第17話 初日

 映画の一般公開は1ヶ月後に決まった。


 それまでにとにかく宣伝することに奔走する。プレミア試写会に来てくれたマスコミ関係者には、自社の新聞や雑誌で大々的に宣伝してもらう。官公庁や役所などの公共施設、街頭や商店街の至るところにポスターを貼りまくった。


 学園や病院、騎士団の宿舎に至るまで、およそ人が集まりそうな場所にとにかく貼りまくった。終いには王宮にまで及んだ。


 宣伝の甲斐あって前売り券は全て完売。初日に来てくれたお客様のために、出演者のサイン入りポスターやパンフレット、Tシャツなどの記念グッズも準備した。


 いよいよ明日、公開を迎える。その日は映画館のこけら落としでもある。プレミア試写会の時とは違う緊張感に包まれる。舞台挨拶は一度経験しているので、それほど緊張していない。それよりも本当にお客様が来てくれるのか? 来て頂いたお客様に楽しんで貰えるだろうか? それが心配になって来た。


 私は深夜、眠れなくて誰も居ない映画館に足を運んでいた。プレミア試写会の前の晩だってこんなことはなかった。やはりプレッシャーを感じているのだろう。何かしていないと不安になって、グッズ売り場や飲食コーナーに不備がないかを確認していた。


 ちなみに、映画館と言えば定番のポップコーンは残念ながら無い。爆裂種のトウモロコシがこの世界に存在しないからだ。その代わりにホットドッグやフライドポテトなど、咀嚼音のしない食べ物を用意している。


「眠れないのかい?」


「お父様!? こんな時間にどうしたんです!?」


「それは僕のセリフじゃないかな?」


「あはは、そうですね...」


「大丈夫、自信持って。やるだけのことは全てやって来たんだろう?」


「えぇ、そのつもりです」


「だったら後やることは、明日の舞台挨拶で居眠りしないよう、しっかり休むことだと思わないかい?」


「そうですね...分かりました。ありがとうございます」


 少し気分が楽になった。私はやっと眠りに着いた。



◇◇◇



 初日を迎えた。朝の9時から上映を開始する。その後、最後の上映時間である21時まで計5回上映する。舞台挨拶は朝、昼、夜の計3回。長丁場である。気合いを入れ直す。


 ありがたいことに、1階席も2階席も満員札止め。貴賓席も全て埋まっている。シリウス王太子などまた観に来てくれた。リピーターが増えるのは嬉しい限りだ。


 いよいよ初めての上映が始まった。


 そして...映画が終了した瞬間、割れんばかりの大喝采を浴びた。


 私は再び大号泣してしまった。


 良かった...本当に良かった...


 

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