第8話 婚約者候補
園遊会の次の日、王宮から知らせが届いた。
「私が婚約者候補ですか...」
「そのようだね。いつの間にシリウス殿下とお近づきになったんだい?」
「まぁ、色々ありまして...」
あのガゼボでの一件なのは間違いない。まさか名前を覚えられているとは思わなかったが。
「それでどうする?」
「断ることは出来ないのですよね...」
相手は王太子だ。断るなんて無理だろう。
「いや、普通に断れるけど?」
断れたらどんなに楽か...なぬ!?
「こ、断っていいんですか!?」
「うん、リーナが嫌だって言うなら全力で断るよ?」
「ではお願いします」
「分かった」
「...でも意外でした...てっきり断れないものだとばかり...」
「そりゃあウチは公爵家だからね。王家に対しても強く言える立場だから」
「それはそうでしょうけど...」
「それにね、ウチはこれ以上王家との繋がりを強くする必要がないんだよ。リーナのお陰で十分潤ってるからね。寧ろ王家にリーナを渡したくない」
「そ、そうなんですか!?」
「そうだよ。本の印税だけでも凄い稼ぎなのに、その上『イアン材』は更なる稼ぎを見込めるんだから。もう既に沢山のオファーが来てるんだよ? 特許収入だけでも凄い金額になりそうだ。本当にこれも私が管理していいのかい?」
「えぇ、寧ろお願いします。私には難し過ぎるし面倒なんで嫌です」
「ハハハッ、全く君は。我が娘ながらなんて欲が無いんだろうね」
「そんな面倒なことに時間を取られるくらいなら、好きなことにをしていたいって思ってるだけですよ?」
「うん、君のスタンスはそのままでいいよ。その結果として我が公爵家が潤うんだから何も言うことは無い」
「ありがとうございます」
「お礼を言うのは寧ろ僕の方なんだけどね。これからも自由な発想で公爵家を支えて貰いたい。そしてゆくゆくは僕の後を継いで女公爵になって貰いたいな」
「わ、私がですか!?」
「当然そうなるでしょ? ウチの大事な一人娘なんだから。王家に渡したくない理由の一つでもあるよ。リーナをお嫁に出しちゃったら、ウチは後継ぎが居なくなるからね。養子を取るしかなくなる訳だけど、ヘタな所から養子を貰ってそいつが能無しだったりしたら目も当てられないから。リーナには無難な男を選んで婿入りさせるつもり」
「無難ですか...」
「そう無難。野心も無く才覚も無い、ただ後継ぎを残すためだけの、権利も権力も与えられない存在」
「それはまたなんとも...」
「貴族の結婚なんてそんなもんだよ。なあに、それで不満を持つようなら役割を果たした後に放り出せばいいだけだから」
種馬かよ...なんていうか、貴族の闇の部分を垣間見たような...
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