第19話 公爵邸での夜会

 夜会は盛況だった。


 公爵家の催す夜会だけあって、高位貴族は軒並み参加しているようだ。そこにトリスタンとランドルフ、二人の王子が現れると、場がいっそう華やかになった。


「これはこれは王子様方、お越し頂きありがとうございます」


「公爵、盛況で何よりだ」


 挨拶が終わった途端、あっという間に二人の王子は独身でパートナーの居ない貴族令嬢達に囲まれてしまう。令嬢達からすれば、まだパートナーの居ない王子達はこの上ない相手である。獲物を狙う肉食獣のようにギラギラした目で熱く見詰める。


 そんな令嬢達を華麗にかわしながら王子達はお目当てを探す。居た! アイシャはジルベルトと、トリシャはベルナンドと仲良さ気に寄り添っている。

 

 王子達は令嬢達を振り切って彼女達の元に向かう。


「やあ、アイシャ、トリシャ、今宵も美しいね」


「ご機嫌よう、王子様方。ありがとうございます」


「今夜は私達のパートナーのお披露目でもありますのよ? 領地ではお披露目済みですが、王都では初めてですの」


 そう言ってジルベルトとベルナンドの二人を紹介する。二人は緊張でコチコチに固まっている。


「ほう、そうかそうか。仲良さそうで何よりだな」


「えぇ、ラブラブですもの♪」


「はい、とっても幸せですわ♪」


 彼女達は過剰とも取れるスキンシップで、ほとんど抱き付くような形に寄り添っている。それを見た王子達は射殺さんばかりの視線をジルベルトとベルナンドに向けた。


「「 ヽ(ヽ゚ロ゚)ヒイィィィ! 」」


 思わず情けない声が漏れてしまった二人だった。そんな二人を擁護するべくトリシャが仕掛ける。


「王子達方はパートナーの方いらっしゃいませんの?」


「トリシャ、こんな素敵な王子様方にパートナーがいらっしゃらない訳ないでしょう? 失礼なことを言ってはいけないわ」


「まぁ、私としたことが、大変申し訳ございません。こんなに素敵なんですもの、いらっしゃって当然ですわよね。もしかしたらあの方々の中にいらっしゃるのかしら? さぁどうぞ、私達に構わずどうぞパートナーの方とお過ごし下さいませ」


 そう言って貴族令嬢達が屯している方に目を向ける


「えぇ、邪魔してはいけませんわ。私達は失礼しますわね」


「お、おい! ちょっと待て!」


 待たない! アイシャとトリシャはわざと貴族令嬢達が屯している方向へと足を向けた。それを追った王子達は再び貴族令嬢達に囲まれる。先程から聞き耳を立ててパートナー云々の話を聞いていた令嬢達は、先程より更に積極的なアプローチを仕掛けて来た。


 邪険にする訳にもいかず適当に相手をしている間に、彼女達はさっさと帰ってしまった。


「く、くそっ! やられた!」


 王子達の悔し気な声が空しく響いたのだった。




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