第2話 ストーリーは...
隣でメイドが何かごちゃごちゃ言ってるが、私はそれどころじゃなかった。
「うるさいっ! 少し黙れ!」
メイドを一喝して黙らせた後、私は現状を把握しようと必死になった。まさか自分が散々書いて来た異世界転生物の当事者になるなんて誰が想像つくよ?
うん? 待てよ? こういう転生物のテンプレと言えば、ハマっていた乙女ゲームや小説の世界に転生するというのが定番のはず。じゃあ私は? 乙女ゲームにハマっておらず、小説はハマるより今は書く方が専門で...
ん? まさか...もしかしたら今連載中の10本の内、どれか1つの世界に転生したとか?
このメイドはさっき私をエカテリーナと呼んだ。ということは私の名前はエカテリーナだ。
...誰だそれ?
自慢じゃないが私は登場人物の名前を考えるのが苦手だ。他の人はどうやってるか知らないが、私は名前を考えるのに時間を使うくらいなら、ストーリーを充実させる時間に充てたいと思ってる。
だから正直、名前はテキトーだ。例えば男キャラなら「レオナルド」「レイナルド」「レオポルド」なんて三段活用を利用したこともあったくらいだ。読者に指摘されて何回手直ししたことか。本当に感謝してます。
おっと話逸れた。という訳で、連載中の10本にエカテリーナなんて名前のキャラは居なかったはずだ。崩し辛いし。せいぜいエカチェリーナくらいしか発展形が無い。
そうするとこの世界は、私が創造した世界じゃなく全くの別世界ってことだろうか?
んんん? 待てよ待てよ待てよ? 確か11本目を書こうとした時、たまには少し凝った名前にしようとか思わなかったか? それでふと頭に浮かんだ名前を使おうと思って確かそれが...
「エカテリーナじゃん!」
これは厄介なことになった...私は頭を抱えた。連載中の10本ならストーリーを事細かに思い出せる。だが11本目はまだプロットの段階。これから肉付けして行くところだった。つまり...
私はこの世界に関して何も分からない。
転生した影響かプロットについても記憶が曖昧だ。辛うじて覚えていたのはエカテリーナという名前だけ。
私は改めて姿見に写っている美少女を見詰める。真っ赤な髪につり目気味の真っ青な瞳。確かに美少女ではあるのだが、気の強そうな印象を受ける。これはヒロインというより...
「どう見ても悪役令嬢じゃないの...」
どうやら私はこれから自分が書こうと思っていた小説の世界に、それもよりによって悪役令嬢に転生してしまったようだ...
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