第12話 暗躍する影
アイシャとトリシャは翌日、領地に戻って来た。
二人は早速、経過報告をするためにベルナンドとジルベルトの二人を呼び出した。もちろん、前日に買った勝負服を着て。
「それでね、お父様の方からあなた達の実家の方に直接連絡を...って二人ともちゃんと聞いてる?」
やたらと布の少ない服を着た彼女達の格好を直視出来ず、二人は目が泳いでいた。
「は、はい、すいません...」
「とにかくこれで正式に婚約は成立するから、二人ともよろしくね」
「て、でも、あ、あくまで期間限定なんですよね?」
「誰がそんなこと言った?」
「だ、だって、あのしつこい王子様方が諦めるまでだと...」
「あぁ、それね。方針を変更することにしたわ」
「へ、変更と言いますと?」
「あなた達と本気で結婚するつもりよ。だ、だからほら、そ、そのためには、き、き、既成事実だって、じ、じ、辞さないつ、つ、つもりよ!」
「そ、そ、そうよ。ど、ど、ドンとこ、こ、来いよ!」
自分で言ってて途中から噛み噛みになるアイシャとトリシャだが、それも無理はない。なにせ二人とも生粋の生娘なのだから。今まで男に言い寄られることはあっても、言い寄ったことはない。
要するに男に対する経験値が少ないのだ。今も体をクネクネさせて彼らを誘惑しているつもりだろうが、端から見るとただの不思議な踊りにしか見えない。
だが、ベルナンドとジルベルトの二人もまた同様に女に対する経験値が足りない。要するにどっちもどっち。ある意味お似合いの二人なのだ。
「「 か、考えさせて下さい~! 」」
ベルナンドとジルベルトの二人は逃げ出した。アイシャとトリシャの二人は取り残されて呆然としている。
この二組、まだまだ前途は多難のようだ。
◇◇◇
一方その頃、トリスタンは王宮の執務室で焦燥感に駆られていた。このまま外堀が埋められてしまえば、手が出せなくなる。早く手を打たねばと思うが、今の所打てる手は枕絵本を送ることくらいしかない。
それも効果の程は期待出来るのかも不明で、たとえ効果があったとしても、芽が出るまでは時間が掛かるだろう。王都とキスリング家の領地とで距離が離れているのも痛い。そうそう頻繁に行き来できる距離ではない。直接自分の目で確認出来ないのが辛い。
その枕絵本が肝心の二人の手に渡っていないことなど知る由もない訳だが。
「兄上!」
そんな時、ランドルフが飛び込んで来た。
「どうした!?」
「喜んで下さい! ハニートラップ要員が見付かりました!」
「本当か!?」
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