




 大嫌いだよ、瑠璃。




 けして言えない言葉の死体だけが積み重なっていく。


『あのね、瑠璃が犠牲になる夏なんて大嫌い』


『この世界も嫌い。貴方と私が苦しくなるこの世界が嫌い』


『夏を好きなわけないじゃない』


『貴方が挿げ替えされるのが怖いからそう言っているだけよ』


『大人達に言わされているの』


『私から瑠璃を奪った季節を好きなわけないじゃない。大嫌いよ』


『貴方の前では好きな振りしてるだけ』


『みんなの前では好きな振りしてる』


『どうしてかわかる?』




『貴方を殺されたくないからっ!!』




『……良い子でいないと、貴方が失われてしまうの』


『夏のせいで瑠璃を殺されたくない』


『お姉ちゃん、貴方が死ぬの、見たくないよ』


『うちの家はあの日から滅茶苦茶だね。お父さん、すごく白髪が増えちゃった』


『お母さん、ため息ばかり。どうしたって瑠璃や家族が辛いのは変わらない』


『瑠璃、私が傍に居たせいで、貴方、他の人を見なくなってきてる』


『駄目だよ。私だって何時死ぬかわからないんだよ』


『貴方を守って死ぬ。いまの所その確率が高いの』


『私をそんなに慕わないで。死んだ時悲しくなるよ』


『それにね、お姉ちゃんは本当はひどい人間なんだよ』


『私は貴方が嫌いだけど大好きで、守りたいけど守れなくて』



 卑怯者にお似合いの運命を選んだつもりだった。



 ちゃんと幸せにならない未来を選んだつもりだった。

 瑠璃、私はちゃんとお揃いで不幸になろうとしたの。

 だって私達姉妹だもの。


 お姉ちゃん、それが良いことだと信じてた。

 

 なのに、どうして。




――どうして、愛を得ようとしているの?



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