第13話 新世界

 写真の次は動画だろうと思ってしまうのは、私が前世の記憶持ちだからだろうか。


 何せTVをつければいつでも動画が流れてくるし、YouTuberみたいに動画配信で一財産築く人も居るような時代を生きて来たのだ。動画を見ない日は無いと言っても過言ではない。


 だがこの世界で動画を再現するのは難しい。何せスマホにしてもデジカメにしても動画を記録する仕組みが分からない。分からないものはイメージしようが無いので、半ば諦めていた。


 そんな時、ふと前世の記憶が蘇った。大きなリールに巻き付いたフィルムが、カラカラと音を立てて回る場面だ。旧き良き時代の映画はこんな風だった。


 それを思い出した時、ダメ元でイメージしてみた。


 あっけなく出来た。


 早速撮影してみた。そこで映写機が無いのに気付いた。せっかく撮影したのに見れない。さすがに映写機は無理だろうと思ったが、これもダメ元でイメージしてみた。


 すんなり出来た。


 スクリーンは無いので白い壁をスクリーンに見立てて投影してみた。一昔前の無声映画のようだが、白黒ではなくちゃんとカラーで映っていた。ちなみに写真も最初からカラーだった。


 後はこれに音を付けるだけだが、この世界には音を記録する魔道具は無い。そもそもそういった発想が無い。さすがにこれは手詰まりかと思った。ただここまでやって来たのに諦めきれない気持ちも強かった。悶々としながら過ごしていたある日、一つの新聞記事が目に止まった。


 王都に新しいオペラハウスが完成したこと。そこには最新式の音響設備が調っているという記事だった。音に絡んだ事柄だったので気になった私は、父親に頼んで見学させて貰うことにした。


 そこで見たのは前世でお馴染みのステレオスピーカーだった。しかもサラウンドシステムだという。ここまで進んでいるのに、なぜ音を録音するという方向に進まないのか逆に不思議だった。


 刺激を受けたのが良かったのか、その後イメージしてみたら録音機もあっさり出来た。


 

◇◇◇



 そこから約半年掛けて、パイロットフィルムを完成させた私は、父親に見せに行った。その頃にはスクリーンもちゃんとしたものを作っておいた。スピーカーはオペラハウスから借りて来た。


 スクリーンに流れる映像と音声を目にした父親は「新世界だ!」と叫んだ。そろそろ私に対する賛美の語彙も尽きてきたような気がする。


 それはともかく、私は父親にあるお願い事をした。


 自分の書いた作品を映画化したいと。

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