合法ショタは存在した
少年?
いや待て、あいつ足早い! ちょっと出だしが遅れただけで10メートルくらい先に行っているんだが!?
ただ、まあ、身長差の問題か、一気に距離を離されるということは無いみたいだけど。だが、このままだと追いつかないどころか見失いそうだ。
何か手はないだろうか? しかし、まだこの世界に来たばかりの俺にそう簡単に作戦は思いつくはずもない。
「止まれ!」
苦し紛れに声を上げてみる。さすがにこれで止まるとは思えないが、しないよりはマシか?
「ひゃい!」
止まらないだろう、そう思っていたら前を走っている少年?がいきなり背筋をきっちり伸ばした状態で止まった。まさかこんなことで止まるとは。
しかしなんだ? 条件反射的な止まり方だったが、どう言うことだよ。
「少年? ちょっとこっちに来てくれないだろうか?」
マジでこの体走り辛い。何がとは言わないけど、体がブレるし、着ているのがドレスのせいか体を動かすたびにどこかが引っかかっている様な感じがする。
「うぇええぇ」
うわっ、すごい情けない声を出して少年?がこっちに来た。嫌なのに従うんだな、と思うがこれももしかしてさっきと同じ条件反射的なやつか?
「いや、すまない少年。……少年で良いんだよな?」
「うぇ、え? 僕のことを忘れて? いえ、それより声は何処から…」
ああ、なるほど。この少年はこの聖女とそれなりに付き合いと言うか関係があったのか。だから聖女と同じ声で指示すると逆らえない、と言うか反射的に従うと?
「あぁ、ここからだ」
そう言って俺は頭を少年?に見えるように掲げた。
「ひょわっ!?」
いきなり頭そのものが目の前に来た所為か少年?は垂直に飛び跳ねた。いや、驚いて上に飛ぶ奴なんて初めて見たんだが。
と言うかこの少年?ホラー耐性低すぎないか? さっきの行動からしてこの墓地を管理しているみたいだが大丈夫なのだろうか心配になるな。
「大丈夫か?」
「ええぇ? 聖女様の声で僕を心配してるぅ!?」
少年?にここまで言われる生前の聖女のことが気になる。だが、先に今後の相談をしてしまいたい。さすがに墓地で寝泊まりはしたくないし。
「すまない。聞きたいことがあるんだが」
「ごめんなさい!ごめんなさい! 何でもしますから許してくださいぃ!!」
む? 何でもとな? だったら何も言わずに泊めろ、と言いたいところだが、話を聞いてみない限り何とも言えないよな。
「だったら少し話を聞いてくれ」
「はいぃっ! 聞きます! だから叱らないでください!」
この少年?聖女に調教でもされていたのかと疑うくらいの反応何だが。本当にどう言う関係だったんだ?
「済まんが、君の知っている聖女さまと俺は多分別人だ。だからもう少し緊張を解いてくれ。でないと話がスムーズに進められない」
「え? それはどう言うことですか」
「俺も良くはわからない。だが気付いたらこの体になっていた」
少年?はよくわからないって表情をしている。出来れば俺もそっち側でそう言った表情をしたいところだが、残念ながら俺は当事者である以上そうは言っていられない。
「えっと、憑依とかそう言った感じでしょうか? それなら祓えばどうにかなりますけれど」
「あーどう何だこれは? 多分憑依ではないと思うが、祓うってそれやられたら俺死ぬんじゃないか?」
アンデットにお祓いとか確実に召されるやつだろう。さすがにこんな早くに死にたくはない。
「憑依じゃないとなると、まさかデュラハン!?」
「あー、たぶんそれだろうな。首から上もあるし」
「ええ? いえ、デュラハンならお祓いも効きませんね。残念です」
っておい。この少年?俺のこと殺しに来ていないか!? 残念じゃねぇよ! ってそこじゃない。
「デュラハンってお祓い効かないのか?」
「はい。一応分類では妖精の類ですので」
「おおぅ。マジか」
アンデットではないと言うことは討伐されない? いや、見た目的にまずいからやっぱり討伐対象か?
「ですがデュラハンは死を予言する者と言われていますので、やっぱりここで倒した方が良いのかも?」
「おい、待て。今普通に俺を殺す発言がなかったか?」
「え? いいいえ、そそんなことは」
「本当か?」
そう言って俺は少年の頬を軽くひねる。さすがにその発言は見逃さねぇよ?
「ごめんなさい嘘です! 言いました! 助けて!」
……何だろうか、この気持ちは。少しだけショタコンの気持ちがわかったような、そうではないような。いや、絶対に違うな。どちらかと言えばSの気持ちか? そもそも俺はショタコンではないし。違うはずだよな?
「まあ、いい」
「ほっ」
あからさまに安心した様子の少年?を見る。……うむ。
……こういう動作を可愛いと思ってしまうのはなんでだ? 転生する前はこんなことがあってもこうは思わなかったはずだ。
……と言うことは、もしかしてこの聖女の感性に浸食されているのか? …いや、逆か? そもそも俺が後からこの体に入っただけだしな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます