第21話 ゲームの内容

「んんん? ちょっと待ってちょっと待って! 私が悪役令嬢ってのは分かる。悪役顔だし。公爵令嬢だし。でもあなたがヒロインってことは、公爵令嬢同士でバトルするってことなの?」


「うん、そういうゲーム」


「私、前世で乙女ゲームってやったことないんだけど、普通ヒロインって平民だったり、貴族でも爵位の低い男爵令嬢だったりするもんなんじゃないの?」


「そういうパターンはもうやり尽くしたってことじゃないかな。知らんけど」


 まぁ確かに。出尽くした感はあるか。


「まぁいいわ...それでどういうゲーム内容なの?」


「あ~...それがねぇ...分かんないんだわ」


「はっ!? なんでよ!?」


 また椅子から落ちそうになったよ...


「だってやる前に死んじゃったから」

 

「はぁ~ !? キャラの名前は全部覚えてるのに!?」


 意味分からん!


「それは事前情報で見たから覚えてるだけ。発売を楽しみにしてたんだけどね」


「あぁなるほど...そういう意味ね...なんかゴメン...」


「いやいや、期待持たせた私も悪いね」


「ストーリーの概略とかは発表されてなかったの?」


「あったよ。新感覚の乙女ゲーム、高位貴族同士が繰り広げる華やかな宮廷絵巻をお楽しみに。だったかな?」

 

「概略でもなんでもねぇ! ただのキャッチコピーじゃん! 他にないの!?」


「テヘペロ♪」


「テヘペロじゃね~よ!」


 公爵令嬢同士の会話じゃないね...


「まぁでもゲームの舞台は学園に入学してからだから。それまでは何も起きないと思うよ?」


「だといいけど...」


「ん? なんかあった?」


「シリウス王太子がね、私との婚約をまだ諦めてないって言いにきたのよ」


「あぁ、だからか」


「えっ? なに!?」


「いえね、ほら、私って一応婚約者候補じゃん? だから定期的にお茶会とかやるんだけど、シリウス様が良くあなたのことを話題にしてたから。それはもう楽しそうにね」


「勘弁してよ...私は仕事に生きるって決めたんだから。王妃なんてなる気更々ないわ。あなた、さっさと婚約しちゃいなさいよ」


「私だって王妃なんか堅苦しくてイヤよ」


「好きじゃないの?」


「シリウス様のこと? いや別に。鑑賞用としてならいいけど、旦那にする気はないわ。なんか夫婦生活ってのを想像出来ないのよね。現実味が無いっていうか」


「鑑賞用って...」


 熱帯魚かなんかかよ...


「あれ? でもあなたがヒロインならゲームの強制力かなんかで、結局は婚約するハメになるんじゃないの?」


「それな...考えたくないけど、そうなるんだろうねぇ...はぁ~ 今から憂鬱だわぁ...」


「そんなにイヤならヒロイン譲っちゃえば?」


「誰によ?」


「ピンク髪のヒロイン」


「あぁ、あなたに一服盛ろうとした例の男爵令嬢ね」


「そう、確か名前はレイラ・フォーレットだったかな?」


「あの娘はダメよ」


「どうして?」


「あの娘っていうより、フォーレット男爵家がね」


「なにやらかした?」


「色々と黒い噂が絶えないのよ。禁制品の密輸とかね」


 私は絶句した。

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