第18話 元いた場所(SIDE千波)
甘いホットドリンクを飲みながら、千波はぼんやり、道行く人を眺める。
外は冬晴れ。どこにも雪は見当たらない。
ここは、少し前まで千波の日常があった場所。
だけどこんなふうにのんびりとカフェで時間を過ごすのは、初めてのことだ。
思えば千波は、いつも焦っていた。
頑張らなければ、巻き返さなければと考え、資格もいくつか取った。だけど結局、その時点では既に千波の履歴書は真っ黒に汚れていて、選べる側の人間ではなくなっていたことに気付いた。
「ごめん。待った?」
千波の隣の席の女性に、男性が声を掛ける。
待ち合わせかなと思いながら、千波は空になったカップの縁を撫でた。
千波の待ち人はまだ来ない。
連絡手段を持たない千波がふらふらどこかへ行ってしまうわけにはいかないが、少しだけ、飽きてきた。
それに、カップが空な上に手持ち無沙汰の状態で居座り続けるのも、気が引ける。
店の入口が見える場所であれば、千波の優しいクマさんの姿はすぐに見つけられるだろう。
カップを片付け、千波は店を出た。
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