第57話 【閑話】賢者シュタットガルド
わしはこの歳になり今までで体験をした事の無い、知識の塊と遭遇した。
わしの余生は、この方舟
【賢者】であるわしに取って、知識欲を満たす事は何物にも代えがたい事じゃからな。
それにしてもじゃ、今回の出会いは起こるべくして起きたのであろうな。
料理人カイン。
不思議な男じゃ。
その才能、戦闘能力はわしらSランク冒険者と比べても、見劣りをするどころか、上回っているとも思える。
何故? そう思うかじゃと?
わしの賢者としての能力は、『絶対記憶』に『鑑定』であるからじゃ。
これにより様々な魔法を使いこなせる。
生活魔法だけは使えぬのじゃがな……
これは、各属性に上位互換魔法があるから問題は無いともいえるが。
話は戻るが、わしの鑑定がカインには届かなかった。
これは、この世界の魔法の理である現象に抵触しておるのじゃろう。
すなわちじゃ。
レベルが10を超えた者は、倍以上のレベル差を持って、お互いに対し干渉を与える魔法は効力を得ない。
この事実に該当するのじゃろう。
勿論例外はある。
魔導具を通して発動する事で、自分より下のレベル帯の者には、効果を発揮する事は出来る。
この場合、消費魔力が倍かかる為に、ダンジョン攻略などでは使われないのじゃが、聖女と呼ばれる様な治療魔法使いなどは、持っておることが多い。
実際カインのパーティメンバーのフィルなどは使っておる筈じゃ。
攻撃魔法であれば問題無く有効なんじゃがな。
現在わしのレベルは150じゃ。
恐らくこの大陸に住む者であれば、メーガンの姉御を除けば辿り着いている者はおらぬ筈じゃ。
ジュウベエやレオネアであっても130を超えたかどうかと言う所であろう。
さすればじゃ…… カインのレベルは魔力量から想定しても、75以下はあり得ぬから、300を超えておる事になる。
常識的に考えれば、齢300を超えるメーガンでさえレベルは200にも届いておらぬのじゃから、明らかにおかしい。
何故そのような状況になっておるのかも、この
まぁそれでもじゃ、単純な戦闘力で比べるのであれば、絶壊刀を使いこなすジュウベエや悪魔召喚を行うレオネアには、一対一の戦闘であれば分は悪かろうがな。
強さとは、勿論レベルも必要であるが、己の技をどこまで昇華出来るのかで、大きく変わる物じゃ。
料理では純粋な戦闘職と戦う事は酷であろう。
レベル300か…… わしらが、Sランクダンジョンの攻略に取り組んでおれば、届かぬ世界でも無かったのかもしれぬが……
いささか歳を重ね過ぎたのぅ。
そもそもダンジョンの攻略にはパーティで挑む事が必須であるからな。
特に重要なのは斥候職じゃ。
わしらの様に、戦闘や魔法を極めた者では、体内より発する魔力や気力が高すぎて、魔物を寄せ集めてしまう。
魔物に対して隠密効果が現れるのは、斥候職かサポート職の人間が隠密の魔導具を使用した場合だけじゃからな。
Sランクダンジョンを攻略する為に絶対必要な存在である、自分と同程度の強さを持つ斥候職と巡り合えなかった事が、わしらがSランクダンジョンを攻略していない理由なのだ。
聞けばカインをクビにした後の『ドラゴンブレス』はBランクダンジョンの攻略にすら失敗しておるそうじゃが、それは珍しい事では無く、むしろその方が普通なのじゃ。
それでもじゃ、実際にSランクダンジョンを攻略して、そのドロップ品として聖剣『ゼクスカリバーン』と聖鎧『ホーリークロス』を持ち帰ったギースは、カインと言う絶対必須な駒と巡り合えたのじゃから、奴の持つ豪運だけならば天元突破しておると言っても過言では無かろう。
今回の古代遺跡探索では遂にその運も尽きたようじゃがな……
しかし、カインの存在によりこれまで一緒に行動する事の無かった、わしら四人が一つの場所に存在すると言う状況になった。
この事実が世界に与える影響は大きいかも知れぬ。
伝説に聞く、この大陸以外の国家と渡り合える程にじゃ。
ジュウベエやレオネアがカインと行動を共にするのであれば、他の12か所のSランクダンジョンの攻略も現実的であろう。
更にじゃ。
この箱舟Ωを使えば、海竜の存在により行う事の出来なかった、外洋航海すらも超えた空中移動を行える。
まだ見ぬ大陸。
まだ見ぬ人種。
まだ見ぬ生物。
六十を超えたわしの胸がこれほど高鳴るとはな。
こ奴らの作り出す未来をこのわし【賢者】シュタットガルドがしかと見届け、書き記そう。
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