聖女の存在意義

 更新が大分遅れて申し訳ないです。本当は最後まで書ききってから更新したかったのですが、これ以上間を空けると拙いので…。

 ※既に更新しているエピソードを少し修正しました。

 今回は今日明日で2話更新です。ここは明日の更新後に削除します。

 ――――― 



 意識が現実に引き戻される。

 白から黒に変わり、徐々に視界が夜のやや薄暗い色合いに落ち着いて行く。

 一気に現実空間へ戻されたことでやや酔っているような少しふらつくような感覚に見舞われたが、まだ樹に手を突いた状態であるから耐えられない程ではない。


 ふらつく感じを振り払うように深く深呼吸をする。そしても負う一度目の前の樹を見上げた。


 この樹に触れて色々と理解出来た。当時の状況、聖女の考えや思い。この世界での聖女の立ち位置など、色々だ。

 もっとも、この樹の元となった聖女以外の情報は知ったところで俺にはあまり意味はないのだが、今後の事を考えると無視も出来ない。


 聖女は基本的にこの世界に1人だけしか存在できない。それは世界を改変できうる大きな力を持つ存在をいくつも同時に存在させてしまうと、それだけで世界が歪むからだ。


 そんな危ない存在がなぜ存在しているのか。

 それは世界のバランスが崩れた時に、そのほころびを正すために聖女のような力を持つ存在がバランサーとして発生するようだ。当然、良く聖女と共に存在する勇者も同様の存在だ。しかし、聖女とは違い必ずしも発生する訳ではないようだ。

 現に今この世界には勇者は存在していない。


 理由は何なのか。それは俺にはよくわからないが、おそらく勇者という立場からして魔王とか明らかに対となる存在が発生すると同時に勇者も発生するのだろう。


 とまあ、要するにこの世界の勇者とか聖女っていうファンタジーでよくある存在は偶然発生するような存在ではないらしい。魔王も同様だ。


 このことについて死ぬ前の聖女が知っていたかどうかは、聖女の記憶を見てもわからなかった。


 まあ、何が言いたいかって言うと、この世界のシステムっぽいところがあるとはいえ、それを管理しているのは神様みたいなんだよな。

 だからさ。ワンチャン俺をこの世界に飛ばした女神、聖女を新しく誕生させるのが面倒だからって俺を転生させた説、ないか?

 神からすれば一瞬かもしれないが、新しく聖女を誕生させて、それなりの年齢になるまで人間からすればそこそこ時間が掛かる。その部分を端折るために俺を聖女の肢体の中に突っ込んだとかね。まさかね。はは……


 今思えば、と言うにはまだ記憶に新しいが俺はあのガチャの結果を確認していないし、あの女神は俺にあの結果を見せようとしていなかった。

 カプセルごと掠め取っていったからな。

 それにカプセルを開けるところまでは見たが中からチケットらしきものを取り出したところも見ていないな。


 ……まさかとは思うが、最初から聖女に転生したいと思うような奴を選んだうえで、この状況を受け入れられる人間を選んでいたってことは無いか?


 確かに神っぽい見た目ではあったが、胡散臭かったからな。性格悪そうだったし、俺が選択するものすべて織り込み済みだった可能性すらありそうだ。

 となるとガチャ自体は転生する者を選別する物……いや、ただ反応を見て楽しむだけの物かもしれない。さすがに疑り過ぎか?


 あの女神に関しては今更だから考えるだけ無駄か。本題の方をどうするか考えよう。


 で、聖女本人のあれこれなんだが……


「あの……大丈夫、ですか? 突然動きを止めて、何かありましたか?」


 こいつなんだよなぁ。問題なの。

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