第20話 王子達の焦り
トリスタンとランドルフは窮地に立たされていた。
公爵家の夜会で令嬢達に囲まれ、パートナー云々の話が出たことで、王子達もようやくパートナー選びに本腰を入れたのだと周囲に認識されてしまったのだ。
そのため、夜会の後からひっきりなしに令嬢達から釣書が届くようになった。その話は彼らの父親、つまり国王の耳にも入り、やっとその気になったのかと喜んだ国王からも、早く相手を決めるようにとのお達しが来てしまった。
このままでは、なし崩し的に婚約者を決めるハメになるだろう。そうなれば今までの苦労が水の泡だ。もう形振り構っていられなかった。トリスタンは覚悟を決めた。
「ランドルフ、アイシャとトリシャの二人を王宮に呼び出せ。命令だと言えば断れんだろう。いいか? くれぐれもあの二人だけだ。婚約者の同伴は固く禁ずると伝えろ」
「兄上、どうなさるおつもりで?」
「二人を呼び出したら離宮に軟禁する。決して外には出さん」
「そ、それは...」
さすがにランドルフも引いている。
「本当はこんな手を使いたくなかったんだがな...いつまで経っても靡かないアイツらが悪い。閉じ込めて無理矢理にでも既成事実を作ってしまえば後はこっちのもんだ。お前も今の内に覚悟を決めておけ」
「わ、分かりました!『毒を食らわば皿まで』ですね!」
ランドルフがしたり顔でそう言った。
「ん...その表現が適切かどうかはさておき、そういう心づもりで居ろということだな。それとキスリングの領地に潜ませている密偵に連絡を取れ」
「内容は?」
「例のキャバクラ嬢を始末しろと。そしてその罪をアイシャとトリシャの婚約者に擦り付けるように工作しろと」
「よ、よろしいのですか!?」
「あぁ、もう必要ない。どうせいつかは始末するつもりだったしな。愛憎の縺れで殺してしまったということにしよう。そうすればアイツらも未練がなくなるだろうさ」
「な、なるほど! さすがです、兄上!」
「邪魔者どもを纏めて一掃してやる」
そう言ってトリスタンは暗く嗤った。
◇◇◇
「王宮からの呼び出しですって?」
トリシャからの知らせにアイシャは顔を歪めた。
「えぇ、それも私とお姉様だけということを念押しされていますわ」
「なんかキナ臭いわね...」
「無視しますか?」
「命令とあらば従うしかないでしょう。けど、まずは早馬でお父様に知らせておきましょう」
「分かりましたわ」
それからベルナンドとジルベルトに向き直って、
「ベルにジル、なんかイヤな予感がするのよ。アミとユミの警護を厳重にしておいて。何かあったらすぐに知らせること。いいわね?」
「「 わ、分かりました! 」」
「お姉様、王宮へは馬に乗って行きます?」
アイシャはちょっと考えてから、
「いえ、馬車でのんびり向かいましょう」
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