第21話 誤算
アイシャとトリシャの二人が王都に旅立った日の深夜、領主邸の離れに暗躍する影があった。
トリスタンとランドルフの命を受けた庭師である。アミとユミの口を塞ぐのが目的だ。密偵の任に就くぐらいなので暗殺はお手の物である。だが今回はただ殺すだけではなく、ベルナンドとジルベルトの二人に罪を擦り付ける必要がある。
そのため、アミとユミには、予めベルナンドとジルベルトの私物を拝借するように命じておいた。今、懐に入れてあるこの私物を、アミとユミの殺害現場に残しておけば任務完了である。
女二人の寝首を掻くなど造作もないこと。男は成功を確信してそっと離れに忍び込む。寝室に音もなく侵入し、ナイフを構えベッドで寝ている彼女達を一撃で仕留め...居ない!? ベッドはもぬけの殻だった。
「はい、お疲れさん」
「グォッ!」
いつの間に忍び寄っていたのか、背後からベルナンドの一撃を食らった男はもんどり打って倒れた。
「本当に来たね」
すかさずジルベルトが男を縄でグルグル巻きにする。
「さて、本館に戻るか。ハンスさんがお待ちかねだ」
「ハンスさんのごうも...尋問にどこまで耐えられるか見物だね」
二人は怪しい笑みを浮かべた、男は真っ青になった。
◇◇◇
本館に連れて来られた男に家令のハンスが対峙していた。
「誰に雇われた! 吐け!」
だが男は口を割ろうとしない。
「仕方ない、これを使うか」
そう言って取り出したのは、注射器だった。何やら怪し気な液体が入っている。
「これがなんだか分かるか? チオペンタールと言ってな。自白剤とも言われている」
男の顔色が目に見えて変わった。
「喋るなら今の内だ。廃人になりたくないだろう?」
それでも男は口を閉ざしたままだ。
「残念だ」
ハンスは男の腕に針をあて、ゆっくりと注入して...
「ま、待て! 待ってくれ! 喋る! 喋るから止めてくれ~!」
「もう遅い!」
無情にも液体は注入された。
「ぎやぁぁぁっ!...あ?」
「なんてな。これはただのビタミン剤だ。さぁ、洗いざらい話して貰おうか」
男はもう抵抗する気力もないようだ。
◇◇◇
「良し。言質は取れたな」
男はすっかり白状した。
「このことを急いでお嬢様方にお知らせしなくては」
「「 僕達が行きます! 」」
ベルナンドとジルベルトが志願した。アイシャとトリシャは馬車に乗って行ったので、今から馬を飛ばせば追い付けるだろう。
「良かろう。気を付けてな」
「「 はい! 」」
二人は王子達との因縁にケリをつけるべく馬を走らせるのだった。
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