第19話 会談 その1

 ベアトリーチェ様との会談はすぐに実現した。


 家格が同じ公爵家ということもあり、呼び出すのは失礼にあたると判断した私は、ベアトリーチェ様のお屋敷を訪ねるつもりでいた。そう打診したところ、なんとベアトリーチェ様の方から我が家を訪れたいとの申し出があった。


 二つ返事で承諾した私は、今こうして中庭にあるガゼボで、ベアトリーチェ様の到着を待っている。聞かれたくない話をする予定なので、この場所を選んだのだ。


 やがてベアトリーチェ様が到着した。


「お初にお目に掛かります。フォーサイス家が長女、ベアトリーチェ・フォーサイスと申します。以後お見知りおきを」


 淑女の見本のような見事なカーテシーを披露したベアトリーチェ様は、ハッキリ言って物凄い美少女だった。艶やかな金髪に吸い込まれそうな碧い瞳、白い肌は雪のようで、全体的に儚げな印象を受ける。私と違ってヒロイン枠なのは間違いないと思った。


「ご丁寧なご挨拶痛み入ります。エカテリーナ・スミルノフです。本日はようこそおいで下さいました」


 まずは席に着いて貰って、私手ずからお茶を入れる。これからする話は使用人にすら聞かれる訳にはいかないので、人払いをしてあるからだ。まずはお茶を一口飲んでから徐に切り出す。


「単刀直入に伺うわ。あなたも私と同じ転生者ってことで間違いないわよね?」


「えぇ、その通りよ。あなたなら分かってくれると思ってたわ」


「そりゃ分かるわよ。あなたの書いた小説の中に乙女ゲームなんて単語を見付けたらね」


「良かったわ。パソコンもタブレットもない状況で、一生懸命手書きした甲斐があったというものよ」


「えぇ、確かに苦労するわよね。私もそうよ。ペンだこは出来るわ、腱鞘炎になるわで大変だったもの」


 異世界あるあるに二人して苦笑した。


「さて、どっちから話す?」


「そりゃあ、あなたの話が先よ。なんたって今をときめく巨匠監督なんだから」


「巨匠って大袈裟よ。まだたった1作なんだから。でもいいわ。私から話すわね」


 そして私は前世のこと、転生してからのことを包み隠さず全て話した。長い話になったが、ベアトリーチェは途中で口を挟むことなく聞いてくれた。


 話終えた後、喉がカラカラになった私は、すっかり冷めてしまったお茶を飲み干した。


「なるほど...なんて言ったらいいのか...」


「無理して感想を言おうとしなくていいわよ。自分でも前世の私はダメ人間だったなぁって思ってるから」


 私は自嘲気味に笑った。


「さぁ、次はあなたの番よ」

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