第12話 次の発明

 しかし発明王って...


 どこのエジソンだよ? まぁ、やってることはあんま変わんないけどさ。ちなみにこの世界、一度でも発現した魔法は事細かに解析され、魔法のレシピのようなものに纏められる。


 そのレシピを使えば、適性の合う者なら誰でも模倣出来る。つまり最初に発現させた者に特許としての権利が与えられる。早い者勝ちという訳だ。しかも一度取得した特許の権利は、発現した者が死ぬか他者に委譲するまで継続する。


 要するに一つでも大ヒットするようなレシピを生み出せれば、それだけで一生遊んで暮らすことも可能になるという訳だ。アメリカンドリームならぬマジックドリームだわな。


 私は既に三つも大ヒットレシピを生み出したので、一生どころか孫子の代まで遊んで暮らせるかも知れない。最も私は三つとも権利を父親に委譲しているので、私個人の収入にはならない。我が公爵家の収入ということになる。


 父親曰く「そろそろ王家の財産を超える」ところまで来ているらしい。その内に「この国から独立しよう」とか言い出すかも知れない。それはそれで有りかも。だがそうなると私は王女様になるのか。それはなんか面倒だな。窮屈そうで嫌だな。


 まぁ、有り得るかどうか分からないことを考えてもしょうがない。今は自分のイメージを形に出来ることが楽しくて仕方ない。次は何を作ろうかな...



◇◇◇



「う~ん...まだピントが合わないな...」


 今、私が試行錯誤しているのはカメラだ。この世界、前述したように魔法によって文字をスキャンし、紙に印刷する技術は確立されている。紙も安価な藁半紙が普及している。私がベストセラー作家になれた所以でもある。もちろん私の才能だってあった訳だが。そこは譲れない。


 だがカメラはまだない。何故か? ここまで魔法技術が進歩しているのに何故、画像を取り込んで印刷しようという発想に至らなかったのか?


 それはズバリ、紙に問題があったからだ。パピルスや羊皮紙と違い、藁半紙は確かに大した発明だと思う。お陰で本が身近な存在になったのは確かだろう。だがそこまでだ。画像を印刷するには無理がある。ましてやカラー印刷など夢の又夢だろう。


 だから私はまず、印画紙を開発した。これは前世の知識を生かして簡単に作ることが出来た。問題はカメラの方だ。文字をスキャンして取り込む場合、かなり近付けて取り込むので、近くの物は上手くいくのだが、ちょっと離れると途端にボヤける。


「レンズの問題かな? カメラのレンズみたいにピントを合わせる絞りを付けてみて...」


 なんとか形になった。


 今回、私がやったことは、既存の道具を改造して使い勝手を良くしただけなので、魔法の発現というより魔道具の開発というのが正しいかも知れない。新たに発現させたのは印画紙くらいだし。


 しかもこの魔道具、ネガが要らない。一度取り込んだ情報を記憶出来るのだ。もちろん記憶容量は無限大ではない。ちゃんと制限はあるが、メモリーカード内蔵型なのに写真は印刷出来ないという、何ともちぐはぐな代物だった訳だ。


 ともあれ、早速父親に見せに行った。手始めに父親の写真を撮って見せた所「創造神だ!」と騒ぎ出した。


 うん、確かにこれはバカ売れするだろう。だけどついに父親の中で私は唯一神になっちゃったよ...

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