領主はすでに死んでいた

 

 ん? 聖女を殺したのが領主親子なのはわかったが、聖女の権力って領主一族よりも下なのか? よくある物語だと聖女って結構上位の地位だったりするんだが。物語によっては王族並みだったりな。逆に低いのはそう見ないな。完全に奴隷扱いの物語もあるが、あれは特殊例だろうしなぁ。


「聖女って領主一族よりも地位が低いのか?」

「聖女様単体で見れば低くはないです。でも、上という訳でもないですね。同程度だと思います。ただ、教会の存続に領主が口を出せる立場にありますので、それを加味してしまいますと……」

「あー、そういう事ね」


 ああ、教会の地位が低いのか。まあ、元居た所でも教会とかの宗教関係の存在って煙たがれ足りしていたからな。祈ったところで何かある訳でもないし。この世界ではわからんけど。

 聖女が存在しているから何かしらの意味はあるとは思うんだが。まあ権力持っている奴ってそういうのを毛嫌いしそうだからな。その結果が教会の地位が低いってことなのかもしれんな。


 それで、そこに所属している聖女はその影響で領主よりも下として見られると。実際に教会へ手を出されると受け身に回るしか出来ないだろうからな。教会を見捨てれば殺されてはいなかっただろうが、この聖女がすぐに損切りで切るような性格ではなかったから殺されてしまったのだろうし。


「つーことは俺も領主に何かされる可能性があるのか? いや、聖女としてではなく見世物扱いされる可能性が高そうだが」

「え? あれ、言って……なかった……ですね」

「うん?」


 青年?が何やら言い淀んだ後、少し申し訳なさそうな表情をこちらに向けた。

 なんだ? 言ってなかった、ってことは何か重要な事……にしてはそんな感じでもないな。


「すいません。言い忘れていましたけど、この町を治めていた領主様とその子息様は既に亡くなっているんです」

「は?」


 え? どういうことだ? もう死んでいる? 世紀末覇者にでも殺され……いやまあ、そんな訳ないだろうけど、もしかして、聖女を殺したことでこの町の住民にでも殺されたのか? ないとは言わないが、そんなことをしたら逆にそいつらが不穏分子として国から殺されかねないと思うんだが。


「どういうことだ? まさかこの町の住民が……」

「え? あ、いえいえ! そういうことは無いですよ! ここの方たちは手を出していませんよ!?」

「あ、そうなのか。もう死んでるってことは、てっきりそうなのかと」


 普通、自分たちと懇意にしていた人が理不尽な理由で殺されたら、過激な行動に出る奴もいると思ったんだが、意外とこの町の住民は冷静、というか理性的なのかもしれない。


「さすがにここに住んでいる人たちはそんなことはしません。……と言いたいところなのですけど、そんなことを考える前に領主様たちは亡くなってしまったので」

「ん? どういうことだ」


 そんなことを考える前にってことは、聖女を殺してから割とすぐに死んだってことじゃないか? もしかして領主一族よりも地位の高い人物がたまたまこの町に居て、聖女を殺したことがバレた領主がそいつに殺されたってことなのか? それもなかなかにおかしな話だが。


「領主よりも地位の高い、王族とかがちょうどこの町に居たのか?」

「いえ、そうではないです。それにここは国の中でも僻地に当たる場所なので、そう言った方たちは滅多に来ませんよ。まあ、領主様が聖女様を殺してしまったことに関しては王宮へ報告が云っているでしょうから、近い内に王宮から調査員が来るかもしれませんけれど」

「じゃあ、誰が殺したんだ? もしかして話すことが出来ないとかか?」

「うーん。そうですね。別に話すのは問題ないです。いえ、あまり話すことではないですけれど、聖女様に関係する貴方には話した方が良いと思うので」


 え? 聖女が関係するのか? 領主を殺したの、もしかして聖女だったりするのだろうか。いや、処刑させたとも言っていたからそれは無いはずなんだが。しかし、この体の元の持ち主である聖女に関係するという事は、聞いておいた方が良い気がする。


「なら話してくれ」

「はい。ああでも、説明するならここよりもあそこの方が良いかもしれません」


 そう言ってしょ……青年は俺を別の場所に行くよう促してきた。


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