大陸ボス解放への道その3
アル:さて、後は朱雀と青龍だけですね!
俺たちは
カーボン:朱雀は南だけど砂漠をぬけることになるから東の青龍の方がお勧めだぞ
アルは少し考え込んでからどちらから攻略するか決めた。
アル:無難に東から攻めましょうか……どうせ強さは変わんないでしょうけど、砂漠は足が遅くなりますからね……
砂漠の地形特性として足が遅くなる特性がある。MMOの原理上素早さをいくら上げても移動速度は変わらない、つまり朱雀の方がたどり着くまで時間がかかるということだ。
ならばまだ平地を行けばいい青龍の方が楽だろう。欠点としては青龍の方が敵として朱雀より強いという点が有るが、そこは初戦推奨レベル25のクソ雑魚である、俺たちの敵ではない。
カーボン:じゃあさっさと行くか、道中も雑魚しかいないし早めに出ないと今日中に終わらない
アル:えっ!? 青龍のダンジョンまでどのくらいあるんですか?
カーボン:たった25マップだよ?
アル:うへぇ……お兄ちゃんがダンジョンの解放してくれませんか? 討伐は私もやりますから……
カーボン:兄妹というのは辛いことだって共有するものだろう?
俺がしれっとそう言うとアルは少し黙ってから答えた。
アル:必要も無い苦行をやる必要は無いと思うんですが?
カーボン:細かいなあ……ほら、一人だと退屈なんだよ、行くぞ
俺は東口に向けて歩きながらアルを手招きした。ちなみに青龍のダンジョンは四天王のダンジョンのうち一番遠い、地形特性を考慮しなければ朱雀ダンジョンより遠かったりする。
町を出て、一番東側のマップまでポータルを開いて移動する、ここでさんマップほど短縮できた、残り二十二マップだ。
アル:お兄ちゃん! 面倒くさいですよう……
カーボン:うっさい、面倒なことも共有してこそのギルドだろうが!
たまには俺がワガママを言ってもいいだろう。というか一人で二十マップ以上の移動とか普通に苦行なので誰か話し相手が欲しい。幸いなことにダンジョンまでの距離はあっても単調なマップなのでオートランに時々の監視をすれば大体の部分を自動で走って行ってくれる。
カーボン:じゃあ東に向けてダッシュ使ってオートランしておけよ、時々は見るようにな
アル:マジで……何時までかかるんですか?
カーボン:幸い計算上は十二時くらいに着く
日が変わらなければセーフじゃないだろうか? 俺としても無茶はさせたくないし日が変わったら落ちてもいいが、そこまではやるといいだしたからには付き合ってもらうぞ。
そうして延々とマップ移動を続けながら、いろいろなことについて話した。普段学校で何をしているか、あるいは得意な教科や苦手な教科、天気の話、その他諸々を気の向くまま話し合い、時々地形に引っかかった時に手動操作に切り替え、順調に東の果てへと進んでいった。
アル:ですね……面倒くさくって……
カーボン:分かる……あの辺は大変さがすごい……
などと記憶を掘り起こしながら学校での生活がどのようなものだったかなどに話がおよんだりもした。こればかりは二人ギルドの特権と呼んでもいいだろう。幸いなことに第三者がいない。
カーボン:お! レアモンスターポップしてるな……狩るか?
アル:やめておきましょう、そんな時間は無いですし、レアモンスターなら後進の方に任せておいた方がためになります
そうしてせっかく湧いたレアポップを無視しながら、更に東へと進んでいく。
アル:お兄ちゃん、ダンジョンまであと何マップですかね?
カーボン:あと5マップくらいだからがんばえー
アル:うぅ……面倒くさいです……
諦めろとしか言えない、新規ギルドで大陸移動を試みた時点でこうするしかないのだが……ちなみに四天王戦は二人以上のパーティが条件なのでギルドが八人以上なら最短四分の一まで行軍を圧縮できる。二人ギルドなのでそういったショートカット方法は無しだ。
カーボン:諦めろ、二人以上居ないとダンジョンに入れないんだから一緒だろうが、それとも人材補充するか?
アル:うぅ……お兄ちゃん以外と一緒にギルドが出来るのは嫌ですよぅ……
カーボン:じゃあそういうことだ。諦めて討伐を急ぐぞ
アル:はぁい……
渋々といった感じで走り続ける俺とアル。順調に進んでいるが青龍は雑魚である。その雑魚のためにこんなに頑張っているんだから馬鹿げているのかもしれない。それでもアルが目標にしている新大陸以降のクエストを解放するためにはやらなければならないことだ。
ああ、ギルドって一度入った人を逃がさないためのシステムなんだなあ……
さて、青龍の地下ダンジョン一マップ前まで来ると東側に何故か大きなドームが見えてきた。龍なのにドームに住んでいるのだろうか? その辺がゲームと現実の違い……現実に龍は居ないな……
そんなどうしようもないことを考えつつようやく目的地が近くなったことに安堵する。
カーボン:さすがにそろそろ着くな……後10分くらいで日が変わるな……今日はドームに着いたらポータルで帰って終わりだな
アル:疲れました……身体的にはともかくメンタル的にキツいですねこれ……なんでしょう……精神修行かなんかですか?
カーボン:現実世界に危なっかしいところに交通インフラは無いんだよ、リアルだろ?
アル:そう言うリアル感いります?
なんにしても……着いたぞ、たどり着いた……
カーボン:ようやく着いたな……
アル:じゃあ町の前までポータルお願いします! 眠い寝る!
俺がポータルを開くと素早くアルは飛び込んでいった。俺も後を追って飛び込むと微動だにしないアルがいた。
カーボン:アル? 町まで入っておけよ?
カーボン:アルさん? 聞いてる?
返答は無かった。
カーボン:もしかして寝たのか?
反応が無いのでどうやら眠ってしまったようだと判断する。リアル世界で寝てもMPK程度ではびくともしないVITを誇るアルが問題あるとは思えないが、さて……
現在青龍のダンジョンは解放された。そしてアルはここにログインしたままで居る、つまりは……
青龍のダンジョンに入りますか?
→はい
いいえ
俺ははいを選択してダンジョンに突入する。
だだっ広いドーム状の場所の中心に渦を巻いた龍が鎮座していた。
青龍:脆弱な人間がここまで来たか……その勇気に免じて非礼は許してやろう、消えるがいい
その尊大な物言いだが、明らかにレベル差があるのでまるで迫力も無い。
俺はさっさと青龍の懐に飛び込んで魔法を使う。
ジャッジメント・サークル
バチバチ
一撃で青龍は落ちた、初戦レベル二十五が適正のモンスターに過ぎない。この程度で俺には向かうなど無駄なあがきだ。
そうして四天王の三人が戦闘自体はあっけなく沈んでいった。
翌日、学校から帰ってきてログインを解除していないことに気がついたアルに散々一人で美味しいところを持っていくなと説教されたのはまた別の話だ。
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