第58話 【閑話】悪魔使いレオネア
僕は久しぶりに興奮しちゃったよ。
だって空が飛べるんだよ?
箱舟
これが今、僕の最高のお気に入りだよ!
◇◆◇◆
僕は、この世界では、ちょっと特殊な存在なんだ。
人間の父親と、魔族の母親から生まれたハーフだからね。
魔族はこの大陸には存在しない。
ベッケン通商連合国で、商人をしていた僕のパパが、サンクト聖教国の港から交易船でアケボノ国へと向かう途中に、嵐に遭遇して流れ着いた場所で、ママと出会ったんだって。
ママはヴァンパイアだったそうだけど、パパに本気で惚れちゃったみたいで、パパの精力を吸い尽くす事無く、僕が生まれるまでの間を一緒に暮らして、僕を託して姿を消しちゃったそうだ。
その時にパパとママが約束をしたらしい。
僕に魔族の血が流れている事を、決して他言しないと。
僕自身それを知ったのは、9歳の時だった。
偶然だったんだけど、Sランク冒険者のメーガンにパパと一緒に乗ってた交易船で出会った時だった。
「あら? あなた…… 魔族の血が流れてるのね」
いきなり告げられた。
メーガンは天使と契約した
僕もびっくりしてパパに確認したよ。
その時になって、やっと教えてくれた。
ママの国からパパが戻って来る時は、ママが箒で空を飛んで送ってくれたんだって。
だから僕は空を飛ぶことに凄く憧れがあったんだよ。
ちょっと話がそれちゃったね。
僕は、冒険者になる事を決めたのは、勿論あの時出会ったメーガンに憧れたからだ。
僕が13歳の時に、父が病で倒れ帰らぬ人となり、迷わず冒険者への道を歩んだ。
僕は【召喚】のスキルを授かった物の、呼べるのが何故か悪魔ばかりで、しかも実体では無く幻影で現れ、能力だけを無慈悲に使い、去っていく為に、みんな怖がって仲間なんかできなかった。
因みに、身体的な特徴なんかは魔族っぽい所は無いよ?
八重歯が人よりちょっと尖ってるくらいかな……
髪が紫なのと目が赤いのは、エルフなんかだと普通にそんな人もいるしね。
それでも、ソロ冒険者としては着実に実績を残して行ったので、16歳の頃にはAランク冒険者となった。
Aランクと言えども、ソロ活動ではダンジョンの攻略なんかは出来ないから、もっぱら護衛任務や時々起こるスタンピードの討伐などが主な稼ぎ口だったんだ。
そんな僕が、Sランクへと昇り詰めるきっかけになったのは、二度目となるメーガンとの出会いだった。
通商連合国と帝国の間にある火山から、エンシェントドラゴンである老火竜が現れ、連合国側の商都に向けて飛んでくると言う事態が起こったんだ。
エンシェントドラゴンの討伐ランクはSS。
過去を遡っても100年に一度程度の災厄クラスだそうだ。
レイドパーティの要請がギルドからあり、僕も参加した。
その時のメーガンは僕と同じ歳の若い少年剣士を連れていた。
メーガンは自身がSランクに上り詰めてから、既に280年の時をそれぞれの時代の英雄たちと交流を持ちながら過ごしている。
その武器や技術を次代に受け継ぐ旅を続けているんだって。
メーガンの連れて来ていた男の子は、ジュウベエと名乗るアケボノ国出身の冒険者で、刃のない刀を使う子だった。
「高ランクの魔物を相手にするなら、刃をどんなに研ぎ澄ましても脂が付けば切れ味は落ちるし、欠けでもしたらそれこそ困るだろ?」と、納得が行く様な行かない様な、微妙な理論を熱く語っていたが、メーガンが若い頃パーティを組んでいた【勇者】が使っていたと言う『絶壊刀』という、拵えは刀なんだけど、アダマンタインとヒヒイロカネで作られた六角棒が刃の部分にある不思議な武器を受け継いだそうだ。
この刀は魔導具になっていて、その柄の部分に魔法陣が刻んであり、そこに魔力を流せば風の刃が現れる。
魔力の込め方で、その刃渡りは10m以上にもなり殆どの魔物は一撃で倒せると豪語していた。
実際その威力を目の当たりにした僕は、びっくりしたが、それでも魔力の消費の関係で一時間も続けて使う事は無理だと言ってたけど、相手が一体であれば、ほぼ最強と言っても良いんじゃないかな?
実際は魔力を込めなくても、絶体折れない、曲がらない六角棒としても十分な攻撃力を発揮できるみたいだしね。
話は戻るけど、その老火竜の圧倒的なブレスにレイドパーティは一瞬で半壊した。
残った冒険者達も戦意を喪失した状態で、商都は絶対絶命の危機だった。
メーガンの能力は攻防一体のビットウイングと言う能力だけど、守れる範囲も狭くて、単体に対しての攻撃は決め手に欠けてた。
ジュウベエも距離を詰める事が出来ずに、攻撃できない。
僕はメーガンに声を掛けた。
「メーガン。僕が老火竜の攻撃を喰らいつくすから、その間に倒せる?」
すると、メーガンに声を掛けたのに、ジュウベエがしゃしゃり出て来て、「俺に10秒攻撃の時間をくれれば倒してやる」とか言って来た。
「じゃぁ、頼むよ。僕は精々30秒くらいしか持たないからね」
そして僕は召喚を行った『【
僕の呼び出したベルゼブブは何でも喰らいつくすんだけど、幻影だからなのか、積極的じゃないんだよね。
老火竜ごと突っ込んで来たら、きっと丸飲みしてくれるかもしれないけど、ブレスを放ってくるだけなら、それを飲み込んで帰って行くだろうな。
だって気まぐれだから……
それに、流石にこのクラスの悪魔召喚は、僕の魔力量的にも30秒が限界だから……
結果は、予想通りって言うか勢いよくブレスを吐きかけてくれた、エンシェントドラゴンを、ベルゼブブが釘付けにしてくれてる間に、ジュウベエが絶壊刀で火竜の首を跳ね飛ばした。
本当に出来るんだ……
この子凄いな。
きっとメーガンでも同じ事は出来たかもしれないけど、300歳近いと言われてるエルフのメーガンと、私と同じ歳の少年剣士では評価が全く変わって来る。
結局は私と二人で老火竜を倒した事実は残り、その成果を持って史上最年少のSランク冒険者となった。
それから10年が経ったけど、今回ジュウベエと会うのも又10年ぶりだ。
メーガンとは時々出会うんだけどね。
僕にもメーガンから過去のSランクテイマーが使っていたと言う『服従の鞭』って言う武器を託された。
この鞭を使いだしてからは、狩りも安定してSランクに恥じない程度の強さは身についたとは思ってる。
でもどうだろう……
カインが仕舞いこんでた黄金ヒュドラのΣ。
今は箱舟の推進装置と防御システムに落ち着いちゃったけど、この子が単独で平原で暴れたとしたら、僕で受け止める事は出来たかな?
メーガンは200年ほど前にエンシェントドラゴンのヒュドラを倒した事があると言ってたけど、その時に当時のSランクが二人死んだって言ってた。
「余裕だよ!」って言えるくらいに上り詰めてみたいな。
それに、出会ったばかりのカインは料理人なのに初見でジュウベエの居合をフォーク一本で受け止めるとか、冗談としか言いようのない事するし……
僕の今の目標は空を飛べる手段が手に入ったから、カインに頼んで魔族領に行ってみたいんだよね。
一度はママに会いたいしね。
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