第25話 勧誘
「えっ!? 結局作るの?」
「うん、これから作るよ。入ってくれたらどのシーンだって見放題にしてあげるよ?」
「入るかどうかはともかくとして、どんな人材が集まってるの?」
「映画作りに関する全てだよ。監督、脚本家、演出家、役者、小道具、大道具、衣装、スタイリストに至るまで。あ、それと今後はスタントの担当も要るかな」
「なるほどねぇ...結構本格的なんだ ...すると私は入るとすれば脚本家ってこと?」
「もちろん。あ、でも希望があるなら聞くよ? 役者がやりたいとかさ」
「いや、役者は勘弁」
「ビーチェ可愛いのに」
「いや、そういう問題じゃないから」
「じゃあ脚本家で」
「その前に聞かせてよ。私の書いた作品どうだった?」
「ダントツだった。他とは比べようもないくらい」
「ホントに!? 嬉しいなぁ~♪」
「私の時もそうだったけど、現代日本で通用する感覚ってのは、こっちの世界じゃ類を見ないから、一番になって当然なんだよ。最初はね」
「最初は?」
「うん、どの世界でもそうだけど、後から追い付いて来る人達のスピードって半端ないから、油断してるとすぐ足元掬われるよ?」
「そうなの?」
「現に、私の書いた小説の売り上げを越える作品ドンドン出てるし」
「そうなんだね...」
「だから今の内に才能が伸びそうな人を積極的にスカウトしようと思ってる。ビーチェもその一人」
「それは素直に嬉しいかな」
「それとね、これはまだオフレコなんだけど、三作目は私の原作じゃない中から選ぼうと思ってる」
「えっ? それってまさか...」
「そう、今の所ビーチェが最有力」
「マジか...」
「だから入ってよ? そうしてくれたら何かと都合が良いし、私で良かったらアドバイスとかもするよ?」
「...分かった。入ることにする。あ、でも家の許可が下りてからね?」
「公爵家だもんね。そりゃ当然か。分かった、待ってるね」
「まぁ、間違いなく許可は下りると思うけどね」
「そうなの?」
「そりゃそうよ。あなたの家と懇意になりたいってみんな思ってるんだから」
「そうなんだ。じゃあ取り敢えず仮契約結んでおかない? これ契約書。良かったらサインして?」
「...これ、プロダクション名が空白になってるけど?」
「あ~...実はまだ名前決めてないんだよね~ 色々あって迷っててさ~」
「そうなのね。はい、サインしたわよ?」
「ん、ありがと」
「...ちょっと、なにペンを握ってんのよ?」
「ん? プロダクション名を書こうと思って」
「いやさっきまだ決めてないって...」
「今決めた。プロダクション名『ベアトリーチェ』と」
「ちょっと待てぃ!」
「何か問題でも?」
「なんで私の名前なのよ! あんたの名前にするのが筋ってもんでしょうがぁ!」
「え~...だって恥ずいじゃん...」
「ふっざけんなっ! 私だって恥ずいわぁ!」
「じゃあ、プロダクション『ビーチェ』で」
「だからそこは『リーナ』か『カチューシャ』でしょうがぁ!」
「分かった分かった、じゃあ『ビーチェリーナ』で」
「なんで私が前なのよ! 『リーナビーチェ』が筋でしょうがぁ!」
「じゃあそれで。サラサラっと」
「あ、しまった! やられた!」
「ちなみにこれで仮契約書から正式契約書になったから」
「はっ!? どういう意味よ! ?」
「だからプロダクション名が入ってなかったから仮で、入れたから正式」
「は、謀ったなぁ!」
「毎度あり~♪」
どうやら私はこれから書こうとしていた小説の世界に転生したようだ 真理亜 @maria-mina
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