第15話 古代遺跡
カールの村から西に10㎞程入り込んだ、森の中に唐突にその遺跡は現れる。
入り口の周辺は、ツタが覆いかぶさり、不気味な雰囲気だ。
ここがダンジョンとは違う理由は、魔物が現れない。
ひたすら、人為的なトラップと、ゴーレムと呼ばれる魔導具である人形が侵入者を襲う。
何故冒険者に人気が無いのかは、人為的なトラップに関しては、斥候職の看破では視抜けにくく、とても収支が合わないからだ。
ゴーレムはとても硬く、物理攻撃は殆ど意味をなさない。
魔法攻撃がメインになるが、敵のすべてがゴーレムだと通常の冒険者では、魔力が持たないんだ。
俺が覚えた料理人のユニークスキル【補給食】でも無ければな。
このスキルははっきり言ってヤバイ。
だから俺は秘匿している。
使ってはいるけどな。
料理を作る時に、目的を持つんだ。
魔力回復、体力回復、身体強化、サポートスキルの効果上昇等、様々な効果をイメージしながら、俺自身の魔力を溶かし込むように料理を作る。
普通にポーションやリジェネ薬を飲んだらいいんじゃ? と思うかも知れないが、この補給食の凄さは俺の料理人レベルに連動して、効果が増すんだ。
本当は見当はついている。
俺のレベルは既に200を大きく超えているだろう。
300に近いかも知れない。
鑑定を受けて、レベルやユニークスキルがギルドにばれてしまうと厄介事しか起こる気がしない。
だから鑑定は受けないんだ。
それに恐らく、喋るトカゲはあのダンジョンのラスボスだった筈だ。
倒した直後に現れた水晶を触ってしまって、一階に転送されちまったけど、あの時に覚醒魔法を取得と脳裏に響いた。
俺が属性魔法や攻撃魔法をもし取得していたなら、それこそ一撃で地形が変わる様な魔法が放てるようになっていただろう。
だが、俺の使えるのは生活魔法だけだ。
むしろ良かったかも知れないけどな。
ぶっちゃけ、何でもできる。
ファーストエイドですら、欠損以外のすべての怪我を治す。
それ以上の効果が欲しい時は、再生した身体をイメージしながら料理を作ればいいだけだけどな。
ギース達にも言って無かったのは、奴は妙なプライドの塊だったからだ。
自分よりも強い存在を認めようとはしなかっただろう。
結局こうやってクランを抜ける事になるなら、結果は同じだったんだけどな。
俺は、一人になるのが怖かったから、一人で狩りを続ける事を選んじまった。
馬鹿だよな。
残されたクランのメンバー達には悪いと思うが、あいつらだって実力のある連中が集まっているのは確かだ。
フィルとハルクだっている。
ミルキーは…… まぁ実力はある。
無理さえしなければ大丈夫なはずだ。
(さて、行くか)
ゴーレムは決して万能ではない。
同じパターンでしか動けなかったり、弱点属性に極端に弱かったりする。
この遺跡のゴーレムはどんなパターンだ?
取り敢えず門を開け放って、侵入した。
暗いな。
生活魔法の
俺の魔法発動が届くギリギリの3mの高さに、巨大な光の球が出現する。
このフロア全体が輝きに満ちた。
明るくなればこのフロアにいるゴーレムは大したことなかった。
全長50㎝程度の黒いゴーレムが1m程の長さの槍を持って高速で走り寄って来る。
数は300体程か。
暗闇でこれが来ると確かに手ごわいかもな。
だが見えてれば、どうって事無い。
俺は落ち着いて生活魔法の穴掘りで自分の周りに幅3m深さ5m程の穴を掘る。
面白いように簡単に落ちて行った。
そこに生活魔法の給水でゴーレムたちが浸かる程度に水を貯める。
次は魔法の鞄からミスリルのチェーンを取り出して、先端を水に浸す。
更に生活魔法の発電でミスリルチェーンに電気を流す。
一瞬で300体のゴーレムは煙を上げて機能を停止した。
(まぁこんなもんだろ)
水を蒸発させて、ゴーレムの素材を確認する。
意外にいい素材で出来ている。
黒いボディは黒曜石だった。
これだけの数があると結構な値段になるぞ。
更にそのボディに刻まれた魔法陣も価値があるだろう。
駆動する為に内蔵された魔石も、直径5㎝を超えるサイズの物で、これもいい値段が付く。
取り敢えず面倒だから、全てを魔法の鞄に放り込んだ。
先へと進む。
中央部分に階段がある。
この階段を降りて行くと、半分程度進んだ瞬間に階段の段が消えて滑り台上になった。
どんどん加速がつくが、俺は魔法の鞄から蝙蝠傘を取り出して、生活魔法の送風を併用しながら飛び上がった。
落下傘状にゆっくりと舞い降りながら送風で方向調整を行う。
滑り台状態になった階段はまっすぐとマグマの沼へと続いていた。
こりゃ普通の奴では絶対無理だな。
俺はマグマの沼を飛び越えた先へと、着地した。
そのまま、奥へと続く道を進む。
すると扉が現れた。
思ったよりもトラップや敵の種類は少ないけど、難易度的にクリアが難しいからな。
これで終わりか、もしくはラスボスが居ると思っていいか。
扉は何のひねりも無く、普通に開いた。
そこに現れたのは巨大な空間だった。
結構な明るさもあり何かの工場のようにも見える。
そして部屋の奥に目をやった時に、それは居た。
全長5m程のヒュドラ型ゴーレム立っていた。
ドラゴンの様に太い足で二足歩行をして、背中には翼も見える。
頭は3つだ。
全身が黄金色に輝いている。
目の色が3つの頭のそれぞれで違う。
恐らくは違う属性のブレスでも吐くんだろう。
赤、黄、青か、考えられるパターンでは炎、雷、氷あたりかな。
絶望を与えるほどの存在か。
いつの時代の古代遺跡かは解らないけど、その当時は無敵だったんだろうな。
俺にとっては、最初の300体の黒曜石ゴーレムの方が面倒だったよ。
取り敢えず俺は、作り置きのお握りを頬張る。
今の俺で付与できる最大級の身体強化付与の梅お握りだ。
うん。
流石俺。
めちゃ美味い。
瞬間移動ともいえる程の速度で、ヒュドラ型ゴーレムに近づくと、その足を触れると同時に【収納】と呟くと、魔法の鞄にすっぽりと収まった。
そう。
ゴーレムは人形であって、生命体では無いのだ。
どんなにでかくても、触れば終わる。
まぁ魔力の少ないやつでは無理だけどな。
ヒュドラ型ゴーレムの居なくなった奥にさらに扉があった。
そこを開けると……
巨大な船が存在した。
この船は……
こんな場所に、海は存在しない。
それなのに船とはどういう事だ。
意味が解らない。
だが、その部屋には他には書物があるだけで、それ以外には何もない。
書物を開く。
何だこの字。
全く読めない。
答えは解らない。
だが、あの高性能そうなゴーレムより価値がある事だけは確かだろうけど。
こうなればする事は一つだな。
取り敢えず【収納】その場にあった読めない本と、巨大な船を全て魔法の鞄に収納した。
流石に俺の魔力でも、そろそろ収納限界に近い気がするな。
さて、流石にもう何も出てこない。
どうやって戻ろう。
やたら高い天井を見上げる。
光が若干漏れてるけど、あそこから出れるかな?
俺は、両手にフォークを持ち壁に突き刺してみる。
うん、刺さるな。
壁にフォクを突き刺しながら、上って行った。
ミスリル製のフォークで良かったなっと。
光の漏れていた場所まで行くと、人一人くらいなら十分に出れる隙間があった。
これも人工的に作られた、空気穴っぽいけどな。
風雨が簡単に入り込まないような角度になってるし、光源部分は分厚いガラスだしね。
外に出ると、日が沈みかかるくらいの時間だった。
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