少ね・・・青年?の後悔
「どう言うことだ?」
正直なところ聞かない方が良いかもしれないとは思っている。
何かこの少年……じゃなかった青年?にとっては嫌な記憶だろうからな。だが、俺がこちらで生きていくには必要な情報だし、今後気を付けなければならない情報かもしれない。
「助けたかった。でも僕にはその力はなかったんです。目の前で殺されてしまったというのに、助けようとすることも出来なかったんです」
あ、これ権力者系か。しかも聖女と言われている存在を公開処刑とは、どれだけの権力者だったんだ? 少なくとも聖女が逆らえないくらい上なんだろうか。まさか王族とかその辺の面倒な存在じゃあないよな?
「周りもそうだったんだろう? お前ひとりが背負うことじゃないと思うが」
「ですが、僕は聖女様の世話係だったんです。だから僕の立場を守るよりも聖女様を第一に守らなければならなかったのに」
うわぁ、泣き出したんだけど。まあ、これを見るに相当後悔していたんだな。客観的に見ればどうにもできないことでも、当事者だからこそたらればって色々と考えてしまうことも理解は出来る。
ただなぁ、考えたところで結果は変わらないし、聖女が生き返る……、まあ、元の聖女が生き返る訳じゃない。どこかで踏ん切りを付けなければいけないんだよな。
「正直、俺はその場に居なかった、と言うかそもそも存在していなかったから正確にはわからないけど、誰にも止めることは出来なかったんだ。お前がくよくよ悩んだり後悔したりしたところで元の聖女は生き返らないし、無かったことにはならない」
「でも」
「俺は元の聖女がどういう奴だったのかは知らないけど、俺と似たような性格だったのなら、今のお前を見たら殴っているはずだ。自分のことで他の奴が悲しむのは嫌だからな」
「……そうですね。うん。聖女様なら、そうするかも……」
俺が殴る、と言うと昔の事でも思い出したのか、少しだけ青年?の表情が緩んだ。よしこの方向の話ならいいんだな。
「そもそも、お前が助けようとしても制止したんじゃないか? 俺ならそうするし」
「はい。僕が逃げるように説得しようとしたら殴って止められました」
「お、おぅマジか。殴って止めたのかよ」
いや、冗談半分で言ってみただけなんだが。まさかマジでやっているとは。というか、かなり手が出るのが早いな聖女。さすがに俺はそこまではしないぞ、たぶん。
「そこでちゃんと止めることが出来たら」
「でも、そうしたら別のやつに被害が出たんじゃないか? 聖女が素直に出て行くってことは人質なり取られていた可能性もあるし」
「そうですね。この教会を取り壊すとかなんとか、そんなことを言っていましたからそう言うことなんでしょう」
うーん下劣な手だ。しかし、そこまでして聖女を殺したかった奴は何者だ? 少なくともこの周辺にいる奴よりは権力があるようだが、やはり国の王子とかか?
「そこまで言える相手って誰だ? 少なくとも聖女が逆らえないってことはかなり権力を持っているみたいだが」
「領主の息子です。地位や権力なら聖女様の方が上なのですけど、色々手を考えて逃げられないようにしていたようです。協会取り壊しの話もその一環でしょうから」
うえぇ、領主の屑息子かよ。面倒な相手だ。しかも教会の取り壊しが出来るってことは親の方も確実に同類だろう。領主の許可が無ければ街の施設とか建てられないとかは良くあるし、その逆もおそらく同じだろう。嘘の可能性もあるけど、聖女が従ったってことは嘘ではなさそうだからな。
「領主関係かぁ。面倒だな」
「領主一族は色々と後ろ暗い噂が絶えない人たちでしたから」
今後、俺が領主たち関わる可能性があるなら、凄く面倒な相手になりそうだ。最悪、捕まったら見世物になるなんてことも在りそうだしな。いや、それは他の奴らでもありそうだけど。
出来れば関わりたくないんだが。どうなる事やら。
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