第二話 怨讐憑依
俺はこの世界にゴーストとして転生した。
そう思っていたんだが、気づいたらウィル・オー・ウィスプになっていた。
何を言ってるのかわからないと思うが、俺も何をされたのかわからない。
ステータスはほぼ全ての項目が変化していたが、先ほど見た〈怨讐憑依〉というスキルだけはそのまま残っていた。
おそらく、手がかりはこれだと思う。
そう思った俺は、このスキルの詳細が表示されるように、意識を集中した。
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【スキル】
怨讐憑依:自分の命を奪った相手へ憑依し、その精神を乗っ取ることができる。その際、所持していたスキルや魔法は憑依先に引き継がれ、ステータスは加算される。パッシブスキル。
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ああ、なるほどね。完全に理解した。
つまり、ゴーストだった俺はウィル・オー・ウィスプに殺されて、その結果、そのウィル・オー・ウィスプに憑依したってことだな。
……ってか、ゴースト倒した記憶あるわ。
あの特徴的な岩の前でぼーっとしてるゴーストがいたから、「当たるかな?」と思って〈鬼火〉撃ったんだわ。愉快犯ってやつだな。なんてことしやがるんだ。
……え? ってことは……
今、すごいことに気がついたぞ。
殺されても相手に憑依できるということは、実質、俺は不死身なのではないか。
しかも、スキルの説明によれば、憑依すればするほど、能力が加算されて強くなれるみたいだ。
……これは完全にチートだな。
この能力を活かせば、この世界で最強の存在になるのも夢ではないだろう。たぶん。
難点は、殺されないといけないってことだ。
正直、好き好んでホイホイ殺されたくはないなあ。さっきもめっちゃ痛かったし。
死なないで済むならそれに越したことない。
ステータス画面(仮称)で調べたところ、ゲームみたいに普通に敵を倒してレベルアップしていくこともできるようだ。
ウィル・オー・ウィスプは自我が低い魔物みたいで、大して記憶を遡ることはできなかったけど、ゴーストぐらいの魔物ならカモらしい。〈鬼火〉一発で昇天だ。さっきの俺みたいにな!
……ただ、この辺りにはウィル・オー・ウィスプより強そうな魔物もいるみたいなので、注意が必要だ。そいつらが近くに来たときは、隠れてやり過ごすのが最善らしい。このウィル・オー・ウィスプは、そうやって生き残ってきた。
それにしても、ここはいったいどこなんだろう。
ウィル・オー・ウィスプの記憶には、この紫色の空と、荒れた地面にゴツゴツした岩とか、似たような景色しか映っていない。
地縛霊みたいなものなのだろうか……?
あまり遠くに行った経験はないようだ。
きっと、これまで大して思考する能力もなかったんだろうな。
あの塀っぽいものの向こうとか、建物っぽいものの中とか、気になるじゃん。
よし、行ってみよう!
*
転生したらリーパーだった。
……はい。
そうです。死にました。
順を追って説明しよう。
さっきの場所から百メートルぐらい離れた建物の壁に、出入り口っぽい隙間があったわけさ。
と言っても、いきなり飛び込んだりなんかしてないよ。
こう見えても前世では慎重派で通ってたからね。
どうしたかと言うと、ちらっと中を覗いてみたんだよね。
そしたら、バッサリと斬られました。
いやー。
俺は慎重に行ってたつもりなんだけどね。
こうしてリーパーになったからわかるんだけど、格好の獲物だったんだよね。
知らなかったんだけど、ウィル・オー・ウィスプって、自ら発光してるんだね!
そんなんがふらふら寄ってきたら、そらバッサリ行くわな。
「何、オマエ、死にたいの?」って、そういう心境だったよ。今やリーパーの俺としては。
幸い、一瞬だったので、あまり痛くはなかった。
リーパーさん、良い仕事してる。今や俺だけど。
――さて、気を取り直して。
ステータス確認、行ってみよう。
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【ステータス】
種族:リーパー
名前:なし
Lv:7
HP:87/111
MP:69/74
スキル:怨讐憑依、鬼火、
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ウィル・オー・ウィスプと比べると、最大HPが約五倍に跳ね上がった。
順調にステータスが伸びてるよ。
……殺されてるだけだけどな!
エンカウントした敵に漏れなく負け続けた結果だけどな!
――とにかく、ウィル・オー・ウィスプの〈鬼火〉に加えて、〈
当面は、この調子でステータスとスキルを伸ばしていけばいいだろう。
よし、どんどん行こうか。
まあ、無駄に死ぬ気はないけど。
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