第5話 空、それ以上でもそれ以下でもなく……

駅前に丸い形をした建物の軽食屋がある。


入口が開いてセーラー服を着てニーハイソックスを履いた女性が入ってくる。


右の太腿にライトセイバーを携帯してる。


彼女は映画から飛び出してきたような美形で店全体を眺めてから奥のカウンターに座る。


多分彼女はライトサイドの戦士なんだろう。


ライトサイドの女戦士はコーヒーを頼む。


店のマスターは彼女を見るなり「揉め事はご免だぞ、ミジュムウ」


「あたしからは仕掛けないわよ」


ミジュムウはコーヒーをすすりながら頬杖をつく。




中央通りの真っ直ぐな道。


毎日ここを通ったもんだよな。


修道院みたいな豪華な建物が連なる。


道の端から花が覗きサイケデリックに彩られる。


君は花のつぼみを手で摘まみ鼻の先に寄せる。


なんとも官能的な仕草である。


桜の花びらが風に舞う。


あの日、縁日の帰りにここで花火を見た。


僕らは永遠に続くと思っていた道を歩いてる。





空が欠け始めて隙間から目が覗く。


欠けた空から光の筋が放たれる。


「覗いてんじゃねえ」


ミジュムウは太腿からライトセイバーを抜き出し、光の筋に向かう。


「まあそう熱くなりなさんな」


黒いシルクハットの男はミジュムウのライトセーバーを手で受ける。


ミジュムウがいくら力を入れてもライトセイバーはブロックされる。


「化け物め!」


ミジュムウは諦めてライトセイバーを収める。


全身黒づくめの悪の化身である。


(話し合う余地はないのかい、お嬢さん)


シルクハットの男は左手を上げ指先から光線を発射。


そのまま全身が空の隙間に向かって上がって行く。


「逃したか!」


空の隙間はパズルがはまるように元通りになる。


隣リに青い学生服を着た金髪の青年が現れる。


「マスタービーダ、また逃しました」


「ミジュムウ、まだ始まったばかりだ」


マスタービーダはライトセイバーを天に掲げ雲に向かって閃光を放つ。




HEAD OVER HEELS


空を仰いでもまた巻き戻し


手繰り寄せても


また手を離れる


一筋の閃光の如く


2021(R3)3/17(水)
























  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る