第20話 会談 その2

「私の前世は至って平凡なOLだったわ。ブラック企業でもなかったし。ただのゲームオタクだった。特に乙女ゲームにハマってて、良く徹夜していたわ。死因は良く覚えてないけど、最後の記憶は徹夜明けでフラフラしながら駅に向かっていたところまで。階段から落ちたのか、駅のホームから落ちたのかハッキリしない。まぁ今となってはどうでもいいけどね。前世の記憶を思い出したのは、実は極最近なの。あなたの映画を観ている最中に思い出したのよ。そこからは映画どころじゃなかったわね」


 そこでいったん言葉を切ったベアトリーチェ様は、お茶を一口飲んだ。


「そこからはもう、あなたのことが知りたい、会って話をしてみたいってそればかり思ってたわ。だけど中々勇気が出なくて...あなたが私と同じ転生者だってことはまず間違いないと思ってたけど、もし違ってたらと思うと怖くて...おかしなヤツだと思われるのがイヤで、あんなまどろっこしい真似をしたって訳」


「なるほど...良く分かったわ。もっと早く言ってくれたらとは思ったけど、あなたの中でそんなに葛藤があったなら無理もないわね。改めて、これからよろしくね、ベアトリーチェ様」 


「ビーチェよ」


「えっ? 今なんて?」


「ビーチェって呼んで。ベアトリーチェ様じゃ長過ぎるし他人行儀でイヤよ」


「分かった、ビーチェ。私のことは好きに呼んで?」


「親しい人はなんて呼んでるの?」


「家族はリーナって呼んでる。たまにカチューシャとも呼ばれる」


「リーナにする。カチューシャだとロシア民謡が頭の中に流れてきそうだから」


「あはは、確かに」


 雪に覆われた大地を進軍するイメージね。


「それでね、これからが本題なんだけど...」


 ビーチェが改まった口調でそう言った。一体なんだろう?


「リーナ、あなたがさっき言ってた、思い出せない11番目の小説のプロットの話ね。思い出せなくて当然なのよ。だってこの世界はそもそも違うんだから」


「えっ? どういうこと?」


「この世界は私がプレイしていた乙女ゲームの世界なのよ」

 

「えぇぇぇっ~!」


 私はビックリして椅子から転げ落ちるところだった。


「それって間違いないの?」


「間違いないわ。国の名前も王子の名前も、ヒロインの名前も悪役令嬢の名前も、攻略対象者達の名前も全て同じだもの」

 

「そうなんだ...ちなみにヒロインは誰?」


「僭越ながらこの私よ」


「悪役令嬢は?」


 途轍もなくイヤな予感がする...


「リーナ、あなたよ」


 やっぱりかぁ~!

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