直観で分かること。

エリー.ファー

直観で分かること。

 直観というのは、論理的に説明のできるひらめき、みたいなもののようで御座いますな。

 ううん、難しいではありませんか。えぇ。だってねぇ、直感だとか、直観だとか、直間だとか、直管だとか、色々あるわけでしょう。その中から正しい日本語と正しい意味を理解するなんてねぇ。

 まぁ、今回は直観だけでいいんだけどね。

 で、あたし色々考えてみたんですけど。

 土日に家で小説を書いてるやつなんて、根暗でしょ。

 で、大体、キモいでしょ。

 なんでそう言えるのか、まずはそこのところをねぇ説明していきますから。

 まずね、小説を書く人間というのはね、軒並み性格が悪いわけですよ。だってそうじゃない、文字を打ち込むことの何が楽しいんですか。人間と話した方が楽しいでしょうし、酒をあおって、煙草を吸って、女抱いてそっちの方が楽しいに決まってるでしょ。それなのに、日本語を打ち込んでだ、物語ができてだ、それの何が楽しいって言うんですかねぇ。こりゃあ、ひねくれてますよ。

 人間といるよりも、文字といる方が楽しいってんだから。

 つまりは、人間と一緒にいて楽しかった思い出が少ない。

 人間と一緒にいて楽しい思い出が少ないやつってのは、徐々に性格も歪みますよ、そりゃあ。

 ほら。論理的に言えたでしょう。

 小説を書くようなやつはみんな性格が歪んでる。

 しかも、変人。

 これも間違いない。

 まずね、小説家志望者とかいう、まともに小説も一切書かないし、行動もしないニートに何人と会ってきたんですがねえ。いやあ、社会不適合者が一発逆転で文化人を名乗りたがっているのは、心底面白いですね。肥大化した自意識を後生大事に抱えて何になるんですかね。

 小説も書かない。けれど、頭の中には素晴らしい小説のネタがあるんだ。今は浮かばないけど、いつか浮かぶんだ。小説のネタは浮かばないけど、社会に対して言いたいことがあるんだ。今の政治はおかしい。今の自分を取り巻く環境がおかしい。なんで、こんな人生になったんだ。この状況の責任の居所は自分かもしれないが、他の人にだってあるだろう。そういう強い思いを小説にできるだけの能力を持っているんだ。ほら、こういう有名な小説家の共通点が自分にもあるんだから、まだ大丈夫だ。ほら、こういうネタを思い浮かべていたらそのネタを誰かが使って滅茶苦茶本が売れた。やっぱり、自分の考え方は間違っていない、書いていないだけで、行動していないだけで、自分は正しい。

 でも。

 書かない。

 書いても、誰も読まない。

 正直ねぇ、書いている人間も、書いていない人間も大した差はないですよ。

 だってねぇ、読まれてないんだから。

 まぁ、小説を書いていない人よりも、小説を書いている人の方が上等だとは思いますよ。行動している分ね。でも、五十歩百歩でしょ。性格が歪んでいて根暗でしょ、何の差もありゃしませんよ。

 で、書き終わって読まれてなんなんですか。

 そのたくさん、読んでもらえた人、生き残ってるんですか。

 ねぇ、生き残ってるんですか、その人は。

 へへへ。

 あぁ、人によって目標設定が違うから、比較できないって。ここはそういう世界じゃないんだって。ものづくりは、小説を書くってことは神聖で偉大であり、長い歴史のあるもので、こんな偉い人もこんなことを言っていて、こんな偉い人もいっぱいいっぱい言ってくれてるから、自分たちは間違ってないんだあ、正しいんだあ、ですか。

 へぇ。

 そうなんですか。

 まともに社会に認めてもらえないくせに、言い訳の量は長編小説並みですね。

 よっ、未来の大小説家様っ、素晴らしいこと仰る。

 まだ、ですか。

 まだ、売れないんですか。

 そのっ、ふふっ。

 未来の大小説家様っ、てみんなの前で私もあなたのことを呼んであげたいから、さっさとのし上がっていただけませんかね。ほら、このままだと呼んであげた方が恥かいちゃうじゃないですか。

 自分で恥をかくのに飽きて、とうとう他人にまで恥を押し付けるのやめてもらえませんかね。へへっ。

 夢を追いかけてますって口に出すだけでも、迷惑ですよ。

 ははっ。


 そんなわけで、根暗ばっかりになった人間たちは一歩も外に出やしない。

 ウイルスに感染する人間も圧倒的に少なくなり、ウイルスっつうのはなんと地球から消え去っちまったんだからこれは嬉しいもんだ。

 死者も消え、ワクチンも世界中の人が打ち、これで安心万々歳笑顔満開花吹雪。

 だけども、生き残った奴らはどいつもこいつも辛気臭い。

 それに効くワクチンがない、対処療法がない、何にもない。

 じゃあ、どうする。

 いえいえ、これは不治の病で御座います。一度かかると死ぬまで蝕まれてしまうので御座います。

 ウイルスが消えた頃には、また別の問題が生まれだす。

 これもまた直観というもんでして。

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