第6話 玲愛の私服

「玲愛、その恰好で行くつもりか?」


 制服姿の玲愛を見て絶句する。


「仕方ないじゃん。他の洗濯中だし、これしかないんだから」

「いやでもマズイだろ、色々と……」


 アラサー男が制服姿の女子高生なんて連れて街を歩いてたら5メートル置きに職質されかねない。

 かといって舞衣が残していった服を玲愛に着せるのは生理的に無理だ。


「じゃあ茅野さんの服貸してよ」

「俺の? 無理だろ」

「なんとかなるって」


 玲愛はトットットと階段を駆け上がって俺の部屋に行ってしまう。

 そして十分後、俺の服を着て降りてきた。


 ジーンズの裾をロールアップし、Tシャツに無地の白シャツを着ている。

 当然だぼっとしているが、それなりに様になっていた。


「へぇ、似合うな」

「そう? ありがと」


 これなら職質も免れるだろう。たぶん。


「じゃあ出発」

「おい、なにしれっと俺の腕掴んでるんだよ?」

「デートだし普通でしょ?」

「デートじゃない。買い物だ」


 玲愛は俺をからかうのが大好きだ。

 きっと俺のリアクションが面白いんだろう。


 あまり人目につきたくなかったので車で普段は行かないアウトレットモールへと出掛けた。


 玲愛が入るのは、当然ながら俺が足を踏み入れたことのないギャル服の店ばかりだ。

 舞衣も露出の多い服を着ていたが、もっと大人びたデザインや落ち着いた色のものが多かった。


「ねぇ、これとこれ、どっちがいいと思う?」


 肩を出したでろんでろんなニットと、ピッタピタなのに袖だけやたら長いニットワンピースだ。

 方向性は違えど、どちらもやけに扇情的だった。

 もっともこういう服を見てそんなことを思うのはおっさんならではの感想なのだろう。


「どっちも似合うと思うよ」

「えー? なんか適当。ちゃんと選んで」


 無難な回答をしたと思ったが不評だったらしい。


「ニットワンピースの方がいいんじゃない?」


 露出がまだ少ないという意味で。


「だよねー。あたしもそう思った」


 玲愛はニコッと微笑む。

 そのしあわせそうな笑顔を見て、俺もつられて笑った。

 玲愛はなんだか人を和ませる力を持っている。


 その後もあれこれと買い物に付き合わされた。

 でも会計の度に「ありがとー!」と喜ばれるのは悪くなかった。


 思い返せば舞衣はなにかを買ってあげてもそんなにお礼を言われることはなかったな。


「じゃあ次はここ」


 指差したのは下着専門店だった。


「ちょっ……ここは無理。一人で選んできて」

「えー? 一緒に選んでよ」

「絶対おちょくってるだろ?」

「そんなんじゃないって。ほら、行くよ」


 腕を引っ張られて無理やり入店させられた。

 色とりどりの下着がそこかしこに展示されており、気まずいことこの上ない。


「ねぇこれとこれ、どっちがいいと思う?」

「ドッチモイイネ。両方買オウ」

「ちょっと? 見もしないで適当なこと言わないでよ」


 仕方ないので顔を上げて確認する。


「なっ……」


 玲愛が手にしていたのはほぼほぼ覆う面積のないヒモのような下着だった。


「これ、どっちもいいわけ?」

「そ、それは駄目だろ。女子高生の穿くものじゃない!」

「ネタだって。そんなリアクションされたらスベったみたいじゃん」


 そう言って別のものを手にする。


「本当はこっち。どう?」


 黒地にレースがヒラヒラしたものや妙にシースルー部分が多い花柄を手にしていた。

 それでも充分派手で扇情的だが、先ほどのほぼヒモの下着に比べればかなりましだ。


「どうって言われてもわからん。どうせ俺の目につくものじゃないし、好きなものを買え。代えもいるから適当にいるだけ買ってくれ」

「どうかなー? もしかしたら茅野さんの目にもつくかもよ?」


 ニターッと笑う玲愛を手で払う。

 ウザ絡みさえなければもっといい奴なんだけどな……


「それとも茅野さんはこういう水玉とかしましまボーダー柄とかのロリっぽいのが好き?」

「俺の好き嫌いはどうでもいいだろ」

「まさかこういうキャラパンが好きだったりして? ちょっと引くわー」

「そろそろキレていいのか?」




 ようやく買い物を終えるとどっと疲れが押し寄せた。

 すぐに帰るのはちょっとしんどい。


「疲れたからちょっと休憩してから帰ろう」

「あ、それなら友だちから聞いたいいところ知ってる! 三時間五千円でベッドとかふかふかでお風呂もいろんな機能ついてるんだって!」

「『ご休憩』じゃなくて『休憩』だ。喫茶店でコーヒー飲むんだよ」


 もはや怒る気力もなく、さらっと流すようにつっこむ。




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 いつも読んでくださり、誠にありがとうございます!


 私は小説を書くのがとにかく好きでいつも何かしらを書いてます。

 それを誰かが読んでくださり、フォローしたり★評価をしてくださるなんて考えてみればすごいことです


 本当にありがとうございます!


 たとえ誰に読んでもらうことがなくても、恐らく私は小説を書き続けます。

 でもより多くの人に読んでもらえればそれだけ書くのにも熱が入ります。


 たくさんの人に読んでもらえて、私は本当に幸せ者です。

 これからもよろしくお願い致します!


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