第2話 二人目

 会場中が静まり返っている。特に断罪を仕掛けるはずだったセシル陣営は、手酷いしっぺ返しを食らって皆顔面蒼白になっている。


 そんな中、意を決したのか、騎士団長の子息である伯爵子息が前に出た。これを勇気と呼ぶのか無謀と呼ぶのか、言わずもがな後者であろう。


 列席している騎士団長は、そんな息子を早くも鬼のような顔で睨み付けていた。そのことに伯爵子息は気付いていない。


「リアナ嬢、あなたはアニエスを階段から突き落として怪我を負わせたな? 怪我で済んだから良かったもののヘタすれば死んでいたかも知れない。この責任をどう取られるおつもりか?」


「勝手に罪の意識を植え付けようとしないで下さる? 全く身に覚えがありませんわ。証拠と証人を出して下さいまし」


「証拠は...無い。証人はアニエスだ。あなたが突き飛ばしたのを見たと言ってる。それで十分だ」


「はぁ...あなた、先程のやり取りをご覧になっていたのではなかったの?」


 リアナは段々面倒臭くなってきた。


「見ていたとも。だが俺にはアニエスの言葉が全てなんだ」


「というと?」


「アニエスがウソを吐くはずが無いからだ!」


 そう言い切った伯爵子息は、自分に酔ったかのようなドヤ顔を浮かべていた。


「はぁ...分かりましたわ。お帰りはあちらです」


 リアナは深い深いため息を吐いた後、ドアの方を指差した。


「き、貴様! 騎士を愚弄する気か!」


「お黙りなさい! 何が騎士ですか! 人の言い分も聞かず一方的に片方の言い分のみを盲信する、そんな愚かな人間に騎士が務まって堪るもんですか! 騎士を愚弄しているのはあなたですよ!」


「貴様~!」


「騎士団長! 剣の柄に手を掛けました! 謀反の疑いありです! 取り押さえなさい!」


「はっ!」


「ぐえっ!」


 騎士団長は息子を組伏せた。


「愚息が大変なことを...謝って済むことではありませんが、こやつの処分をお任せ頂けますか? 厳罰に処しますので...」


「お任せしましたわ」


「ありがとうございます。大変申し訳ありませんでした...」


 騎士団長と伯爵子息が退場した。


「え~と、まだ続けます?」


 リアナは疲れてきた。


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