第22話 ヒロイン談義

「仮にも王太子の乳兄弟だっていうのに、その娘の実家がそんなんでいいのかしらね...」


 王子様も気になるんじゃない?


「いいんじゃない? そもそもあの娘自体の評判も最悪みたいだしね」


「そうなの?」


「えぇ、お茶会に呼ばれる度に、自分は王太子の乳兄弟だってことを吹聴して回ってるみたいよ? それのどこが偉いのか、私にはトンと理解不能だけどね。最近じゃウザがられてホサれてるって聞いたわ」 


「そりゃ誰だって呼びたくなくなるわね。ホサれて当然だわ。それにしても全然変わってないのね。少しは反省したかと思ったけど」


「人間、そんなすぐには変わらないってことじゃない?」


「いや、あれからもう3年以上経ってるし」


「じゃあ変わる気が無いってことでしょ。それにしてもなんであの娘がヒロインなのよ?」


「いや、ピンク髪だし」


「根拠それだけ?」


「ヒロインと言えばピンク髪でしょ?」


 ここだけは譲れん!


「いや、訳分かんない」


 まぁ、私の中だけの話なんで、分からなくて当然だわな。


「学園に入学したら分かるかもよ? 間違いなく王太子に纏わり付くだろうし」


「あ~ それありそうだね。それまでに実家が潰れてなければね」


「他人事みたいに言ってるけど、あなたにも間違いなく絡んでくるんじゃない?」


「勘弁してよ~...痛いヒロインなんてゴメンだよ~」


 痛いって...まぁ、確かに思い込み激しい所ありそうね。


「ま、せいぜい頑張って」


「なによ~ あなただって他人事みたいじゃないの? 痛いヒロインちゃんを追い払ったのはあなたなんだから、恨んでるんじゃない? 復讐されちゃうかもよ?」


 コイツ、面白がってやがんな!? でも大丈夫なんだな、これが。そんなことには絶対ならない。なぜなら、


「あ、私、多分入学しないと思う」


「えぇっ!? なんでよ!?」


「だって仕事忙しいし」


「そりゃ分かるけど、貴族としてそれはどうなの? 許されるもんなの?」


「分かんないけど、ごちゃごちゃ言ってきたら学園に芸能コース作るから」


「あ~ 前世であったね~ 堀○とか明大○野とか」


「そうそう、幽霊部員ならぬ幽霊学生みたいな」


「でもそんな簡単にコースなんて作れるもんなの?」


「フフフン♪ 我が公爵家の財力を舐めたらアカンよ♪ なんなら学園ごと買い占めたっていいんやで~♪」


「怖いよ~! それが出来ちゃうのを知ってるだけに~!」


「アハハ、まぁ、そこまでやるつもりはないけどね~」


 そこでふとビーチェは時計に目をやって、


「うぉっ! ヤバい、もうこんな時間! 私、帰るね! また会おう!」


「うん、色々とありがとうね」


「こちらこそ!」


 何か忘れてると思ったのは、ビーチェが帰った後だった。


「あ、ビーチェの書いた作品を評価するの忘れてた」


 ま、今度会った時でいいか。

 

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